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午後4時、ホームルームは夜明けまで。

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「執政官様、そしてエリザ様、ルル様。本日は誠にありがとうございました」

 元に戻った客室で。衣装は元に戻った状態だが──天之宮あまのみや空那かなは。恭しくそれぞれに深い礼をする。つい先刻、ルルに対して殴りかかった様相など嘘だったかのように。今の彼女は、『巫女』として完璧であった。

「いえ……とても興味深い事を学習……じゃなくって。『ニンゲン』ならこう言うのでしょうね……とっても楽しかったです。執行官ゼファー様より頂いた複数の学習データですが、他のクレイゴーレムに適用する前に、エリザウチの身体でも試してみようと思います。『ニンゲン』の役柄によって求められる所作も変化すると思われますので」
「そうだな、一度完全に『適合』した貴女であれば、他のデータを読み込むときのエラーも少ないだろう。それでテストランしてみると良い」
「それじゃ、アタシたちはここで解散かな? いや~、本当に楽しかったぁ♡♡」

 大江之鬼の種族に配られた呪符、粘土自律人形クレイゴーレムに適用するための魔道板ディスク。それらを種族の長である空那かなとエリザに配った後。ゼファーは一言添える。

「空那さん、エリザさん。本日はお疲れ様でした。これにて講習は終わりです、遠方よりはるばるご足労頂き感謝します……ルルさん。貴女は残ってください。まだ、貴女が使用するべき魔道具を選定しておりませんので」
「えぇ~? アタシはそんなの必要ないって言ったじゃないですかぁ~」
「言ったでしょう、魔道具は『元の自分の姿』を記憶するために必要な記録媒体でもあると。それも無しに変身する事は非常に危険です。これから貴女に適合するモノを探しますから。これは『補習』です」
「うぇぇ~……執政官様せんせぇがいじめる~……」

 そうして、空那とエリザは礼をしてこの部屋を去る。じきに、執行官グレーターデーモンが種族の長たちをそれぞれの族へと送り届けるだろう。その前に──執政官アークデーモンは。この部屋を覆い隠すように巨大な結界を張る。誰も通さず、何も通さないほどの頑丈な結界を。

「それでそれで! 先生せんせぇ、これからどんな事を教えてくれるのっ?」
「貴女様に教える事などありません、私の方が教わりたいぐらいですよ……■■■魔王様」

 ゼファーは立場をわきまえていて、あえて来客用の下座に座ったが。銀髪少女のルルは、意に介さず。ゼファーの隣に座るや否や、その小さな体躯をゼファーに預ける。イタズラがバレて、照れ隠しと子供っぽいごまかしの混ざった表情で、ルルは問いかけた。

「……えへ。いつからバレちゃってた?」
「ゴブリンは……まだ種族同士で争っている精霊です。それゆえ、『ゴブリンの長』はすぐに入れ替わる。高度な魔法が扱えるほど、種族が成熟していません。それに──本来、変身魔法は。私は『元の姿に戻るために魔道具が必要』と言いましたが、そもそも魔道具無しに変身魔法を唱える事すら困難なのです。それが出来るのは、執行官グレーターデーモンでもごく一部……単なる種族の長が、魔道具無しで変身できる事の方が異常ですので」

 無論。執政官アークデーモンや、変身魔法に長けている種族なら可能だろうが。少なくとも、ゴブリンはそうではない。

「え~、じゃぁ最初っからバレてたの?」
「正確に『魔王様』と分かったのは、エリザへの対処の時です。私の時間停止を上回る速度で『魔力の場』を書き換えられたのを察して──まぁ、貴女しか居ないだろうと」
「ふふ、そっかぁ……でも、楽しかったでしょ♡ それに、貴女も執行官グレーターデーモンにわざと格下げして成りすましてたじゃない♡♡」

 ニコニコと、少女は満面の笑みを浮かべる。混じりけのない感情に──暴食Gluttonyたるゼファーも、溜息をつきながらも少しだけ微笑む。

「……えぇ。良い経験を積ませて頂きました。私もまだまだ研鑽が必要ですね」
「もぅ! キミの意固地な所は、『常に現状より頑張りすぎるとこ』だよ? 謙虚が例え美徳でも……行き過ぎは卑屈だからね?」
「それを『傲慢Superbia』たる貴女がおっしゃるんですか……ふぅ。ほどほどを目指せるように、少し考え方を改めます」

 その言葉を聞くと。ルルはゼファーの頭を抱きかかえ、褒めるかのように頭を優しく撫でる。

「……いつもありがとう、ね」
「こちらこそ」

 そして──彼女らが座っていた椅子が、寝心地の良いふわふわなベッドに変貌する。広すぎる空間ではなく、姉妹がちょうど暮らせるぐらいの落ち着いた部屋になって。

「それじゃ──ここからはアタシがゼファーお姉ちゃんに甘える番ね! そうだなぁ……ずっと遠くに行ってたお姉ちゃんが返ってきて、2年ぶりに帰ってきたお姉ちゃんにアタシが夜通し甘えるっていうのはどう!?」
「貴女、本当にこの時は一番楽しそうですよね……戦略軍議のピリピリ感と全然違いますよ……」

 執政官アークデーモン、そしてそれらのチカラを更に上回る魔王は。膨大な魔力を持ち、一つの個体だけで活動しているわけではない。今も、彼女らの別側面、別の分体、あるいは落とし子として、あらゆる場所や空間で活動を続けている。

 多くのソレらが立ち向かうのは、危機や戦慄。仲間同士の心安らぐ場所など、存在しない。だからこそ──彼女たちは、こうして時折、享楽にふける。自分自身の心の在処を再確認するために。

────────────────────────────────────────────

「ね、お姉ちゃんっ……一緒のベッドで寝るの、いつぶりかなぁ……えへへ、嬉しい♡♡」
「……大きくなったんだから、もう一人で寝る事にも慣れたと思ったのだけれども。甘えんぼなのは変わらないわね♡♡」
「うん、だってお姉ちゃんの事大好きだもんっ♡♡♡ ずっとこの日を待ってたんだから♡♡♡♡」

 新品ではなく、ある程度使われた毛布。いつもはルルの身体を包んでいるソレは、姉妹が入るには少し狭い。だから──年の離れた2人の姉妹は、お互いの身体を優しく包み込んで、一つのかたまりになる。身体を重ねる事に、何の抵抗も無い。

「……少し見ない間に、また貴女のおっぱいが大きくなったわね♡♡ 背丈は小っちゃくてカワイイままなのに♡♡」
「だってぇ♡ 毎夜毎夜、ゼファーお姉ちゃんと一緒に寝る事を考えて、チクニーとおっぱいトレーニングしてたんだもんっ♡♡ 今度帰ってきたときは、い~っぱいお姉ちゃんに抱きしめてもらうために♡♡♡」
「……もう、本当にルルはカワイイな♡♡」

 彼女が望んだように。そのたわわに実った乳房を、乳腺に沿って指で撫でる。小さなルルの体躯が、ゾクゾクと震えた。

「ふ、にゃぅっ……♡♡ も、もうっ! そんなに優しい愛撫でいいの!? 今日はお姉ちゃんのラブドールになるつもりで来たんだから、もっとぐっちゃぐちゃになるまで犯していいんだよ!」
「……ふぅ……『ルル、可愛いよ』♡♡」
「ッ……♡♡」
「貴女を愛している……姿形が変わっても、貴女の事を想う気持ちは変わらない。願うのならば、ずっとルルをこうして抱きしめていたい……♡♡♡♡」

 執政官アークデーモンたるゼファーが。初めて、感情らしい感情を発露させる。一瞬だけ、姉妹の立場は逆転して。

「知ってる。ずっとお姉ゼファーちゃんが頑張ってるのも」
「……ルル……」
「ぇへっ♡ 不安な時、疲れた時……甘えたくなるよね。アタシも同じだもん」

 弱みを見せても、受け入れてくれる存在。対等で無ければ、得られない存在。

「えへ♡♡ お姉ちゃんの弱み、見つけちゃったぁ♡♡♡ ね、黙ってほしかったら──いっぱい、アタシを愛して欲しいな♡♡♡♡」
「ふふっ、そうね……こんなにおっきくなったおっぱい、毎日くちゅくちゅになるまで弄ってるおまんこ。どっちを、弄ってあげればいい?」
「どっちもっ♡♡♡♡」
「……仰せのままに、ルルちゃん♡♡♡」
 
 今の2人はラフな服装で、パジャマ姿に下着だけ。緩い服では、その内側まで手を入れ込む事だって簡単で。ルルの半パンに手を入れ、下着越しにぷっくりおまんこを擦る。

「ん、にゃぅっ♡♡ おねぇちゃっ♡♡ も、ゔっ♡♡♡ そんな風に、他の女の子も喜ばせてるんでしょっ♡♡♡」
「……これでも、そう思う?」

 乱交で、空那にした時よりも。貪るような、ルルのくちびるすら食べてしまうほどの。姉としての尊厳などかなぐり捨てた、ただただルルを味わうための、何十秒もの深いキス。舌同士が重なって、絡み合って。愛する妹の口の中を犯す事に、ゼファーは改めて悦びを感じる。

「……っぷ、はぁぁっ……♡♡♡ ぇへっ♡♡ こんな風に言ったら、ちゃんと応じてくれんるんだもの。やっぱり、ゼファーお姉ちゃん……大好き♡♡♡♡」
「……私もですよ、ルル♡♡ ──ッッ♡♡」

 そう言い、彼女を抱きとめたゼファーだったが。ふと、股間部にこそばゆい感覚を覚える。ルル自分ゼファーを抱きしめて、お互いにハグしている状態に変わりはない。だが──いや。彼女ともあろう人物が、極論手を増やすような事をした所で驚くべきことではない。

「今日は、本当に久々だから──お姉ちゃんがおまんこ汁でベッドをぐっちゃぐちゃにするまで、一緒に気持ちよくなろっ♡♡♡ アタシも、貝合わせもしたいし、カナちゃんみたいにおっぱいミルクをお姉ちゃんに呑ませたいし……色々、やってみたいんだぁ♡♡♡♡」
「……手のかかる妹ですね。ふふっ……でも、私もとても楽しみ。──意識を失うまで、この小さなベッドでイキ狂って、お互いの境目が分からなくなるまで。一緒に、愉しみたいです♡♡♡♡」

 そこに主従は無く。ただ、仲睦まじい姉妹が居るだけで。

────────────────────────────────────────

 果たして、魔族は『ニンゲン』を理解することは可能だろうか。
 『ニンゲン』は、形を模倣した『魔族』を受け入れるだろうか。

 ニンゲンと魔族の争いが何百年と続き、最早互いの種族の長も対立する理由を見失った頃。
 魔王と執政官アークデーモンは、一つの可能性に賭けていた。
 お互いの種族の持つ『本能』が一致すれば、互いを理解できる。互いの禁忌を理解できる。
 魔王がニンゲンの姿を真似て、ニンゲンの社会を学ぶ方策を示したのは、それがキッカケだった。

 この世界がこれからどのような未来を辿るか。未来を見る事の出来る者は誰も居ない。
 だが……魔王は。今、この時だけは。姉であるゼファーの胸の中で、僅かな安らぎを得ていた。
 いつか、平和な世界で。安寧なる、親愛なる存在と、永く共に眠り続ける事の出来る日を夢見て。
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