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ルーレシアの皇子1

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*お気に入り50ありがとうございます。本当に嬉しいです!!!初めてのファンタジーものですが、読んでくださって本当に感謝しています。長編になりますが、これからもよろしくお願いします。










 一番避けなくてはならないルーレシアの領地に転送されて、セシリアは唖然としていた。

 今まで、心を込めて話せば絶対に通じ会えると思っていたのに、こういう展開になるとは思ってもいなかった。

「エリアス?エリアス?」

 同じ場所に転送されたと思っていたのに、騎士の姿はない。

 ここにいちゃいけないわ

 セシリアが立っている場所は、城からほとんど出たことのない彼女が唯一知っている場所、ルーレシア城の庭園だった。

 すぐに出なければ!

「そこで何をしている!」

 振り返ると、紫の髪に紫の瞳のハインリッヒ皇子が、セシリアに鋭い瞳を向けていた。

「ほお、亡くしたと思ってた鳥が庭に舞い降りたか?」

 少年の姿になっているセシリアを見て、妖艶な笑みを浮かべる。

「人違いです」

 セシリアが思わず漏らしてしまった言葉がハインリッヒに確信を与えたとは気づいてないない。

「人、私は鳥の話をしていたのだが?あなたは余程私の元に来るのが嫌だったようだ」

「僕は、男です。人違いをなさってます」

「見た所、そのようだな。詳しいことはじっくり調べるとしよう」

 セシリアはハインリッヒに腕を掴まれて、恐ろしさで悲鳴をあげそうになった。

「あいかわらずあなたの怯える顔はそそられる」

「!」

「今、声をあげれば、城の衛兵が来る。このまま大人しく従った方がいいと思うが?」

 空を見上げると日が沈みかけている。

「わかりましたから、乱暴しないでください」

「いいから、来い!」

 ハインリッヒに手を引っ張られたまま、来たのは人気のない離れの塔だった。

「ここ、は?」

 螺旋階段を上がっててっぺんまで来ると、見かけとは違い豪華に飾り付けられた部屋になる。

「私の母が使っていた私室だ。父が側室に頭が上がらなくてね。病気がちだった母は正妃にも関わらず、ここに幽閉も同然の身の扱いを受けていたので、私はここで育った」

 セシリアの顔が曇る。

「あなたの国や周りの国に伝えられている話とは違うだろう?だけど、本当の話ですよ。今は私以外にほとんどこの場所を知らない。母付きの侍女も毒殺されたのでね」

「ごめんなさい」

「あなたの謝罪は死を偽ってまで、私との婚姻を避けたことに対していってるのか?」

「皇妃様のことに対してです。僕は、女ではなく、男です」

「それは私が結論を出す」

 ハインリッヒは頭のてっぺんからつま先までセシリアを舐めるように眺めた。

「今すぐにだ。あなたのいうとおり、男の体ならば、どこかの令嬢の小姓が迷い込んだことにして、見逃してあげよう」

「えっ?」

「せっかく身元の潔白を証明するためにここに連れて来てやったんだ。本当に男ならできるだろう?」

 まだ、日は沈みきっていないはずだ。セシリアは羞恥に頬を染めながら、衣服を取り去って行く。

「ほお、これは想像していなかった。私の勘違いだったようだ」

 ハインリッヒはまだ成熟しきっていない少年の体をしたセシリアを見て呟く。

「もう、これでいいですか?」

「いや、待て」

 目の前で少年の体が艶やかな少女の姿にゆっくりと変容していく。

「やはり、私の目は間違いなかったようだ。どういうことか説明してもらおうか?セシリア姫?」

 自らの名を呼ばれて、自身の体が元に戻ったことに気づいたセシリアは真っ赤になって小姓の衣服で体を隠す。

「セシリアは確かにあの日死んで、セシル、として生まれ変わりました。私はガートランドのセシリアではなく、ただのセシルです」

「ほお。で、何故そのような姿に?」

「ポーションの副作用で、昼は少年の姿、夜は少女の姿になってしまいました。月光花を手に入れるために妖精国に行ったのですが…」

「私の庭にたくさん育成されているから、ここに来たのか?」

「いえ、妖精国の王にこちらに送り込まれました」

「なるほど」

「あのっ、私、服を着てよろしいでしょうか?」

「その小汚い小姓の服を着るのか?私の母の部屋で?」

「ごめんなさい、でも」

 ハインリッヒは真っ赤になって涙ぐみながら謝るセシリアに対して嗜虐心がわくのを感じたが、手に入れようとしている獲物をこれ以上怖がらせるのは得策でないと考えて、母親のドレスが未だ収納されている部屋から比較的シンプルなドレスを持ってくると、セシリアに投げ渡した。

「着ろ。私の母とあなたは体型が似ている。だからこれでも大丈夫だろう」

 ドロワーズもコルセットも付けずに素肌のままでドレスを身につけるのは抵抗感があったが、何も付けないままでいるよりはましだ。セシリアは羞恥に身を染めながらドレスを身につけた。後ろは貝ボタンになっているため、一人で着ることはできない。

「あのっ、手伝っていただけますか?」

 髪をサイドに流すと、白い背中がパックリ開いて、艶かしい。

 ハインリッヒはその滑らかな素肌に口付けて滅茶苦茶にしたいという衝動を抑えながら、ボタンを1つ1つ締めていく。

「ありがとうございます。ハインリッヒ様」

「私の城は常に警戒が厳重だ。あなた一人では抜け出すことはできない。もし、できたとしても、見慣れない者は侵入者として、すぐに斬り殺すように命じてある。もし、生き延びても、あなたの顔を知っている貴族も多くいる。もしセシリア・ガートランドが生きていることが知れれば、ガートランドは終わりだ。ここを出ていくか、私の元に留まるか、どうする?」

「先ほども申し上げた通り、私はただのセシル、でございます。ハインリッヒ様のいう通り、私一人ではここを出ていく力はありません。よろしくお願いします」

 セシリアはここで死ぬわけにはいかなかった。生きて、エリアスと幸せになる、その夢を叶えるためにも、そして、ガートランドを守るためにも、自分の姿を晒すことはできなかった。

「なら、妃として扱う必要はない、な。セシルとして、王族の男に仕えるそれ相応の身分を与えよう。お前は今から私の奴隷だ」

 セシリアが驚愕して顔を上げる。

「えっ?」

「私は、どちらでもいいのだ。ここを出て斬り殺されるか、私の奴隷になるか、お前が決めろ」

 美貌の皇子の冷たい瞳に見下ろされて、セシリアは言葉を紡ぐことができないでいた。

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