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本編

遠乗りデート(前)

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アリステア様との遠乗りのデートの日を指折り数えて、やっとその日がやってきましたわ。

「遠乗りといえば2人乗りよね?アリステア様のたくましい胸に抱きしめられながら、馬に乗るなんてロマンチックだわ」

「お嬢様は乗馬ができますよね?」

冷めた口調でサテラが問う。

「確かにできるけれど、軍人のアリステア様のスピードについていけるほど上手くないし、別々に乗ったらロマンス感が薄れるでしょう?ただでさえお友達路線なのに」

「そうでございますね。では本日は目一杯色仕掛けで迫ってみることをお勧めしますわ」

「やはり、必要かしら?」

「アリステア様とて、殿方でございます。お嬢様を女性として意識し始めれば、いろいろ変わるのでは?」

「そうよねえ。他の殿方に言い寄られるだけで、全然紳士なままですものねえ。あくまでご学友の域を超えていないわよね。それにフィリップ様が本命だと思われてるようだし?」

「そうなんですか?」

「はっきりわからないけれど、フィリップ様とのことを聞かれたわ。この間」

「では、ますます頑張らないといけませんねえ」

「そうよね」

貴族の令嬢としての教育のみを受けてきたわたくしは殿方への迫り方なんて全く知らないのですけれど。

だけど、意識してもらわないと始まらないのは理解しておりますわ。

とりあえず、体の接触をしてみることに決めましたわ。馬に乗りながらなら不自然ではないでしょうし。

わたくしの体は前世よりもナイスボディーで、胸もお尻もそれなりにあるし、腰だってコルセットをしているだけあって折れそうなぐらい細い。

とりあえず頑張ってみますわ!


*******

「レティー、行こうか?」

アリステア様に体を持ち上げられて、あっという間に馬上に座らされたわたくしは、先程の誓いもむなしく真っ赤になってしまいましたわ。

だってアリステア様がかっこよすぎるんですもの。

遠乗りだというのになぜか軍服姿で見事にツボにはまってしまったんですの。

あー、かっこいい…、こんなかっこいいなら乙女ゲー、フィリップ様だけでやめとくんじゃなかったわ。

アリステア様を攻略するための手がかりとか裏技とかわかったかもしれないのに。

「レティー?しっかり掴まってないと落ちるよ?」

とたくましい胸に体を密着させるような感じで乗る羽目になってしまったから、わたくし的には抱きしめられているようにしか感じないのだけれど。

アリステア様はわたくしに気を使って、公爵領の森まで普段よりも遅いスピードで走ってくださったと思うのだけれど、わたくし的には十分早くて、ドキドキが止まりませんでしたわ。

目的地であるアリステア様お勧めの聖なる森と呼ばれるところはわたくしのお家の公爵領とアリステア様のお家の公爵領の真ん中にありますの。わたくしはその存在さえ知らなかったのですけれど。

多少乗馬ができるといっても領地を軽く競歩するぐらいでしたから、遠乗りはしたことがありませんの。

聖なる森の途中にある湖で、食事をして、少し休もうということになったのですけれど、後ろから着いてきたサラスが用意してくれたピクニック用のシートに座って、軽食を食べましたわ。

そこまでは、わたくしが思い描いていた甘いデートでしたわ。

お腹を満たしてからあんなことになるとは思ってもいなかったのですけれど。



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