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第九章 アスフィ 交流篇 《第二部》
第122.5話「辿り着いた先……」
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コルネット村までの道中、アスフィとアイリスは幾度も焚き火を囲い雑談に花を咲かせていた。
「日本……ですか。お兄様の……」
「はい、フィーの故郷です。エーシルは日本に逃げ、姿を隠していました」
「なぜ日本なのでしょう……?」
アイリスは疑問に思った。逃げた先が何故日本なのか。
その疑問にアスフィは淡々と答える。
「……『世界最古の花』をご存知ですか」
「『世界最古の花』……ですか?」
「日本には二千年以上前からあるとされる、あるハスの花が日本で見つかったという話があります。エーシルはそのハスの花を求めて日本に渡りました」
「……どうしてハスの花なのでしょう?」
「それは僕にも分かりません。これも聞いた話ですので」
アスフィにも分からない。その言葉にアイリスは当然の疑問を投げかける。
「……誰に、ですか?」
「僕の母さん、アリア・シーネットです」
「……アリア・シーネット……彼女は一体何者なのでしょう」
「それは…………いえ、僕の口からより実際に本人に聞いた方が早いですね」
「……そうですか。では早く参りましょう。コルネット村に。そこにあなたの母が居るのでしょう?」
「恐らくは……」
アイリスは立ち上がった。
「今から行くんですか?」
「……わたくしは知識を蓄えるのが趣味なのです。そんな話を聞いたら動けずには居られません」
「…………分かりました。では、行きましょう」
アスフィは焚き火を消した。
「ここからコルネット村まではさほど遠くはありません。今から行けば朝方には着くでしょう」
そう言うと、アスフィとアイリスはコルネット村へと歩み出した。
***
コルネット村。アスフィ・シーネットの生まれ故郷。
そこはかつての龍神の手により、人が住める場所では無くなっていた。
「本当にここに居るのですか」
「……居るとは言ってません」
「……では嘘を?」
「僕はこの景色をもう一度見たかったんです」
かつて緑豊かな場所だったとは思えない程、辺りは真っ黒である。
「アスフィ、この景色を見てなにを感じますか? 怒りですか? それとも悲しみでしょうか」
「……僕にとってこの場所は両親との思い出の場所です。怒りでも悲しみでもありません……強いて言うなら懐かしさ、ですかね」
アスフィは真っ黒の中に咲く一輪の花を手にした。
「……この子は強いですね」
「そうですね……ん? あれは――」
アイリスは何かに気が付いた。アイリスはその何かに向かって歩いていく。その視線の先にあったのは――
「これは足跡……?」
「みたいですね。恐らく誰かが来たのかと」
「……アリア・シーネットでしょうか」
「分かりません。しかし、誰が来たのか気になりますね……少し調べて見ましょう。幸いここは小さな村です。この様子だとあまり遠くまでは行っていないはずです」
アスフィとアイリスは足跡を辿っていく……。
……
…………
………………
「……ここで終わりのようですね」
足跡は途中で無くなった。アイリスは残念そうに言う。
しかし、アスフィは違った。
「いいえ、アイリス。僕達は当たりを引いたみたいです」
「……え?」
「……居ますよね? そこに居るのは分かっています。出てきて下さい」
「誰かいるのですか? ……まさかアリア!?」
アイリスは気付いていなかった。
「残念、バレちゃったか!」
「オーディン!? 何故あなたがここに!?」
僕達の前に居たのは緑目、緑髪の少女、オーディンだった。
「私はアイリス、君に用があるんじゃない。神ではなくなった君にはね」
「……あなた本当にオーディンですか? わたくしが知っているオーディンはそんな事を言うとは思えません」
「私はオーディンだよ。創始者オーディン」
「……無駄ですよ、アイリス。このオーディンは事実、君が知っているオーディンでは無いですから」
アスフィの言葉の意味が理解出来ない。
「ねぇ、アスフィ。君に一つ聞きたいんだ」
「何ですか?」
「……お待ち下さい! わたくしはまだ理解出来ていません! オーディン! あなたは誰なのです!!」
「……はぁ、だから言ってるよね。オーディンだって。今アスフィと話しているから邪魔しないで、人間」
そんな言い方はよくないと思うけどなぁ。言い方はとはいえ、僕も彼女の意見には賛同だ。ここはアイリスの出る幕じゃない。
「大丈夫です、アイリス。君の疑問は分かりますが、それはまたお話します」
「アスフィ、やっぱり君は面白いね! 流石アリアの子だよ」
「ありがとうございます。僕にとってその言葉は最高の褒め言葉です」
「…………でも、素直に受け入れる所はあまり好きじゃない。よし、じゃあ話を戻そうか」
オーディンはその場に転がっていた真っ黒に焦げた丸太に腰を掛けた。
「君、なぜセリナを放置したの?」
キャルロットとの戦いで敗れた者の名を出したオーディン。
アイリスもまたそれについて疑問に思っていた。
「…………アレは僕の知らない者ですから」
「……そうなんだ。君、残酷だね」
「そう思いますか? 僕は僕が大切に思う者を守るだけです」
「その中に彼女は含まれていなかったの? 共に行動した仲じゃないか」
「それはフィーであって僕では無い。僕はアレを仲間とは思っていませんので」
オーディンはアスフィの発言に満足そうな顔であった。
「あははっ! やっぱり君、面白いや!」
「創始者にそう言われると僕もなかなかに成長したのでしょうか」
「私は前から君を評価しているよ? ……フィーでは無く、君自身をね」
「日本……ですか。お兄様の……」
「はい、フィーの故郷です。エーシルは日本に逃げ、姿を隠していました」
「なぜ日本なのでしょう……?」
アイリスは疑問に思った。逃げた先が何故日本なのか。
その疑問にアスフィは淡々と答える。
「……『世界最古の花』をご存知ですか」
「『世界最古の花』……ですか?」
「日本には二千年以上前からあるとされる、あるハスの花が日本で見つかったという話があります。エーシルはそのハスの花を求めて日本に渡りました」
「……どうしてハスの花なのでしょう?」
「それは僕にも分かりません。これも聞いた話ですので」
アスフィにも分からない。その言葉にアイリスは当然の疑問を投げかける。
「……誰に、ですか?」
「僕の母さん、アリア・シーネットです」
「……アリア・シーネット……彼女は一体何者なのでしょう」
「それは…………いえ、僕の口からより実際に本人に聞いた方が早いですね」
「……そうですか。では早く参りましょう。コルネット村に。そこにあなたの母が居るのでしょう?」
「恐らくは……」
アイリスは立ち上がった。
「今から行くんですか?」
「……わたくしは知識を蓄えるのが趣味なのです。そんな話を聞いたら動けずには居られません」
「…………分かりました。では、行きましょう」
アスフィは焚き火を消した。
「ここからコルネット村まではさほど遠くはありません。今から行けば朝方には着くでしょう」
そう言うと、アスフィとアイリスはコルネット村へと歩み出した。
***
コルネット村。アスフィ・シーネットの生まれ故郷。
そこはかつての龍神の手により、人が住める場所では無くなっていた。
「本当にここに居るのですか」
「……居るとは言ってません」
「……では嘘を?」
「僕はこの景色をもう一度見たかったんです」
かつて緑豊かな場所だったとは思えない程、辺りは真っ黒である。
「アスフィ、この景色を見てなにを感じますか? 怒りですか? それとも悲しみでしょうか」
「……僕にとってこの場所は両親との思い出の場所です。怒りでも悲しみでもありません……強いて言うなら懐かしさ、ですかね」
アスフィは真っ黒の中に咲く一輪の花を手にした。
「……この子は強いですね」
「そうですね……ん? あれは――」
アイリスは何かに気が付いた。アイリスはその何かに向かって歩いていく。その視線の先にあったのは――
「これは足跡……?」
「みたいですね。恐らく誰かが来たのかと」
「……アリア・シーネットでしょうか」
「分かりません。しかし、誰が来たのか気になりますね……少し調べて見ましょう。幸いここは小さな村です。この様子だとあまり遠くまでは行っていないはずです」
アスフィとアイリスは足跡を辿っていく……。
……
…………
………………
「……ここで終わりのようですね」
足跡は途中で無くなった。アイリスは残念そうに言う。
しかし、アスフィは違った。
「いいえ、アイリス。僕達は当たりを引いたみたいです」
「……え?」
「……居ますよね? そこに居るのは分かっています。出てきて下さい」
「誰かいるのですか? ……まさかアリア!?」
アイリスは気付いていなかった。
「残念、バレちゃったか!」
「オーディン!? 何故あなたがここに!?」
僕達の前に居たのは緑目、緑髪の少女、オーディンだった。
「私はアイリス、君に用があるんじゃない。神ではなくなった君にはね」
「……あなた本当にオーディンですか? わたくしが知っているオーディンはそんな事を言うとは思えません」
「私はオーディンだよ。創始者オーディン」
「……無駄ですよ、アイリス。このオーディンは事実、君が知っているオーディンでは無いですから」
アスフィの言葉の意味が理解出来ない。
「ねぇ、アスフィ。君に一つ聞きたいんだ」
「何ですか?」
「……お待ち下さい! わたくしはまだ理解出来ていません! オーディン! あなたは誰なのです!!」
「……はぁ、だから言ってるよね。オーディンだって。今アスフィと話しているから邪魔しないで、人間」
そんな言い方はよくないと思うけどなぁ。言い方はとはいえ、僕も彼女の意見には賛同だ。ここはアイリスの出る幕じゃない。
「大丈夫です、アイリス。君の疑問は分かりますが、それはまたお話します」
「アスフィ、やっぱり君は面白いね! 流石アリアの子だよ」
「ありがとうございます。僕にとってその言葉は最高の褒め言葉です」
「…………でも、素直に受け入れる所はあまり好きじゃない。よし、じゃあ話を戻そうか」
オーディンはその場に転がっていた真っ黒に焦げた丸太に腰を掛けた。
「君、なぜセリナを放置したの?」
キャルロットとの戦いで敗れた者の名を出したオーディン。
アイリスもまたそれについて疑問に思っていた。
「…………アレは僕の知らない者ですから」
「……そうなんだ。君、残酷だね」
「そう思いますか? 僕は僕が大切に思う者を守るだけです」
「その中に彼女は含まれていなかったの? 共に行動した仲じゃないか」
「それはフィーであって僕では無い。僕はアレを仲間とは思っていませんので」
オーディンはアスフィの発言に満足そうな顔であった。
「あははっ! やっぱり君、面白いや!」
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