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35. 伯爵領がとても栄えてきましたのよ
しおりを挟むそしてとうとう伯爵領で初めてホワイトオークの伐採が始まった。
皆で協力して下刈りとツル切り、そして枝打ちや除伐を行った森林は随分と管理されて順調に育ってきた。
それからはシャトレ商会からの職人たちと領民の林業従事者たちが協力して、どんどんと木材を収穫してシャトレ商会へ卸した。
そして一部の木材は伯爵領に作られた木材加工所で加工され、その後は工房で家具へと作り替えられた。
ホワイトオークはとても堅くて丈夫な為、大型家具や貴族の屋敷の床材にもなった。
またオークは堅い割に彫りがしやすい適度な硬さでたくさん彫のデザインを入れられることで、優美なデザインを好む貴族たちも魅了するだろう。
害虫予防のタンニンが多いこともあって、ウイスキーやワイン樽にも加工された。
それらは各地へ売られて美味しいウイスキーやワインにはかかせないものとなった。
「アレックス様、フルノー伯爵領のホワイトオークは今各地ですごく人気なのですわよ。それに、職人たちが加工や装飾を領民たちに指導した甲斐もあって、とても素晴らしい技術で家具や樽なども飛ぶように売れています。今では予約待ちになっているほどですわ。」
「本当に、信じられないですよ。これも侯爵とアドリエンヌ、それにアドリエンヌの同胞たちのおかげですね。」
「同胞たちも、領民たちと打ち解けてこの伯爵領に定住する者たちも増えていますし領民たちも同胞の正体を知っても恐れることなく今まで通りの付き合いをしているようなんですの。私としてはそれがとても嬉しいんですのよ。」
領民たちと同胞たちの信頼関係が築けたころ、自然に正体が露呈することになった。
その際アドリエンヌは差別や偏見を恐れたが、領民たちもこの伯爵領を救ってくれたという感謝の気持ちと一緒に仕事を行った仲間意識から、変わらない関係を築けているというのだ。
「これからは侯爵の計画の通り、侯爵領と伯爵領を中心にこのガンブラン王国に異形のものたちが増えるのでしょう。そうすれば、後々は差別や偏見に囚われずに人間たちも協力して共存していくことができるのでしょうね。既に正体が露呈しているアドリエンヌも、この邸の使用人たちからも好かれていますしね。」
「そうですわね。皆とても良くしてくださいますから、私は差別や偏見で辛い思いをしたことがありませんわ。」
伯爵領は貧乏伯爵家と呼ばれていたころとは違って、ガンブラン王国でも有数の豊かな領地となりつつある。
アドリエンヌが提案したローズヒップの事業も順調で、領内の女性たちの働き口となり大変喜ばれた。
ローズヒップも化粧水などにも加工して流行と美容に敏感な貴族はもちろん、手を出しやすい価格のものも作れば市井の民にも浸透した。
もちろんローズヒップティーもガンブラン王国では今健康や美容のためにと一世を風靡している。
「この伯爵領が栄えたことで、アレックス様の政務がお忙しくなったのは遺憾ですけれど。それでも領民皆が幸せになれる方向へと進んでいることが私は嬉しいのです。」
「アドリエンヌが努力してきたことに比べれば政務の多忙さなど当然のことです。本当に感謝していますよ。」
伯爵も今までは割とのんびりした日々をおくっていたのだが、ここ最近は政務が忙しく嬉しい悲鳴をあげているという。
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