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【第17章 居場所のために】
しおりを挟むピピピッ、ピピピッ。
「……うっせ」
寝返りを打ち手探りで携帯を見つけ、目を細めつつアラームを解除。
「はー」
もう8時か。掛け布団を剥ぎ取って上半身を起こす。
朝日が目に染みて生理的な涙が出てくる。ベッドでは碧音がまだ寝ていて。
あどけない寝顔。
危惧していた通り、夜中に魘されて何度か起きた。苦しそうな呻き声と物音に気づき、宥めてやった。
だから結局ちゃんと寝れたのは朝の3時頃。
俺ももっと寝ていたいとこだけど、おばさん達に泊まらせてもらいましたっつっとかねえと。
せっかく安心して眠れてる碧音を起こさないように部屋を出てリビングへ。
「おばさん」
「あらあら?!皐月君じゃなーい。玄関に碧音のじゃない靴があって、友達なのかしらって思ってたけど。皐月くんだったのねえ」
「昨日の夜から泊めてもらったんす。言うの遅れてすみません」
「いいのよー。気にしないで。そうだ、朝食食べてくでしょ?」
「いいんすか?」
「勿論!碧音も起こしてきてくれる?」
「碧音、起こそうとしたんすけどダメで。昼頃まで寝てると思いますよ」
今碧音を起こすのは忍びないから、適当に言っておく。
「碧音は本当、寝起き悪いんだから。じゃあ、皐月君の分すぐ作ってあげるから」
「あざっす。あの、おじさんは?」
「仕事よ、仕事ー」
今日は日曜だというのに仕事って、大変だな。
着替えるため部屋に戻り布団も畳んでパッパと支度をし、おばさんのパンケーキをごちそうになった。
パンケーキにヨーグルト、サラダ。こういうちゃんとした朝食はいつぶりだったっけ、と思いつつ皿を空にしていく。
「おばさん、ごちそう様!めっちゃうまかった」
「やだー嬉しいこと言うじゃない」
「いやまじでうまかったんですって」
「また食べにいらっしゃい。あ、確か今日もライブなのよね?それまで家でゆっくりしていって」
「はーい」
碧音の家は居心地がいい。昔から住んでたみたいに、あったけえんだよな。
おばさんと2、3言交わして電気もつけてなければカーテンも閉めたままの碧音の部屋へ。
勉強机の上にはドラムに関する本が雑に積み重なっている。どれも何度も読み返しているせいでボロボロになっていた。
勉強そっちのけでドラムのことばっかやってんじゃねえかと思うけど、本棚にはちゃんと問題集とか教科書が入れてあって、笑えた。
懐かしいなー、高校の授業。寝てばっかだったけど。
なんて昔の思い出に浸っていると後ろからモソリ、布の擦れる音が。起きたか。
「碧音、朝ですよー」
カーテンを開けて、部屋に朝日を取り込む。
「……あさ」
まだ頭がはっきりしないのか、ボーッとしている。
もしこの隙だらけの寝起きの顔を変態こと明日歌が見たら、カメラで連写する。そして待ち受けにしたーって言う。アホだ。
「碧音、具合は?」
昨日の血の気を失った蒼白な顔よりもよくはなった気がするけど、まだ顔色がいいとは言えない。
「気分悪いとかねえ?」
「普通」
普通って何だよ。良くも悪くもないってことか。
「…………昨日の、ライブは?」
「昨日は星渚と藍でやった。サプライズっつー設定にしたらしいぜ。問題なく終わったって」
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