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第1章 目覚め
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しおりを挟む「おやじ!」
「オウグさん!」
俺たちを覆うように展開させていた防御魔法は効果を成していなかったようで、内側にサタンが現れていた。
一番近くにいたと思われるオウグさんが襲われてしまったようだ。
他の4体の悪魔は防御魔法の外にいて、ベリアルが防御魔法に手を伸ばす。
バチッと音を立てて弾かれた手が焦げているところを見ると効果はあるようだが、焦げた手を見てこんなものかといった感じで歩を進める。
バチバチと火花を上げて進んでくる姿が骨になっていき、かなりホラーだ。
ただし、防御魔法の内側に入ったらすぐに筋繊維が、肌が、服が巻き戻るように再生する。
「少々バチッとする程度です」
その言葉を聞いた他の悪魔が歩を進める。
アスタロトは暴風を纏い、レヴィアタンは防御魔法に穴を開けて、アスモデウスはレヴィアタンの後ろからついてきて防御魔法を越えてきた。
「ベリアル、こいつを使え」
サタンの隣へ移動したベリアルが胸元から怪しく光る石?を取り出す。
「なんだありゃ!? それで何をするんだ……」
エヴァンの言葉に答えられる人は居らず、知っているであろう悪魔たちはこちらのことなど無視だ。
「がう!」
影から飛び出たビャッコが威嚇の姿勢で悪魔たちを睨む。
石から黄土色の光を取り出したベリアルはその光を遊ばせながらオウグさんの体に入れる。
「その手を離しやがれ!」
堪らずサタンに斬りかかるエヴァン。
火口君たちに走れと声を上げ、先走ったエヴァンに続く。
「主!」
「彼らの護衛! あとで追いかける!」
ガルムとクロムが火口ちゃんたちを追いかけて走るが、リリィとビャッコはその場にとどまる。
「ぬるいな」
オウグさんを地面に落とし、エヴァンの剣を片手で掴むサタンはエヴァンの剣を折って使えなくする。
「なっ……」
折れた剣を見るエヴァンにサタンの右手が胸に突き刺さる。
「エヴァン!?」
「大丈夫だ!」
拳は左脇の隙間に入っていたようで大丈夫だというエヴァン。
小太刀を抜き、サタンに斬りかかるも、避けられ、エヴァンを俺に向かって放り投げてくる。
エヴァンを片手で受けた俺ごと蹴り飛ばしたサタンはつまらなそうにため息をつく。
「この程度か。期待して損した」
踵を返すサタンの後ろにオウグさんの姿が見えた。
無くなっていた両腕が生えているけど、元の鍛冶で鍛えた筋肉は無く、ひょろりとした腕だった。
「オウグ……さ、ん?」
頭に鯨のイッカクのような角が生えてきて、120cmほどだった身長は160cmを越え、肌は焦げ茶色に、目の色は琥珀に輝いていた。
「目覚めたか、マモンよ。早速で悪いがやつらのことは好きにして良いぞ」
「ありがたき幸せ」
恭しく礼をするオウグさん立った人、強欲を司る悪魔マモン。
「ッ……死にやがれ、オウグ!」
「五月蝿いですぞ」
サタンから標的をマモンに移したエヴァンが殴りかかるも受け止められて、逆に袖口から出てきたナイフで手足を切りつけられる。
「いい加減にしろッ!」
マモンの胴を斬るように振るった小太刀だったが、なんの手応えもない。
「これで終わりよ」
マモンのナイフがエヴァンの頭へ一直線に飛んでいく。
マモンが邪魔で位置の悪い俺はナイフが刺さるまでに間に合わないだろう。
ーーーグサッ
ナイフの刺さった左胸から赤い血がジワッと服に染み込む。
革鎧があったにも関わらず突き刺さったナイフ。
水色の髪が綺麗な女性、サブマスターであるルフルさんがエヴァンを庇い、左胸にナイフが刺さる。
「ルフル!」
手足の動かないエヴァンはルフルさんの名前を呼ぶことしかできなかった。
「よかった。……エヴァン。あなたを、まもれたわ」
倒れる彼女を受け止めて上げられず、地面に倒れる。
「今すぐ回復魔法を……」
「おっと、させませんわ」
ルフルさんの近くへ寄ろうと動き出した時に、俺の体は全く動かなかった。
レヴィアタンが額にある3つ目の目を開いて、俺を見ていた。
「女に救われるとはな。運の良いやつだ」
「なぁ、あいつ試してみればいいんじゃない?」
サタンがエヴァンの運の良さを誉め、アスタロトがベリアルに目配せをする。
ベリアルが頷き、石から白い光を取り出し、エヴァンの体へ押し込んだ。
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