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3章

10.

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 時間をかけて全部挿入れたところで、織之助が堪えるように息を吐いた。
 もともと体格差があるし負担をかけるだろうとは思っていたが、想像していたよりずっと狭い。

「キツいな……」

 思わずこぼれた呟きに鈴が反応する。

「だ、め……ですか……?」

 いっぱいいっぱいなくせに、こちらを気遣うような声で訊かれて喉が鳴りかけた。
 ――ああくそ。

「だめなわけあるか。……めちゃくちゃ気持ちいい」

 掠れた声で言えばきゅっと鈴のナカが締まってうねる。
 奥へ導くように動いたそこに腰が震えた。
 めちゃくちゃにしたくなる情動をなんとか奥歯を噛み締めて堪える。

「馬鹿、締めるな……っ」
「だ、だって……!」

 なおもぎゅうぎゅうと締めつけてくる隘路に「ぐ……」と声が漏れた。
 もう動かないでいるのは無理だ。
 荒くなった息を隠さず、織之助はそっと額を重ねた。

「なるべく、優しくするから」

 鈴を気遣ったのを装って、その実、自分に言い聞かせている。
 そうしないと昂ったまま無理矢理にでも暴きたてて啼かせてしまいそうだった。
 織之助がそんなことを考えているとは露知らず、鈴はこくこくと首を縦に振って頷く。
 そのもうずっと真っ赤な顔にキスを落として、緩慢に腰を揺らした。
 ぐちゅりと触れている部分が水音を鳴らす。

「ぁ……」

 薄く開いた唇からこぼれる甘い声に食らいついて、隙間をこじ開けた。
 小さな舌を吸って嬲りながら、あくまでゆっくり律動を続ける。
 空いていた手で揺れている胸のふくらみに触れ、その先端を潰した。

「ん――っ」

 口を塞がれているせいでくぐもった声が端から落ちる。
 いっそう締まったナカをこじ開けるように抽送して奥深くを叩けば、鈴の喉から甘い悲鳴が生まれた。

「だ、めっ、まって、織之助さまっ……ぁんっ」

 痛みじゃなく気持ちいいのが勝った呻きに自然と腰の速度が上がる。
 胸の突起を指で挟んで転がし、呼吸を奪うように舌を絡めた。
 必死に応えようと小さな舌が動くのがたまらない。

「んう、ぅあ、んん……っ」

 声にならない喘ぎを聞きながら重たい腰を打ち付ければ、ぐちゅぐちゅとあられもない音が部屋に響いた。
 いっそ暴力的なまでの快感が背筋を走って理性を溶かしていく。
 ――ずっと欲しかった。

「……鈴」

 欲しかった。抱きたかった。自分だけのものにしてしまいたかった。
 押し殺していた感情がそのまま衝動になって、大きく腰が動く。
 
「――っ!」

 鈴が喉を反らして酸素を求めるように口を開けた。
 遠慮のない律動にかき混ぜられた鈴の呼吸が短くなる。
 限界が近いのを悟った織之助が絶頂へ導くように胸の尖りを摘み、ぐっと下半身を奥深くに押し込んだ。しがみつく鈴の爪が背中を引っ掻いて赤く線を引く。

「ぁう、ま、……だめ、だめっ……!」

 ほとんど叫んぶように声をあげた鈴が、ピンとつま先を伸ばして大きく震えた。
 併せて膣内が収縮して織之助を締め付け――歯を食いしばってその快感を堪える。

「は……鈴」
「……はあ、……へ、え?」

 一度怒張を抜いて、くるりと鈴をひっくり返す。
 力の抜けていた鈴は簡単にシーツにお腹をつける形になった。

「あの……?」

 状況の理解ができない鈴の細い腰を掴んで持ち上げ、濡れたそこに屹立を押しつける。

「……おり、のすけ、さま?」
「うん」

 何をされるか潔く気づいたらしい鈴が頬を引き攣らせて訊いた。
 返事になっていないような織之助の返しに慌てて抗議の声を上げる。

「待ってください初心者にはいろいろハードルが高っ……ぁん!」

 抵抗をねじ伏せるようにまだ敏感なそこに突き立てられて顔を突っ伏した。
 さっきよりもずっとスムーズに織之助を受け入れたそこが、意図せずきゅうきゅうと熱い昂りを締め付ける。
 それがさらに煽ってることを鈴は知らない。

「――ごめん」

 短く告げた謝罪の答えを聞く前に、我慢できず腰をぶつけた。






     ◇ ◇ ◇ ◇





「……ごめん」

 もはや朝の方が近いんじゃないかという時間になってようやく、織之助が鈴を解放した。
 痛くなかったとはいえ初めてだった鈴はいっぱいいっぱいを通り越して、もはや屍のような状態でベッドに横たわっている。

「……おりのすけさま……」

 喘ぎすぎて掠れた声が痛々しい。
 あれから体勢を変えゴムを変え、結局何回シたのか。数える余裕なんてもちろん鈴にはなかた。
 何度目かの後にお風呂に入ったところまでは覚えているけれど、そこから先は記憶がないに等しい。
 
「……水飲むか?」

 その気遣いをもう少しはやく発揮してほしかった――というのは今さら言っても遅いので。

「のみます……」

 力なく頷いて織之助が持っているペットボトルに手を伸ばす。
 と、伸ばした手から遠ざけるように織之助はペットボトルを傾けて水を口に含んだ。
 
(ん……? 織之助さまも喉乾いてたのかな)

 そう思ってその様子をぼうっと眺めていると、不意に顔の横に手が置かれ、そのまま整った顔がまっすぐに近づいてきた。
 水に触れたからか少しだけ冷たい感触が唇に落ち――、

「ん……」

 いわゆる口移しで水が喉を通った。
 初めてのことに戸惑う鈴の舌を、織之助が追いかけて捕まえる。
 もう水なんてないのにぐちゅぐちゅと咥内を擦られて、まだ余韻として残っていた熱が簡単に呼び出された。

「……まずいな」

 それは織之助も同じだったらしい。

「……もうしませんよ⁉︎」
「うん」

 ぺろりと唇を舐められて背筋が震える。
 
「キスだけだから」

 そう言うが早いか。
 あっという間に唇が塞がれ、熱い舌が口のなかをくすぐった。

(……ほんとにキスだけで終わるんだろうか)

 へろへろの頭でそんなことを考えながら、抵抗らしい抵抗もせず織之助に身を預け――、やはりというべきか反故にされかけた約束に鈴は抗議の声をあげたのだった。

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