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SSの置き場&番外編

初めての舞踏会

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セシリアがアルザス公爵夫人になって、夫婦で出席しなければならない夜会の招待状が増えた。結婚式に招かれていない国内の有力貴族たちが、エリアスの心を射止めた夫人、「深層の公爵夫人」と呼ばれているセシリアの姿を見たいと思ったことが原因だったらしい。

「セシリア、綺麗ですよ」

薄紫のドレスに身を包んだ私を見てエリアスが微笑む。ドレスは彼の瞳と同じ色。

夫婦の証の腕輪とも良くあっている。そして、首には同じ宝石の首飾り。

エリアスは、私のドレスとペアになるような同じ紫の色合いの燕尾服だ。

「エリアスも素敵よ」

王族としての躾を受けてきたから、きゃああああああ!エリアスかっこよすぎる!げき萌え!みたいな前世の行動が出かかっても、萌えは心の中だけに閉まっておけている。

結婚式でも実感したのだけれど、私は軍服に萌えるたちらしい。

流石にお父様を見ては萌えなかったけれど、タッセルや勲章やこう御伽噺の王子様っぽい礼服に興奮してしまうのは、王族同士で結婚しろという王家の血のせいなのか、前世の萌えなのかはわからないけれど。

とりあえずエリアスはため息が出るぐらいかっこよかった。

服の色も紫だから瞳がもっと映えるのよね。光に加減によっては黒っぽく見えてしまうこともあるんだけれど、艶やかな黒髪も私と違ってサラサラストレートで、肌は抜けるほど白くて、男の人なのに限りなく美しい。まあ、顔は確かに王妃さま譲りなんだけど。王妃さまが子供の頃に女の子のお洋服を着せていたことが納得できるぐらい整った顔立ちなのよ。

「準備はいいですか?」

アルザス公爵家の馬車が、ローザンヌ公爵家の屋敷に着く。ここが夫婦になって初日の夜会の場所だ。

「ええ」

エリアスの手を取って、馬車から降りると、音楽が流れているのがわかった。

「もう夜会は始まっているのね?」

「ええ。私のそばから離れないでくださいね?セシリア」

ローザンヌ公爵家もうちと同じぐらい広い敷地で、庭園には幾人かの恋人たちが睦言の最中だった。

「あれは、ランデブーの最中のようです」

「?」

「あなたと私は違いますが、貴族のほとんどは政略結婚ですので、好きな相手と結ばれることはありません。なので、婚姻を結んでから、恋人を作るのですよ」

「まあ!」

王族に嫁ぐことを前提として教えられていたので、側室などがいる王の状況は正妃の務めとして理解できても、その逆があるとは教えられていなかったので、びっくりしたわ!

「だから、婚姻を結んでいても、いろいろな虫があなたに向かって飛んでくるので、危険なのですよ」

「それは、困るわ。エリアス。私はあなたにしか興味がないもの」

エリアスは私の言葉にフッと笑う。

「とにかく私から離れないで。夜会は誘惑でいっぱいですから」

「わかったわ」

◇ ◇ ◇

まず初めに挨拶したのはローザンヌ公爵夫妻。

「セシリア・アルザスでございます。今回のお招き楽しみにしておりました」

「おお、そなたがエリアスの花か」

ローザンヌ公爵は、40代の渋いおじさま。銀の髪とグレーの瞳のティールザードの頭脳と呼ばれる宰相よ。

彼の息子とエリアスの妹のシャーロット姫が結婚したら、親戚になる方だとエリアスから聞いているわ。

「本当に花のように美しいわ。エリアスが隠してしまうのはわかる気がするわねえ」

美しい声で私を褒めるてくれたのは柔らかい銀髪と赤い瞳の公爵夫人のマリー様だ。14歳の子供がいるとは思えないぐらい若々しい姿の美しい方なの。

「マリー様、あなた様もいつ見ても美しい。ティールザードの月と謳われるだけはあります。ティルト様はお元気ですか?」

エリアスが公爵夫人を褒める。

「まあ、エリアス、ありがとう。ティルトならもうすぐ隣国からの留学を終えて帰国するわ。これ以上いると、どんなことになるかわかりませんもの。シャーロット姫も待ち遠しいでしょうねぇ」


「左様ですか。ではその旨を我が妹に伝えなければいけませんね。あれは世情に疎くて困ります」

「うむ。エミレーツもこれからルーレシアのことが絡んでくるから、私の仕事も忙しくなる。早く息子に爵位を譲って引退したいのだかね」

侯爵様は、言葉は謙遜しているが、軽くあと10年は、現役でいられるぐらい有能だと聞いているわ。だから公爵を息子に譲っても、宰相を譲る必要はないらしいの。

「まあ、大変ですわね」

「まあ、その平和を維持できるように頑張りますよ。数年後にはシャーロット姫と息子の婚姻もありますしね」

ティールザードでは16歳で成人とみなされるから、貴族で婚約者のいる人たちは大抵それぐらいの歳で婚姻を結ぶの。これはガートランドとあまり変わらないわね。私だって16になったばかりだけれどもうエリアスのお嫁さんだもの。

「こういう華やかな催しが開けるように維持していくつもりですよ。今夜は楽しんでください」

「ありがとうございます。ティールザードでの夜会は初めてですので、楽しみにしてましたの」

「ごゆっくり」

公爵夫妻は微笑んで、次に来た来客を迎えるために私たちのそばを離れたから、次に来た貴族の方達と挨拶合戦になったわ。まあ、この国は貴族自体が多くないから、時間はかからないんだけどね。エリアスが私をジルグ侯爵夫妻、リード伯爵夫妻、唯一の独身男爵である、ジルベルト男爵に紹介してくれて、挨拶をした後、

「セシリア、踊ろう?」

というエリアスの手を取ってワルツを踊り始めたの。

ワルツはね、ガートランドでも踊るから、全然得意よ。だからみんなにすごい注目されている中でも、余裕の笑みを浮かべながら踊ることができたわ。

「セシリア、この会場の男たちがあなたを見つめていますよ?」

先ほど挨拶した貴族たち以外にも豪商の一族や準貴族、騎士や子爵たちも来ているので、結構な人数がいるの。

うちのパーティーでは伯爵から上の人たちのみが出席する夜会のみだったけれど、ティールザードは貴族自体か少なくて、ほぼ商人か平民という割合だから、お金があったり、下級貴族でもこういう夜会には招かれたりするらしいわ。

「まあ、思ったより、たくさんの人がいるのね?」

「みんなあなたを見に来たんですよ?」

私はエリアスの言葉で急に緊張してきたけれど、公爵夫人としてそつなく社交もこなし、エリアスの妻としてもお披露目は成功に終わった。

エリアスとは3回踊ったけれど、その後からたくさんの方にダンスを申し込まれたわ。

「妻は、体があまり丈夫ではありませんので」

とエリアスが病弱設定を持ち出してくれたおかげで、ローザンヌ公爵以外とは踊ることはなかった。

エリアスを見て公爵は

「モテる妻を持つと大変ですな」

と笑っていたけれど、ティールザードの男は危険なんですって。好きになったら、婚姻を結んでいようと、恋人がいようと構わないらしいから。

そういう怖い目に合う前にエリアスが助けに来てくれるから、助かってるんだけどね。

「セシリア、あなたは私の妻ですから」

エリアスはそういうと、ダンスに疲れた私をお膝に抱っこして、あまーいお菓子を食べさせてくれた。

人前でそれをやられるのはかなーり恥ずかしかったんだけれど、

「虫除けです。あなたのためですから」

っていわれて、口を開けるしかなかったわ。

初夜会なのに思いっきりラブラブな空間を作ってしまった私たちの

「アルザス公爵家のお世継ぎの噂」

が社交界にすぐさま流れたのは、そのせいなのかしら。

とりあえず、セシリアはこうしてエリアスの祖国での社交界のデビューを果たしたのだった。

































































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