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本編
アリステア様との話し合い
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サロンからアリステア様に手を引かれて連れて行かれたのは、庭園でした。
わたくしの後からはサラスが付いて来て、少し離れたところで控えているのが見えますけれど、基本的には2人きりで、ドキドキしてきましたわ。
「いきなりすまない」
シャツに黒のサロペット姿のアリステア様も素敵。銀の髪と青の瞳の貴公子ですもの、何を着ても素敵なことはもうわかりきっているわ。
「アリステア様」
「母上が失礼した」
「いえ、社交界での噂を聞けば、尋ねたくなるのは普通ですわ」
「……」
「でも、陛下にお話しした通り、王家の婚約者としての務めを果たしたいので噂されている方々とそのような関わりを持つつもりはありませんのよ?」
「君は公爵令嬢としての義務で婚姻を結ぼうとしているのか?」
「フィリップ様の時はお勤めを果たそうと思っていましたわ。もし、フィリップ様に望まれればですけれど。でもマリアンヌ様が正式な婚約者になってよかったと思っていますわ」
「リチャードのことは?」
「あの方は今でもマリアンヌ様を愛しておられますわ。わたくしとはなんでもありませんのよ?あの時のことは事故のようなもの、ですわ。詳しいことは話せませんが、あの方のすべての行いはマリアンヌ様を想ってのことです」
「そうか」
「ええ」
「父上から、ブラッドストーン家との婚姻の話が出ていると聞いたのだが」
「ええ」
「それは王家との約束の為か?」
「貴族としての義務を果たすのは大切なことですわ。だけど、同じ義務を果たすのでもお慕いしている方のところに嫁ぐことができれば良いと思っています」
「そうか」
「はい」
「母上は昔からああで、気が強いので困る。すまなかった」
「いえ、アリステア様のお母様とシャルロット様にお会いできて嬉しく思っていますわ。それに心配されるのはアリステア様を思ってのことですわ」
「レティーは優しいな」
「アリステア様…本当のことですのよ?」
アリステア様は微笑んで、庭園に咲いているマグノリアの花を1輪手折るとわたくしにお渡しになった。
「この花は母上の好きな花でこの庭園のあらゆるところに咲いている。この花は君のようだ」
「わたくし…ですか?」
「ああ…」
白いマグノリアの花からは甘い香りがした。
「レティー」
「はい?」
「また遠乗りに出かけないか?」
「はい。喜んで」
「父上の領地がゴタゴタしていて、学園にも顔を出せない状況だったが、あと数日で収まると思う」
「まあ、そうでしたの?」
「ああ」
「母上には私の方から話しておく」
「ありがとうございます」
アリステア様はわたくしの髪をすくわれると、
「上げた髪も似合うな」
と微笑まれましたわ。そういうハートキラーな行為を普通にするところが攻略対象者のなせる技なのかしら?
わたくしは内心パニクりながらアリステア様を見つめる。
「公爵家まで送ろう」
とそのまま乗ってきた馬車に付いてきたサラスと共に乗せられてしまい、あやふやになってしまいましたわ。
とりあえず誤解が解けたからいいのかしら?
その日はアリステア様と過ごした庭園のシーンを思い出しながら、幸せな気分で眠りについたのですけれど、あんな
風に退出したお詫びの言葉とお茶会に招待していただいたお礼の手紙を翌日公爵夫人に出すことにして、シャルトル家の初訪問が終わりました。
その次の日に公爵夫人からは「次の機会にお会いしましょう」と短いメッセージとシャルロット様から可愛らしい宝石箱のイラスト付きのお手紙とお菓子をいただいてほっこりした気分になったのですけれど、とりあえずアリステア様の誤解が解けてよかったと胸をなでおろしましたわ。
わたくしの後からはサラスが付いて来て、少し離れたところで控えているのが見えますけれど、基本的には2人きりで、ドキドキしてきましたわ。
「いきなりすまない」
シャツに黒のサロペット姿のアリステア様も素敵。銀の髪と青の瞳の貴公子ですもの、何を着ても素敵なことはもうわかりきっているわ。
「アリステア様」
「母上が失礼した」
「いえ、社交界での噂を聞けば、尋ねたくなるのは普通ですわ」
「……」
「でも、陛下にお話しした通り、王家の婚約者としての務めを果たしたいので噂されている方々とそのような関わりを持つつもりはありませんのよ?」
「君は公爵令嬢としての義務で婚姻を結ぼうとしているのか?」
「フィリップ様の時はお勤めを果たそうと思っていましたわ。もし、フィリップ様に望まれればですけれど。でもマリアンヌ様が正式な婚約者になってよかったと思っていますわ」
「リチャードのことは?」
「あの方は今でもマリアンヌ様を愛しておられますわ。わたくしとはなんでもありませんのよ?あの時のことは事故のようなもの、ですわ。詳しいことは話せませんが、あの方のすべての行いはマリアンヌ様を想ってのことです」
「そうか」
「ええ」
「父上から、ブラッドストーン家との婚姻の話が出ていると聞いたのだが」
「ええ」
「それは王家との約束の為か?」
「貴族としての義務を果たすのは大切なことですわ。だけど、同じ義務を果たすのでもお慕いしている方のところに嫁ぐことができれば良いと思っています」
「そうか」
「はい」
「母上は昔からああで、気が強いので困る。すまなかった」
「いえ、アリステア様のお母様とシャルロット様にお会いできて嬉しく思っていますわ。それに心配されるのはアリステア様を思ってのことですわ」
「レティーは優しいな」
「アリステア様…本当のことですのよ?」
アリステア様は微笑んで、庭園に咲いているマグノリアの花を1輪手折るとわたくしにお渡しになった。
「この花は母上の好きな花でこの庭園のあらゆるところに咲いている。この花は君のようだ」
「わたくし…ですか?」
「ああ…」
白いマグノリアの花からは甘い香りがした。
「レティー」
「はい?」
「また遠乗りに出かけないか?」
「はい。喜んで」
「父上の領地がゴタゴタしていて、学園にも顔を出せない状況だったが、あと数日で収まると思う」
「まあ、そうでしたの?」
「ああ」
「母上には私の方から話しておく」
「ありがとうございます」
アリステア様はわたくしの髪をすくわれると、
「上げた髪も似合うな」
と微笑まれましたわ。そういうハートキラーな行為を普通にするところが攻略対象者のなせる技なのかしら?
わたくしは内心パニクりながらアリステア様を見つめる。
「公爵家まで送ろう」
とそのまま乗ってきた馬車に付いてきたサラスと共に乗せられてしまい、あやふやになってしまいましたわ。
とりあえず誤解が解けたからいいのかしら?
その日はアリステア様と過ごした庭園のシーンを思い出しながら、幸せな気分で眠りについたのですけれど、あんな
風に退出したお詫びの言葉とお茶会に招待していただいたお礼の手紙を翌日公爵夫人に出すことにして、シャルトル家の初訪問が終わりました。
その次の日に公爵夫人からは「次の機会にお会いしましょう」と短いメッセージとシャルロット様から可愛らしい宝石箱のイラスト付きのお手紙とお菓子をいただいてほっこりした気分になったのですけれど、とりあえずアリステア様の誤解が解けてよかったと胸をなでおろしましたわ。
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