9 / 77
1章 開始までのあれこれ
4
しおりを挟む
展開についていけなくなり、半分いじけていたら、ちょうど部屋にマカロンやビスケットなどのお菓子と紅茶が運ばれてきた。
それを見た瞬間に「単純で可愛いですよ」とユーゴに貶されたのか褒められたのか、わからない発言をされアヒル口になる。
可愛いと言ってくれたことは嬉しいけれど、ジェード殿下の前では恥ずかしい。
「何だ、その不細工な表情は。淑女なら、淑女らしくしなさい」
ジェード殿下に窘められた。ユーゴを見てみれば、笑っているだけなので助けにもならない。
「もう、ユーゴのバカ」
兄がいれば全てを兄にぶつけるが、そんな相手がいない。
拗ねたりすると、すぐにアヒル口になってしまうから外ではするなと注意されていたのになってしまった。しかもジェード殿下の前で。穴があったら入りたい。
ノックもなしに開けられた扉から入室してくる人物を睨むふたり。睨み方が似すぎて兄弟と言ってもいいのではないかと思う。
「やはり、あなたここにいたのね。私も気分が優れいのでここに来ましたの」
「シルビー」
私を窘めるときよりも厳しい声をだす。
「あら、お兄様。私、咎められるようなことは何もしてないのよ。あちらもクリスお兄様がいらっしゃるから大丈夫でしょ。それに、此方にはユーゴがいるのだもの」
「おまえというやつは…陛下がどうしてこのような茶会を開いたのか意味を理解しているのか」
ジェード殿下とシルビア王女が会話しているのに、勝手に紅茶やお菓子を勧めてくるユーゴは何処の大物だ。そんな中、小鳥に餌をあげるかのようにマカロンやクッキーを次々に口に運んでくるので、拒否できないでリスみたいになっている。
チラリと見れば、ばっちりシルビア王女と目が合う。勝ち誇ったような顔をしているのは気のせいだろう。
「ええ、していますわ。でも、私はユーゴが欲しいの。そこでリスみたいに頬袋一杯にマカロンを詰め込んで、テーブルマナーもなっていない醜いご令嬢と違って私は完璧なの。醜いあなたにユーゴは似合わなくてよ。だから、私にユーゴを返しなさい」
返す返さない前にユーゴは犬や猫ではない。
「シルビア王女に言っておきますが、この婚約は僕が望んだものだ。あなたが口出ししていいことではない」
「どうしてよ、ユーゴ。あなたには私だけいればいいのでしょ?あなたに声を掛ける令嬢なんていなかったはずよ」
「アンは、そのことを知らないですよ。僕はだからアンを選んだ。あなたに彼女を貶す資格はない」
「どうして、私の方が美しいは。そんな醜い女のどこがいいのよ」
「彼女の可愛らしさをあなたに理解して欲しいとは思いませんが、アンにアンジュに謝罪してください」
「そんなに、醜い女と一緒にいたいなんて。あとで後悔しても知らなわ」
「シルビア、おまえは王女としての自覚がなさすぎる。甘やかしすぎた結果がこれか」
喚き散らすように言っていたシルビア王女もジェード殿下のひとことでぴたりと止んだ。
私は何故こんなにも美しい姫に悪意ある言葉を向けられなくてはいけないのか。
この10分もしない間に「醜い」と何度も言われた。決して美しいとは思わないけれど、私の心には大きな傷を残す。
退出を促されても出ていく気配がないため、ジェード殿下が警備の者に連れて行くように指示している。
その姿をぼんやりと眺めている私を、そっと抱きしめ「ごめん、僕がいけなかったんだ」と泣きそうな顔をする私の婚約者様。
そんなに悲しい顔をしないで。私はあなたのことが好きだから。
「僕がアンを守るよ。絶対に君と結婚する」
泣きそうな私たちふたりをジェード殿下は何も言わずに見守ってくれた。
それがこのお茶会での唯一の救いだった。
もう2度とこの王宮に来ることは出来ない。きっと、シルビア王女と会えば罵倒されるから。
それを見た瞬間に「単純で可愛いですよ」とユーゴに貶されたのか褒められたのか、わからない発言をされアヒル口になる。
可愛いと言ってくれたことは嬉しいけれど、ジェード殿下の前では恥ずかしい。
「何だ、その不細工な表情は。淑女なら、淑女らしくしなさい」
ジェード殿下に窘められた。ユーゴを見てみれば、笑っているだけなので助けにもならない。
「もう、ユーゴのバカ」
兄がいれば全てを兄にぶつけるが、そんな相手がいない。
拗ねたりすると、すぐにアヒル口になってしまうから外ではするなと注意されていたのになってしまった。しかもジェード殿下の前で。穴があったら入りたい。
ノックもなしに開けられた扉から入室してくる人物を睨むふたり。睨み方が似すぎて兄弟と言ってもいいのではないかと思う。
「やはり、あなたここにいたのね。私も気分が優れいのでここに来ましたの」
「シルビー」
私を窘めるときよりも厳しい声をだす。
「あら、お兄様。私、咎められるようなことは何もしてないのよ。あちらもクリスお兄様がいらっしゃるから大丈夫でしょ。それに、此方にはユーゴがいるのだもの」
「おまえというやつは…陛下がどうしてこのような茶会を開いたのか意味を理解しているのか」
ジェード殿下とシルビア王女が会話しているのに、勝手に紅茶やお菓子を勧めてくるユーゴは何処の大物だ。そんな中、小鳥に餌をあげるかのようにマカロンやクッキーを次々に口に運んでくるので、拒否できないでリスみたいになっている。
チラリと見れば、ばっちりシルビア王女と目が合う。勝ち誇ったような顔をしているのは気のせいだろう。
「ええ、していますわ。でも、私はユーゴが欲しいの。そこでリスみたいに頬袋一杯にマカロンを詰め込んで、テーブルマナーもなっていない醜いご令嬢と違って私は完璧なの。醜いあなたにユーゴは似合わなくてよ。だから、私にユーゴを返しなさい」
返す返さない前にユーゴは犬や猫ではない。
「シルビア王女に言っておきますが、この婚約は僕が望んだものだ。あなたが口出ししていいことではない」
「どうしてよ、ユーゴ。あなたには私だけいればいいのでしょ?あなたに声を掛ける令嬢なんていなかったはずよ」
「アンは、そのことを知らないですよ。僕はだからアンを選んだ。あなたに彼女を貶す資格はない」
「どうして、私の方が美しいは。そんな醜い女のどこがいいのよ」
「彼女の可愛らしさをあなたに理解して欲しいとは思いませんが、アンにアンジュに謝罪してください」
「そんなに、醜い女と一緒にいたいなんて。あとで後悔しても知らなわ」
「シルビア、おまえは王女としての自覚がなさすぎる。甘やかしすぎた結果がこれか」
喚き散らすように言っていたシルビア王女もジェード殿下のひとことでぴたりと止んだ。
私は何故こんなにも美しい姫に悪意ある言葉を向けられなくてはいけないのか。
この10分もしない間に「醜い」と何度も言われた。決して美しいとは思わないけれど、私の心には大きな傷を残す。
退出を促されても出ていく気配がないため、ジェード殿下が警備の者に連れて行くように指示している。
その姿をぼんやりと眺めている私を、そっと抱きしめ「ごめん、僕がいけなかったんだ」と泣きそうな顔をする私の婚約者様。
そんなに悲しい顔をしないで。私はあなたのことが好きだから。
「僕がアンを守るよ。絶対に君と結婚する」
泣きそうな私たちふたりをジェード殿下は何も言わずに見守ってくれた。
それがこのお茶会での唯一の救いだった。
もう2度とこの王宮に来ることは出来ない。きっと、シルビア王女と会えば罵倒されるから。
0
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
私は既にフラれましたので。
椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…?
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。
文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。
父王に一番愛される姫。
ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。
優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。
しかし、彼は居なくなった。
聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。
そして、二年後。
レティシアナは、大国の王の妻となっていた。
※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。
小説家になろうにも投稿しています。
エールありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる