踊るパーラメント

橘くらみ

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心のありか

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その週の初め、菊池りゅうじは官邸の食堂で昼食をとっていると、ふとした拍子に視線を感じた。振り返ると、知的で美しい女性が一人、近くのテーブルに座っていた。彼女の名は白石悠子。役人として優秀な経歴を持ち、最近横溝の政策に関わるプロジェクトを担当していた。彼女はその存在感と魅力で、周囲の視線を惹きつけていた。

昼食の間、白石が菊池のテーブルに近づいてきた。「菊池さん、いいお昼ですね。私もお話ししたいことがあるのですが、もしよろしければ今晩一緒に夕食をどうですか?」

驚きつつも、菊池は内心で喜びを感じた。白石の魅力に惹かれながらも、同時に戸惑いを覚える。彼女が自分に声をかけた理由は何だろう。彼女の知性やカリスマ性に圧倒されながらも、心の奥に横溝つくねの存在がちらつく。

夜、約束の時刻になり、菊池は待ち合わせのレストランに向かった。白石が現れると、彼女は優雅に振る舞いながら、菊池を迎え入れた。彼女の美しさと洗練された仕草に思わず心を奪われるが、やはり心の片隅には横溝の姿が浮かび上がってくる。

「あなたの仕事ぶりは素晴らしいですね。横溝総理の信頼を受けているのも納得です」と白石が話を振ると、菊池は少し戸惑った。

「いえ、ただの秘書です。総理の側で働くことができるのは光栄なことです」と自分の役割を謙遜して答えた。しかし、白石の視線には何か特別な意図が感じられた。

「そうですね。彼はとても優秀で魅力的な方です。彼に近づくのは簡単ではないでしょうが、あなたが秘書として彼のそばにいることで、きっと色々なことを感じているのでは?」と、白石は微笑みながら言った。

その言葉に菊池は心の内を揺さぶられた。彼女が何を求めているのか、彼女の目の奥に潜む意図を読み取れずにいた。菊池は自分の感情を隠しながら、白石との会話を楽しむことに努めた。

「白石さんは、横溝総理に何か特別な感情を抱いているのですか?」と無意識に尋ねてしまった。その問いに白石は少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑みを戻した。

「私は彼を尊敬しています。彼の情熱や思考の深さにはいつも感銘を受けていますから。ただ、彼に近づくことで得られる情報は、私にとって非常に重要です」と、白石は言葉を続けた。

菊池はその言葉に一瞬胸を締め付けられる思いがした。白石の魅力に惹かれながらも、彼女が自分の想いを隠し持っていることを痛感した。自分が横溝に抱く感情と、白石が総理に接近しようとしている理由は明らかに異なるが、どうしても横溝と比較してしまう。

夕食を終え、白石が菊池に近づくと、彼女は菊池の手に自分の手を重ねてきた。「あなたが横溝総理を支える姿は本当に素敵です。これからも彼のために尽くしてください。私はそのお手伝いができればと思っています」

その言葉に、菊池は自分の感情が揺らぐのを感じた。白石の魅力に心を奪われつつも、彼女の真意が明らかにされることで、彼の胸の内は複雑さを増していく。

菊池は自分の中で横溝との関係を再評価し、彼の存在が自分にとってどれほど特別であるかを改めて痛感するのだった。
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