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20. え?領主様だったの?
しおりを挟む夜は酒場のフォンドールも、昼間は私が讃岐うどん屋をすることになった。
それによって酒場の方は新しくホールに男性店員と女性店員を雇うことになり、私は昼間のうどん屋だけをすることになる。
昼間は店名も変えてシンプルに『うどん屋』という名前にした。
この世界でうどんは存在しないから、讃岐うどんの店はここ『うどん屋』しかない。
日本人の前世の記憶がある私からしたら、『うどん屋』と言う響きが馴染みがあるし、この世界の人が讃岐うどんに親しみを持ってもらいたくて決めた。
さあ、もうそろそろ今日もうどん屋開店!
「いらっしゃいませ!何にしますか?」
「えっとー、かけうどんときつねうどん。あと、野菜の天ぷら盛り合わせ一つ。」
「はい、お待ちください。」
うどん屋の方は厨房に真面目で勉強熱心なレナという女性店員を一人雇って、私はお客さんに説明ができるようにホールに出ることにした。
「いらっしゃいませ!何にしますか?」
「わかめうどんとぶっかけうどん、きつねうどんとエビの天ぷら三つください。」
「はい、お待ちくださいね!」
このうどん屋では箸も置いてあるが、フォークの先が二つに分かれていて少し間の広い、うどん専用の食器も置くことにした。
これが結構好評で、はじめはフォークもどきで食べているうちに常連さんになるほど箸を使いたがり、使い方が上達している人も増えた。
「すみません、こちらにソフィアさんという方はいらっしゃいますか?」
「はい、私ですけど。」
「私はクリスと申します。我が主人が怪我を致しまして、こちらに来れないので、私が代わりにこれをお持ちいたしました。」
「……大豆と小麦粉?フィリップさん?」
「左様でございます。主人の名は、フィリップ・フォン・ゴルダン。ゴルダン領の領主でございます。」
「……へ?領主様?え?」
初めて会った時農夫のような格好で大豆畑にいて、大豆のことを説明してくれたフィリップさんを思い出してみるけど、全く領主感なかったけど?
「やはりご存知なかったのですね。我が主人は頻繁に民と交流を図られるお方なので、きっと畑ででもお会いしたのでしょうが、正真正銘ゴルダン領主でございます。」
「……そ、それでお怪我をされたとお聞きしましたが、フィリップさん……いえ、領主様は大丈夫なんですか?」
「それが……。ベッドから起き上がれない状態でして。是非お見舞いに来ていただけないでしょうか?」
フィリップさんにはすごくお世話になっているから、しかも領主様というお忙しい立場にも関わらずいつも配達してくれてたなんて……。
「はい。それでは参ります。」
その日臨時休業にしてすぐにクリスさんと一緒にゴルダン領へと向かった。
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