JOB CHANGE

サクタマ

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第1章 目覚め

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形勢はゴブリン達に寄っていて、高校生達がゴブリンナイト1体を相手にしているうちに騎士がどんどん減っていく。

ゴブリンキングが加わってからは騎士達が死ぬ確率がかなり増えてきた。

ゴブリンナイト2体と騎士の攻撃をいなしながらの状態では決定打が決めれない。

マジであり得ない!


「ぐっ! ……くそ……が」

叫んでいた騎士が倒れてしまったために、他の騎士達の動きが鈍る。

「なにやってんだよ!」

騎士を仕留めたゴブリンナイトの首を切り、数を減らす。

この乱戦では気配を消そうにも見つかってしまうため効率良く攻撃ができない。

「きゃぁ!」

「グハハッ!」

ついには女勇者ちゃんがゴブリンキングに捕まってしまった。

「ニンゲンドモ、ウゴグナ!」

ゴブリンナイトを倒し終えたもののゴブリンキングに人質を取られてしまっては動くことができない。

「ヨグモ、同胞ダチヲ殺ッテクレタナ! ゴゴマデグルノニ大変ダッタンダゾ!!」

力任せに投擲された斧が騎士達を屠る。

このままじゃ全滅しちまうぞ!


ーーーパシャン


ゴブリンキングの後頭部に水球が当たるもダメージがなさそうだ。

ゴブリンキングの後ろにはルフルさんがいて、水魔法を後頭部に当てたようだ。

「ゴノ女がドウナッテモ良イヨウダナ!」

吠えた隙をついてエヴァンが枝の上から飛び込んで、女勇者ちゃんを掴む右腕を切り落とす。

俺は飛び出して女勇者ちゃんを抱えてルフルさんの前へ走る。

落ちた腕とエヴァンを見てゴブリンキングが吠えようとするが、男子高生達が腹に火を纏った剣と魔力を纏った刀を突き刺す。

一瞬遅れてエヴァンが足の腱を切ると、ゴブリンキングが倒れ込む。

騎士達が剣を体中に突き刺し、火口君がゴブリンキングの首を叩ききる。

しばらくビクビクしていたゴブリンキングが動かなくなって戦いは終わった。



夜が明けた王都にはゴブリン討伐の知らせが回り、襲撃の緊張から解かれ歓喜していた。

100体近いゴブリンの死体をギルド職員や冒険者達が数ヵ所にまとめて、火魔法で焼却していく。

20体近いホブゴブリンと5体のゴブリンナイトにゴブリンキングの死体は使える素材があるのでギルド職員達がきれいに剥ぎ取りしている。

俺はそれらを西門に背中を預けて座り、呆然と眺めていた。

炎上していた森は水の勇者が水魔法で鎮火させたらしい。

「……良くやったな」

隣に座ったエヴァンが無茶しやがってと肩を叩く。

「なんとかなってよかった」

震える手を押さえながらなんとかエヴァンに応える。

「……王様から召集がかかってる王城に行くぞ」

騎士や高校生達は既に王城に戻っていて、後始末をしているのは冒険者やギルド職員達だけだった。

「……行かないってのは無しか?」

「無しだな。首に紐付けてでも連れていくぞ?」

苦笑いの俺に爽やかに笑うエヴァン。

……目がマジだ。



「此度は襲撃を防いでくれて助かった」

謁見の間に通された俺とエヴァンは国王から報酬を貰った。

金貨100枚。

「ゴブリンキングを討ったのは勇者様と聞いたが?」

この場には高校生達と騎士団長のモルドレッド等、防衛に関わった人が集まっていた。

「……いや、俺が首を切ったときには既に7割方切れてたと思います」

「しかし、首への攻撃は勇者様だけであったのでは?」

「もしかして……」

火口君は手応えの軽さに疑問を抱いていたようだ。

首を傾げている王様に賢者ちゃんが割って入る。

「おじさん、……魔法が使えるでしょ?」

好奇な視線や冷やかな視線が俺に集まる。

「えっと、……はい。使えますよ?」

「「バカな!?」」

宰相と騎士団長が揃って声を上げるが王様が手で制止する。

「ポーターだと聞いていたが魔法が使えるのかね?」

「……はい。風魔法……が使えます」

真剣な表情の王様に素直に応える。

「……わかった。君は風魔法で首を攻撃していたのかね?」

「……はい。ギルドマスターのエヴァン……さんが攻撃した後に首を狙って魔法を使いました」

「そんなもの誰も見ていないだろうが!」

「モルドレッド、黙りなさい」

狼狽える騎士団長は俺をきつく睨み黙る。

「では、活躍の上乗せで金貨を50枚追加しよ……うっ」

急に王様が咳き込んだため、これで謁見が終了となった。

去り際の宰相の目はひどく濁った光を灯して俺を睨んでいた。

王様の居なくなった謁見の間で高校生達と自己紹介をして、火口君や如月君からは手合わせがしたいと言われ、森下さんからは魔法の事を聞かれ、清水さんからは助けて貰った礼を言われた。

少し賑やかになった俺の周りをエヴァンが嬉しそうに眺めていた。

無事にゴブリンの襲撃を防げてよかった。
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