5 / 44
第1章 目覚め
5
しおりを挟む「ポーターなら収納空間を持っとるよな?」
オウグがカウンターに紐が通された鞄を置く。
「試作品じゃ。背負い型や斜め掛け型じゃなく、腰に巻く鞄じゃ。これから物を出し入れするようにすれば、ポーターだと判りにくく、要らぬ争いに巻き込まれんかもしれんからのぉ」
紐を抜き、通しにベルトを通すと、ちょうど良い感じになった。
「ありがとうございます」
「あとは服だな。冒険者として生活するんだから、汚れるから何着か買ってやるよ」
服屋に移動することになった。
オウグさんに改めて礼を言い、エヴァンと一緒に店を後にする。
服屋で数着のシャツとズボンを購入し、外套も1着購入。
シャツとズボンは収納空間に納めて、外套は羽織っておく。
収納空間のリストにはシャツ3枚とズボン3枚、解体用と採取用のナイフが新たに記載され残り95個となっていた。
どうやら同じ用途であればまとまるようだ。
「今日はもう宿に帰りな。明日からの依頼を見繕っとくから、朝イチに受付に来な」
ギルドマスターのエヴァンは忙しいため、仕事に戻るとの事。
訓練は仕事の合間を作って見てくれるとの事だ。
お礼を言って宿屋に戻る。
「あら、もう帰ってきたのかい?」
「えぇ。用事が済みましたので、部屋で本を読もうと思います」
食堂で夕飯の準備をしていたと思われるマルサが声をかけてきた。
「夕飯の準備ができたら、メルに声かけるように言っとくわ。それまでゆっくりしてて」
誰の事かと一瞬思ったが、水桶を持ってきた子かと思い出す。
部屋に戻り、シオンさんに渡された魔法の教本を読む。
魔法を使うには体内に宿る魔力を媒介を通して体外へ放出しなくてはいけない。
媒介に使われているのは杖と魔導書に指輪。
杖は魔力伝導率が良く、加工がしやすいので手に入れやすい。
魔導書は特定の属性しか使えないが、魔力を込めて文字を書いておくことで消費魔力を抑えて発動できる。
指輪は出回っている物が安価なため耐久力が低く、攻撃魔法を使うとすぐ壊れてしまう。
魔法の属性は火と水、風と土、氷と雷、闇と光の8種類が確認されている。
適正属性の確認は水晶に魔力を込めて、出てきた色で判別できる。
「生活魔法は生活するのに便利な魔法か……」
生活魔法は魔力消費が少ないが、名の通り、攻撃魔法ではない。
火属性の加熱、氷属性の冷却、水属性の飲料水、風属性の送風、土属性の穴堀、光属性の清掃、雷属性の電灯が発見されている魔法だ。
清掃は体を綺麗にする魔法なので唱えてみる。
体が淡く光り、清潔になった……ような気がする。
「やっぱり風呂に入らないと落ち着かないな……」
魔法を発動させる媒介はガントレットでも代用できたようだ。
夕飯の準備ができたとメルが呼びに来てくれたので、装備を外し買ってもらった服を着て食堂に降りる。
黒いパンに謎の肉が入ったスープとサラダ。
黒いパンはかなり硬かったが、スープに浸けて柔らかくして口に運ぶ。
ほどよい塩味がパンに移り、柔らかくなったパンは美味しかった。
謎の肉も柔らかく美味しかった。
美味しかったですとマルサさんに伝えて、部屋に戻りベッドに身を沈めた。
翌朝、水桶に入っている水で顔を洗い、食堂で朝食をとる。
黒いパンとサラダ、白い液体に謎肉ステーキ、付け合わせはじゃがいも?とニンジン?のソテー。
白い液体は牛乳に似た味で少し甘味が強い。
ソテーもそれぞれ似た味だった。
朝からステーキは重いかなっと思ったが、脂身が少ないのに柔らかくペロリだった。
部屋に戻り、警備服に着替え、装備を着ける。
宿を出て、目の前にある建物、ギルドの戸をくぐる。
早朝とあって受付は冒険者でいっぱいだ。
どんな依頼があるか気にはなるが、空いている列に並ぶ。
10分ほどで自分の番となったので、受付の女性にエヴァンの紹介で依頼を受けることになっていると伝えた。
「貴方が期待の新人マモルさんですね。……私はサブマスターのルフルです。ギルマスから話は伺っています」
透き通る水色の髪が綺麗な女性はギルドサブマスターのルフルさんとの事。
「今日の依頼は薬草採取です。5株1セットで4Gです。これを5セット納入で20Gの報酬です。薬草の群生地は此処です」
王都周辺の地図を取り出し、西側にある森の浅瀬を指で指すルフルさん。
「森の浅瀬なので魔物は居ないと思いますが、魔獣は居るので気を付けてください」
「分かりました。1つ質問なのですが、5セット以上納入しても良いですか?」
「構いません。ただ、群生地の薬草を根こそぎ採取しないでください。薬草はまとまって生えているので、2株は残すようにしてください」
薬草を2株残すことで群生地を確保しているそうだ。
王都周辺の薬草採取の依頼は新人が行うものなので、ギルドが薬草を管理して新人依頼として出すそうだ。
王都内部の簡易な地図と周辺地図を受け取ってギルドを後にした。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました
ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。
大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。
ー---
全5章、最終話まで執筆済み。
第1章 6歳の聖女
第2章 8歳の大聖女
第3章 12歳の公爵令嬢
第4章 15歳の辺境聖女
第5章 17歳の愛し子
権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。
おまけの後日談投稿します(6/26)。
番外編投稿します(12/30-1/1)。
作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる