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ガタン、ゴトン、規則的な揺れが足元に伝わってくる。

車内は仕事帰りのおじさんお姉さん方が大半を占めていて、『今日も1日、お疲れ様でした』と心中で労いの言葉を呟いた。

窓には車内の様子が反射して映っているから、外の景色を見ようとしても見られない。

1つ、2つ3つと各駅で停車する度、人が減っていき、私達の駅ももうすぐだと感覚で分かる。

もともと家に帰ったらお風呂入って番組録画してさっさと寝ようと思ってたけど、今日はすぐ眠れそうにない。

小さな欠伸を溢す碧音君がなんだか幼くみえて、つい口元が緩む。

静かな空間が眠気を誘うよね。私は碧音君達のバンドの曲を頭の中で何度もリピート。

「次はー、南豊山ー、南豊山。お降りの際は、足元にお気をつけください」

「着いたね」

「ああ」

人の波にのって改札を通り、駅を出た。

「わあ!暗いね?ここ1人で帰るのかー。ちょっと心細くない?怖いな、不審者現れたらどうしよう?」

不安な表情をしてみる。

「……」

「嫌だけど、怖いけど1人で帰るしかないかぁ。でも怖いな」

「さよなら」

「そうじゃないよね?ここは『しょうがないな、特別に送ってやるよ』って言われるシーンなんだよ漫画では」

なんの躊躇もなく帰ろうとした碧音君を引き留める。

「知るか」

折角か弱い女の子のふりしたのに、無駄だった。

「帰ろうよ!」

「さようなら」

「待って……っ」

碧音君に伸ばした手は虚しく空振りに終わり、無情にも去っていってしまった。駅までは同じだけど、帰り道は反対方向のようだ。

やっぱり、マンガやドラマみたいに上手くはいかないのね。

だんだん小さくなっていく背中から目を離して空を見上げる。

満点の星空。

なんだろう、これから毎日がもっと楽しくなる予感がした。


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