踊るパーラメント

橘くらみ

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選択と決断

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質疑応答が一段落し、会議は一時休憩に入った。横溝は議場を離れ、総理控室へと向かう。廊下を歩くと、わずかに冷や汗がにじんでいるのを感じた。湯浅のあの鋭い視線と問いかけが、いつも以上に胸に突き刺さったからだ。

控室に入ると、彼は深く息をつき、しばらく無言で窓の外を見つめた。だが、その静寂を破るかのように、ノックの音が控えめに響く。振り向くと、秘書が顔を出した。

「総理、湯浅党首が短い面会を希望されています」

横溝の胸が一瞬だけ高鳴る。湯浅が公式の場以外で接触を求めてくることは滅多にない。それだけに、彼の訪問が意味するものが気になった。

「わかった、通してくれ」

秘書が退出すると間もなく、湯浅が一人で控室に入ってきた。扉が閉まると同時に、二人は無言のままお互いを見つめ合った。湯浅の表情には、さっきまでの冷徹な党首の姿とは異なる、わずかな疲れがにじんでいる。

「急にすまない。あまり時間はないんだが、一つだけ確認したいことがあって」

「確認したいこと?」

横溝は、湯浅の真剣な顔にわずかに眉をひそめた。彼の背筋が、知らず知らずのうちに緊張で固くなっていくのを感じる。

「お前が本当に国民のためと思って進めている政策だと…俺は信じたい。でも、もしこのまま強行すれば、俺たちが背負っている秘密まで危険にさらされるかもしれないんだぞ」

その言葉に、横溝の胸が再び大きく揺れた。湯浅がこのようにして、二人の関係をあえて持ち出すことは滅多になかった。今の発言が、どれだけの勇気を伴っていたかを、横溝はすぐに察した。

「…たくみ、それでも俺には、この政策を進める責務がある。たとえどんな犠牲を払うことになっても、それが総理としての役割だ」

湯浅は苦しそうに視線を逸らし、拳を固く握りしめた。長い沈黙が控室に降り、二人の間に重い緊張が張り詰める。ようやく、湯浅が口を開いた。

「もしお前がその責務を果たそうとするなら、俺も党首として全力で対抗するしかない。だが、どうしてもこの関係が失われることを避けたいと思うなら…」湯浅は、言葉を切り、かすかな希望を横溝に投げかけるような瞳で見つめた。

横溝はその視線を受け止め、複雑な思いを胸に秘めたまま、答えた。「たくみ、俺たちはもう後戻りできない。お前も俺も、自分の信じる道を進むしかないんだ」

その言葉を最後に、二人はお互いに一歩近づくでもなく、ただその場に立ち尽くした。やがて湯浅は小さく頷き、振り返ると無言で扉へと向かった。その背中が消えていく瞬間、横溝は心の奥底で「愛」と「信念」の狭間で揺れ動く感情を噛み締めていた。

二人はそれぞれの道を選び、もはや互いのために立ち止まることは許されなかった。

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