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37. 領民たちからの祝福は格別なのですわ
しおりを挟む伯爵領の事業が軌道に乗った頃、アドリエンヌとアレックスの婚姻の儀が執り行われることとなった。
アドリエンヌの希望で、伯爵領にある教会で挙げた式は華やかであったがとても優しい式であった。
自主的に集まった領民たちが、領地を復興した若い二人を祝福するために教会の外で花を撒いたり祝福の歌を歌ったりしたのだ。
アドリエンヌはこの地の領民たちに受け入れられたことを何より喜んだ。
「アレックス様、領民たちがこんなにも私たちのために来てくださったのですね。」
領民たちの列はずっと先まで続いていて、式を終えたアドリエンヌとアレックスはまるでパレードのように馬車で教会からフルノー伯爵邸までを進んだ。
「アドリエンヌ様ー!お美しいです!お幸せに!」
「アレックス様!アドリエンヌ様とお幸せに!」
「おめでとうございます!」
様々な祝福の声がアドリエンヌの胸を熱くしたようで、アドリエンヌは瞳に透明の膜を張り、今にもポロリと零れ落ちそうになっている。
「アドリエンヌ、これはあなた方の努力の結晶だ。領民たちの幸せそうな顔を見てください。全て貴女と侯爵のお力ですよ。」
「嬉しいです。本当に。」
馬車から手を振ると領民たちは歓声を上げ、花を投げた。
皆林業で仕事を得た男たちと、ローズヒップで働き口ができた女たちで、一様に朗らかな笑顔を浮かべていた。
「「アドリエンヌ!アレックス!おめでとう!」」
伯爵邸に着いた時、別の馬車からマリーとフィリップの双子たちが飛び出してきて、少し大きくなった身体でアドリエンヌに飛びついた。
「「これからはアドリエンヌが本当のお姉様になるんだね!」」
「そうね。よろしくね。」
双子たちはアドリエンヌのことが大好きだったから心底喜んだ。
そうこうしていたら、伯爵と夫人が馬車から降りてきて笑いながら双子たちを連れて行ってしまった。
式へ参列していたシャトレ侯爵夫妻も伯爵の案内でサロンへ向かったようだ。
「アレックス様、アドリエンヌ様、おめでとうございます。それでは湯浴みの支度などありますからそれぞれのお部屋へお戻りください。」
そうしてアドリエンヌは今日ばかりは侍女たちに身体中を磨き上げられ、薔薇のお風呂に入れられて髪と体に香油をすりこまれ、ローズヒップの化粧水を塗りたくられた。
伯爵夫人が選んだという夜着を身につけてみたものの、リボンとレースがふんだんにあしらわれたその夜着は生地が薄く、裸身が透けて見えた。
「こんなに薄い夜着をどこで見つけたのかしら?着ても着なくてもあまり変わらないような気がするわね。」
そう呟きながらも今日の初夜はアドリエンヌにとっては本当に特別なのだ。
なぜならあれから何度か吸血行為を行ったもののアレックスは吸血鬼に未だなっていないからである。
「今日こそはアレックス様に吸血鬼になっていただきたいわ。」
そう決意してアドリエンヌは寝台に腰掛けて愛しい番いを待った。
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