ティルナノーグの扉

Erie

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口説きと対談

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「私の元に来い」

 星見の宴が終わって、妖精王の元に数日間滞在することになった魔族の次期王である、アルフォンソに口説かれる度にリナは困惑してしまう。

 会っていきなり求婚されても、相手のことがわからないので、はい、とも いいえ、ともいえない。真剣に申し込んでくる相手にいい加減な返答はできない、と思うから。

「私、アルフォンソ様のことをあまりよく知りませんし」

「なら、これから知ればいい。結婚してから知り合えばいい」

「一生の決断はやはりお互いのことをよく知ってからでないと、ですし、わたし、好きな人以外とは一緒
 になるつもりはありませんから」

「では、好きにならせてみせる」

 気持ち、というものは努力でどうこうなるものではないと思う。

 一目ぼれっていうこともあるだろうけど、頭ではなく心が反応して突然に落ちるものなのだ。

 もっとも元の世界(二ホン)でも恋した経験なんて、そんなになかったのだけれど、大好きな先輩がグランドで活躍する姿をみて、ドキドキしたり、彼のことを考えるたびに切なくなったり、彼についてほんのちょっとしたことを知っていく度にあたたかいものが、心に溜まっていく、そういうものの積み重ねなら、それが恋というのを知っている。

「それは、関心しませんね」

 瞳の色と同色の緑の比較的ゆったりとしたローブを纏った妖精王が、会話に口を挟む。

「リナの心は彼女のものですから。あなただけに恋に落ちるとは限らないでしょう?」

 にっこりと穏やかな口調のままだが、強引な王子とは別のやり方でけん制している。

「リナ、あなたの国では恋愛は自由なものなのでしょう?」

「はい。それにまず、お友達からという交際も多いです」

「そうですよね。なので、アルフォンソ、まず、友達からということで、この話は終わりにして、これからの国交の正常化について、話し合いませんか?」

「お前と私の国は特に問題はないと思うが?」

「ええ。ですが。現王のころから、お付き合いが極端になくなり。国民間の交流も激減しました。あなたが王位を継いだ後は、以前のような関係に戻りたい、と思っているのですが?」

「それは、こちらにも異存はない、が、継承後すぐに政策を変更するというのは、どうだろうな」

「妖精国とまた国境のない政策を行うことはお互いの利益になると思いますが?」

「たしかにそうだが、我が国は我が国だけでやっていくべきという有力貴族たちが多くいるのだ。それを説得して、段階を踏んでのほうが、内政が乱れずにすむ」

「では、まず、その一歩から始めましょう」

「それなら、可能だ。とりあえず、王族間の門の解禁から始めよう。そうすれば話し合いの席も頻繁に持つことができるし、貴族の官僚同士の交流も盛んにできる。なにより、お互い知り合うことができる」

 アルフォンソはそういいながら、リナを見つめる。

「数百年前の付き合いのようにするにはそれが、まず、必要だろう?あの時もまず、門から閉じられたのだから、まずそれを再開することが道理なのでは?」

 門を開くということは、アルフォンソが自由に妖精城に出入りすることができるということ。すなわち、いつでも、リナに接触できるということにもなるのだが、個人的な理由を盾に政治の決断を鈍られることは 、聡明な妖精王にはなかった。

「私の即位式が来月にある。もちろん、二人には招待状を送るが、その式の後、すぐに門を開く儀式を執り行うということにしよう」

「そうですね。まず、そこから始めましょう」

 二人の男がかっしりと契約の握手をするのをリナは複雑な思いで見つめていた。






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