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閑話
妹がアルバイトをはじめたいらしい(ケイ視点)
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クリスが街の視察に出ると言ったから護衛の任務で着いて行った。学園時代は、よくクリスとグレンと街に行っていたから、クリスも無茶なことをするわけもない。
ただの護衛という名のサボりみたいなものだ。
異常もなく、クリスも息抜きのように過ごしていた。視界の端で妹らしき人物を捉えたが、ここにるわけもないと思いながらも、その人物を確認する。
見間違えではなく、本当に妹だった。何故、グラッチェの前でオロオロとしている。
店前で何を迷っているのかと思ってしまう。俺やクリスは何度も足を運んでいるため気にすることもなく入店出来るが、王宮で開かれた茶会の一件から妹は屋敷と茶会でしか外出することがない。そんなあいつが、よくもひとりでここにいるものだと感心していると「あそこにいるのは、アンジュでいいんだよな?」、久しぶりに会うせいかクリスは自信なさげに聞いてくる。
「間違いない。だけど、何であんなところにいるんだろうな」
「学生くらいの者たちに、グラッチェは人気だからアンも誰かから聞いたのだろう」
「だけど、普通ひとりで来るか?」
「まあ、あれくらいの年齢なら数人の令嬢か婚約者と来るはずだからな」
婚約者か…。妹の婚約者──ユーゴ・ハミルトン がよくここに出入りしていると言う話を聞いたな。
それなら、ユーゴと待ち合わせでもしているのなら、邪魔しても悪いと思い立ち去ろうとすれば、「あっ、ひとりで入っていったぞ」と俺の期待を砕くような言葉を前にいる王子は平然と口にする。
「何で、ひとりで入るんだよ」
「気になるなら、俺たちも行くか」
勝手に言ってるが、その提案に乗ることにし、クリスを置いてすぐに店のドアを開くと、そこには初めての世界で固まっている妹がまだいた。
来店人数を聞かれているのに答えられずにいるみたいだったので、「3名で」と答える。
「よっ、アンジュ」
「クリス様にケイお兄様」
同じ屋敷に住んでいても最近会うことない妹は、驚いた顔をしているが、それが中々間抜けで笑いそうになる。
「アン、久しぶりだな」
クリスはクリスで、久しぶりに妹に会えたことで嬉しそうだ。
「俺はついでかよ。兄妹なのに冷たいな」
俺の名前よりもクリスの名前が先に呼ばれたことに不満だが、身分上仕方がないのかもしれない。
だが、兄として妹のことを可愛いと思い可愛がっていた分、いじけてしまう。
「殿下とお兄様では格が違います。それに、殿下は私のことをひとりの女性として扱ってくれますから」
女性の部分を強調しているが、俺にとって可愛い妹はいつまで経っても可愛いままなので、女性ではなく子どもみたいなものだ。それに、食意地が張っている癖によく言う。
店の者が案内した席に妹をひとりがけにし、クリスの隣に護衛として着席する。そして、クリスが疑問そうに、「それにしても、アンがこんなところにひとりでのは珍しいな。どうしたんだい?」と口にすれば「そ、それは」と妹は狼狽えている。
この狼狽えようは待ち合わせではないようだ。
妹が僅かに視線をを反らし、少しだが瞳孔が開いたので、どうしたものかと思い視線を辿れば、ユーゴが女性連れで入店してきた。
明らかに動揺している。
あの女に見覚えがあった。数日前に、王家から送られて来た婚約の打診のため何枚かの釣書(つりがき)の中にいたひとりだ。
「はぁーん、そういうことか。お前、捨てられたな」
冗談でからかってみるが、青白くしている姿を見ると、どうやら冗談だと通じなかったみたいだ。
隣にいるクリスからの視線が痛い。
そして、爽やかな王子の笑みを浮かべながら、優しい台詞を吐くクリスがおもしろくなってしまい肩が震える。
込み上げてくる笑いに、とうとう耐えられなくなり声が漏れると、隣から足が踏まれるが護衛用の靴を履いているため、効果はないが。
ただの護衛という名のサボりみたいなものだ。
異常もなく、クリスも息抜きのように過ごしていた。視界の端で妹らしき人物を捉えたが、ここにるわけもないと思いながらも、その人物を確認する。
見間違えではなく、本当に妹だった。何故、グラッチェの前でオロオロとしている。
店前で何を迷っているのかと思ってしまう。俺やクリスは何度も足を運んでいるため気にすることもなく入店出来るが、王宮で開かれた茶会の一件から妹は屋敷と茶会でしか外出することがない。そんなあいつが、よくもひとりでここにいるものだと感心していると「あそこにいるのは、アンジュでいいんだよな?」、久しぶりに会うせいかクリスは自信なさげに聞いてくる。
「間違いない。だけど、何であんなところにいるんだろうな」
「学生くらいの者たちに、グラッチェは人気だからアンも誰かから聞いたのだろう」
「だけど、普通ひとりで来るか?」
「まあ、あれくらいの年齢なら数人の令嬢か婚約者と来るはずだからな」
婚約者か…。妹の婚約者──ユーゴ・ハミルトン がよくここに出入りしていると言う話を聞いたな。
それなら、ユーゴと待ち合わせでもしているのなら、邪魔しても悪いと思い立ち去ろうとすれば、「あっ、ひとりで入っていったぞ」と俺の期待を砕くような言葉を前にいる王子は平然と口にする。
「何で、ひとりで入るんだよ」
「気になるなら、俺たちも行くか」
勝手に言ってるが、その提案に乗ることにし、クリスを置いてすぐに店のドアを開くと、そこには初めての世界で固まっている妹がまだいた。
来店人数を聞かれているのに答えられずにいるみたいだったので、「3名で」と答える。
「よっ、アンジュ」
「クリス様にケイお兄様」
同じ屋敷に住んでいても最近会うことない妹は、驚いた顔をしているが、それが中々間抜けで笑いそうになる。
「アン、久しぶりだな」
クリスはクリスで、久しぶりに妹に会えたことで嬉しそうだ。
「俺はついでかよ。兄妹なのに冷たいな」
俺の名前よりもクリスの名前が先に呼ばれたことに不満だが、身分上仕方がないのかもしれない。
だが、兄として妹のことを可愛いと思い可愛がっていた分、いじけてしまう。
「殿下とお兄様では格が違います。それに、殿下は私のことをひとりの女性として扱ってくれますから」
女性の部分を強調しているが、俺にとって可愛い妹はいつまで経っても可愛いままなので、女性ではなく子どもみたいなものだ。それに、食意地が張っている癖によく言う。
店の者が案内した席に妹をひとりがけにし、クリスの隣に護衛として着席する。そして、クリスが疑問そうに、「それにしても、アンがこんなところにひとりでのは珍しいな。どうしたんだい?」と口にすれば「そ、それは」と妹は狼狽えている。
この狼狽えようは待ち合わせではないようだ。
妹が僅かに視線をを反らし、少しだが瞳孔が開いたので、どうしたものかと思い視線を辿れば、ユーゴが女性連れで入店してきた。
明らかに動揺している。
あの女に見覚えがあった。数日前に、王家から送られて来た婚約の打診のため何枚かの釣書(つりがき)の中にいたひとりだ。
「はぁーん、そういうことか。お前、捨てられたな」
冗談でからかってみるが、青白くしている姿を見ると、どうやら冗談だと通じなかったみたいだ。
隣にいるクリスからの視線が痛い。
そして、爽やかな王子の笑みを浮かべながら、優しい台詞を吐くクリスがおもしろくなってしまい肩が震える。
込み上げてくる笑いに、とうとう耐えられなくなり声が漏れると、隣から足が踏まれるが護衛用の靴を履いているため、効果はないが。
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