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第三章 黒騎士の末裔と血に穢れた願い
優しさが芽生えてく物語
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ソフィアが冬の城を訪れてから、早くも半月が経過しようとしていた。
相変わらず、この地は冬に閉ざされている。
冬に閉ざされた、ずっと、何も変わらない日々。
それと同じように、あれから俺とソフィアと、ついでに魔女の居る日常にも、大きな変化はなかった。
強いて挙げるなら、ここ最近は魔女が出かけていることが多くなったぐらいだろうか。
どうやら、会いたい魔女になかなか会えないらしい。
普段は呼ばなくても絡んでくるくせに、こっちが探しているときに限って見つからない……と、放浪の魔女は愚痴をこぼしていた。
何はともあれ、総じてここしばらくは平和だった。
俺自身に関しては、魔法の鏡を見ている時間が極端に減っていた。
ソフィアが来る以前はそれこそ一日中眺めていたが、定期的に薪を採ってきたり、狩りをしたり、あとなぜかソーセージを追加で作らされたり……こんな感じで色々やることが増えたため、ネットサーフィンしている時間が無くなってしまったのだ。
自分だけの時間は少なくなった。だが、意外と言うべきか、それでも不満はなかった。
不思議なものだ。ソフィアと過ごせる平穏な日々を思えば、多少の自由を失おうとも全然苦ではなかったのである。
もちろん、魔術の訓練も欠かさず続けている。
以前魔女が言ったとおり、俺はだいたい中位くらいまでの凍結系統魔術を習得していた。
とは言っても、まだ大したことはできない。
せいぜい自分が隠れられる氷の壁を作ったり、二・三本の氷柱を作って飛ばしたりできる程度だ。
しかし、この程度の魔術でも使えれば、あとは工夫次第でどうにでもなる。
実際に中距離・遠距離からの攻撃手段が増えたことで、狩りがとても捗った。
少なくとも、わざわざ全速力で走って蒼シカの首に喰らいつくことはなくなった。仮にやるとしても、それは最後の手段だ。
これだけでも、俺にとっては素晴らしい進歩であると言えるだろう。
まだ試していない属性魔術の習得については、意外にも仮面ゴーレムたちが手伝ってくれた。
別に頼んだわけではない。
俺が一人で属性変化の特訓をしていたところ、近くにいた仮面ゴーレムたちが勝手にお手本を見せてくれたのだ。
いつの間にか魔力をチャージした仮面ゴーレムたちが無言で背後に立っていたので、あの時は謀反を起こされたのかと、正直とても驚いた。
彼らが教えてくれたのは、火属性と地属性への魔力変換だ。
残念なことに俺に適性があったのは地属性のほうだけであったが……たとえ適性が無くとも火属性の魔術だけは意地でも習得したかった。
死ななくても、寒いものは寒いのである。
この地で生きるには、火属性魔術が必須技能なのだ。
そして努力の甲斐もあって、指先を温める程度の小さな火は起こせるようになった。
あと、なぜか仮面ゴーレムたちは冥属性を執拗にお勧めしてきた。
しかし、そもそも冥属性は自然魔術の八属性に含まれない特殊な属性だったはず。なので、今回は諦めざるを得なかった。
その旨を仮面ゴーレムたちに伝えたところ、彼らは目に見えてがっかりしているリアクションをとった。
……もしかしてこの仮面ゴーレムたちには、感情が備わっているのだろうか。
もしそうだとして、この仮面ゴーレムたちは俺に冥属性魔術を覚えさせることで、いったい何をさせるつもりだったのだろう。
冥属性って、つまり幽霊とかお化けとかが見えるようになる属性だよな?
実のところ、こいつらはゴーレムではなくて、呪いの人形の類だった……なんてオチはないだろうか?
実際には大した意味など無いと思うが、そう考えると少しだけ怖くなった。
しかし何よりも大きな収穫と言えば、空間魔法を習得したことだ。
放浪の二つ名をもつ魔女の手ほどきによって、俺も小さな転移門を開けるようになったのである。
……とはいえ、大きさはせいぜい腕が一本通る程度だ。
しかも、門を開ける場所も固定。具体的には、自分がいつも寝床にしている冬の城のあの部屋にしか繋げられない。
厳密には俺が最も睡眠をとった場所に依存するらしいが……まるでオープンワールド系ゲームの、リスポーン地点でも設定しているかのようだ。
そして俺の才能では、これ以上の成長はほとんど期待できないらしい。
それ故、俺はもっぱら魔法の鏡を収納するのに利用していた。
自身の転移に使えない以上、転移門と言いつつも、その実態は使い勝手の微妙な空間収納みたいなものである。
しかし、これはこれで悪くない。
少し残念ではあったが、屋外に居ても魔法の鏡の取出しが自由なのは非常に便利だった。
習得した意味は十分にあったと言えるだろう。
そんなこんなで、色々と新しい力を得たり、暮らしが便利になったりしていく中で、俺たちは冬の城でのんびりとした時間を過ごしていた。
* * *
冬に呪われた地には、まだまだ俺の知らない場所も多い。
城周辺の情報を集めるための散策は俺の日課となっている。
今日の散策にはソフィアが付いて来た。
きっかけは、昨日ソフィアへのお土産にした白いリンゴだった。
ヘタや芯の部分が美しいマリンブルーの、夜の雪景色みたいな白リンゴ。どうもこの冬に呪われた地の固有種だったらしい。
その見た目の美しさと溢れる蜜の甘さは、お姫様の心も掴んでしまったようである。
誰にも踏み荒らされていない新雪を、さくりさくりと踏み分けて、俺たちの背後に続く足跡だけがどこまでも伸びている。まるで世界を二人占めしたかのような気分だ。
ソフィアが散策に付いて来ることは、俺にとっては喜ばしいことだった。
そもそも何を隠そう、誘ったのは俺のほうなのだ。
現状では一日のほとんどを城の中で過ごしているソフィア。
この雪と氷以外は基本的に何もないこの地で、せっかく彼女の興味を引く珍しいものがあったのだ。
彼女の気晴らしのためにも、俺は一緒にリンゴの木を見に行くことを提案したのだった。
青空が晴れ渡る。本日は絶好のピクニック日和だ。
リンゴの木を目指して、雪景色の中を歩む一人と一頭。
俺が尻尾に引っ掛けているのは、リンゴを入れるためのバスケット。
今日の彼女は修道服ではなく、普段着の格好であった。俺は民俗学に明るいわけではないが、西洋の町娘風と表現すれば、なんとなくイメージは伝わると思う。
「いいお天気ですね、魔獣さん」
コマドリのような小鳥と戯れながらソフィアが言った。小鳥たちはソフィアの鼻歌に合わせて囀り歌を奏でる。
「ああ、そうだな」
俺もソフィアみたいに小鳥を撫でてみたくなって、こっそり尻尾を伸ばしてみたが……ほんの少し近づいたところで、あっと言う間に小鳥たちは散り散りに飛び去って行った。
「あっ……」
今日こそはいけそうな気がしたが、やっぱり駄目だったようだ。
「もう、魔獣さん。あんまりこの子たちを怖がらせちゃダメですよ?」
「う、すまない……」
呆れ顔のソフィアに叱られた俺は、少しばつが悪くなった。
この色鮮やかな小鳥たちはソフィアにとても懐いていた。どうやら普段から、ちょくちょく餌付けされていたらしい。
そして当然ながらと言うべきか、ソフィアと違って俺は完全に恐れられている。
この間もソフィアと一緒に餌付けに挑戦してみたが……悲しいことに彼女経由でしかパン屑を食べてくれなかった。
まあ、仕方がないことだとは思う。
今となっては名実ともに、俺がこの地における食物連鎖の頂点なのだ。そんな肉食獣を相手に、怖がるななんて言うほうが無理であろう。
だから、悲しくなんて、ないんだからな!
魔術を会得し、戦闘力の上がった俺。
以前はひたすら戦いを避けていた魔獣クマや魔獣イノシシも、もはや俺の敵ではない。
だからこそ、安心してソフィアを連れて堂々と外を歩けるのである。ソフィアを危険な目に合わせるわけにはいかないからな。
この弱肉強食の世界では、強さこそが自由を得るためのプラチナ切符なのだ。
「魔獣さんが悪いわけではないですけれど……やっぱりその姿は、恐ろしいですから。あ、でも、わたしは魔獣さんが本当は優しいってこと、ちゃんと知ってますよ?」
ソフィアが楽しげに言いながら、横を歩く俺の鬣を優しく撫でた。
彼女は俺の毛並みが気に入ったのか、隙あらば俺の鬣に触れるようになっていた。
日々のブラッシングの甲斐もあってか、我ながらモッフモフの毛並みである。
苦しゅうない、好きに撫でるが良いぞ。
「ああ、そうだな。ありがとう――お?」
撫でられながら、俺は雪景色の向こうを凝視した。
「……そうか、天気が良好なら、ここからも見えるんだな。ソフィア、あれが俺たちの目指しているリンゴの樹だ」
俺が指し示した先には、一本の巨大な樹があった。
白い幹に濃い青色の葉。
綿帽子のように雪をかぶった白リンゴの樹。
根元まで辿り着いてみれば、さらに尋常でない大きさだ。
ちなみに、俺が初めてこの樹を見たときは、「世界樹か!?」と思ったが、それも無理からぬ話だろう。
「わぁ、すごいです。こんなに大きな木、初めて見ました」
真下からリンゴの木を見上げたソフィアは、まるで子供のように無邪気にはしゃいでいた。
その白い幹は俺の全長ぐらいの太さで、枝は横に広がっている。本当に「高い」というよりも「大きい」という印象だ。
しかし、高くないということでは全然なく、地表から一番低い枝まで軽く十メートル以上はあるだろう。
真下から見たリンゴの樹は、青色の葉でドームのように空を覆っていた。
群青色の屋根の下に白いリンゴを無数の星のように実らせており、まるで一種のプラネタリウムだ。
「でも……どうやってリンゴの実を採りましょうか」
悩んだ様子でソフィアが言った。
「ソフィアなら風の魔術でどうにかならないか?」
彼女は日常生活の中でも、かなり器用な魔術の使い方をする。
魔力を直接見ることができるバフォメット族らしく、魔術の細かい調整に長けていた。
ちょっとした裁縫をするときでさえ、風魔術で糸切りや裁断を行ない、鋏を一切使わないのだから、バフォメット族の魔術依存は筋金入りである。
だが、そんなソフィアですらも難しい顔をしていた。
「実を採るために、周囲の葉っぱまで散らせてしまうのは可哀そうです。あれだけ離れていると、狙って細かい操作もできませんし……魔獣さんのときは、どうやって採ったのですか?」
「俺か? そりゃあ、普通に登って、手づかみだ」
ソフィアは意外そうな表情で俺を見た。
確かにパッと見た俺の外見は、鬣のあるオオカミだからな。木登りが得意そうには見えないだろう。
しかし、俺の前脚は人間だった頃と同じように扱える器用な手だし、後脚は鋭い鉤爪がある分、木の凹凸に引っ掛けやすい。
さらに俺の太い尻尾は自由に動かせる上、生えている刺も指のように扱える。
そして何より、しっかりとものを掴むための肉球もあるのだ。
尻尾は筋肉の塊であるから、当然力も強い。その気になれば尻尾だけで枝に体を固定できる。
「魔獣さんのしっぽ……やはり侮れませんね!」
ソフィアは俺の尻尾を見ながら言った。
事実上の第三の腕だ。
そこらのサルなんかよりは、よっぽど器用に扱えるだろうな。
そして余談だが、尻尾の肉球はもちろんソフィアのお気に入りでもある。ブラッシングと称して、後ろ足と同じように毎晩プニプニされていた。
「じゃあ、俺が登ってリンゴを集めてくるとしよう」
俺は木の幹に爪を引っ掛けた。
「たくさん採ったら、大きなアップルパイを焼きましょうか。今晩にでも、食後のデザートにしましょう」
ソフィアが提案した。
「ああ、それは良いな」
今から楽しみになってきた。
そして俺は意気揚々と木に登り、よく熟れたリンゴを集めたのだった。
――数分後。
バスケットの中には白いリンゴが山のように入っていた。
そのうち一つを手に取って齧ってみる。
甘酸っぱくも優しい風味が口の中に広がった。
ちょうどよく熟れている食べ頃だ。
俺の選別眼に狂いはなかったようである。
「やっぱりこのリンゴ、いつも食べているものよりすっごく甘いですね。毎日でも食べたいです」
ソフィアもリンゴを一つ齧ると、頬の蕩けるような笑顔を見せた。
その笑顔を見て、今後はこのリンゴを定期的に採ってくることを決めた。
守りたい、この笑顔。
彼女のためならば、俺はなんでもできる気がする。
「……そうだ。いっそのこと、こいつの種を庭園に埋めてみるか」
俺は思いついたことをそのまま口にした。
単純に、この城リンゴの樹が冬の城の庭にあれば便利だなと、そう思って――。
「それは、とても素敵ですね……またいつの日か、わたしがこの地を訪れることができたら、是非たくさん実を付けたリンゴの樹を見せて下さい」
ソフィアが少し淋しそうな表情で言った。
その表情を見て、俺は気付かされた。
植えたリンゴの種が実るころには、とっくにソフィアは居ないはずであることを。
当たり前のこと。
知っていたはずのこと。
それどころか、望んでいたはずのこと。
それなのになぜか、俺はその現実を受け入れられなかった。
「そう言えば、リンゴって実が生るまで、どのくらいかかるものなのでしょうか? 五年くらいでしょうかね?」
ソフィアは可愛らしく小首をかしげていた。
俺は何も答えられなかった。
リンゴの樹からの帰り道、俺の知覚センサーに何かの気配が引っ掛かった。
俺は意識をそっちに集中させる。
「……魔獣さん? どうしたのですか?」
俺の変化に気が付いたソフィアが、心配そうに声をかけてきた。
「何かが来る」
俺は端的に伝えた。
ソフィアはもうすぐ姿を現すであろう魔獣の存在に身を強張らせた。
そして、そいつは岩の影から顔を出した。
警戒する素振りも見せず、堂々と。まるで古い友人に会いに来たかのごとく。
その正体は忘れもしない、俺にとって不倶戴天の敵だった。
「テメエは……!」
長い耳。
小柄な体躯。
そして、純白でふわふわの毛皮。
その小生意気で憎らしい姿の魔獣はクゥクゥと、あざとく鳴いた。
「まさか、ここで会うとは……久しぶりだな、クソウサギ!!」
そこには散々俺をコケにし続けた、鬼畜速攻いたずらウサギの姿があった。
俺はソフィアを庇いながら前へ出た。
このウサギ、見た目は可愛らしいが、その実態は恐ろしい魔獣なのである。
小さくてトリッキーかつ、好戦的で悪戯好き。
特に耳の先が灰色に染まっているこの個体は、初めて会ったあの日から、俺を見つけると理由もなくちょっかいを仕掛けてきた。
そして散々俺を馬鹿にした後、満足したら勝手に去っていくのだ。
本当に、何がしたいのか訳が分からない。
ここ最近は姿を見せないと思っていたが、よりにもよってソフィアを連れたこのタイミングでエンカウントするとは……!
「氷の矢、用意……!!」
俺は攻撃用の魔術を展開する。
無言でも扱えるのだが、簡単な呪文を声に出したほうが発動は安定していた。
どうやら俺は呪文があったほうが魔術を使いやすいタイプだったらしい。
呪文と呼ぶにはお粗末な単語と命令文だが、あまり長くても使いづらいし、この程度で十分だ。
「発っし――」
「ダメです!!」
ウサギに向けた射撃は、ソフィアの捨身の妨害によって阻止された。
「なぜ邪魔をする!? ソフィア!!」
吼える俺にソフィアは毅然とした態度で立ち向かってきた。
「魔獣さん、見損ないました! こんなに人懐こくて可愛いウサギさんに乱暴するなんて……!」
ソフィアはしゃがみ、持っていたリンゴをウサギに差し出した。
「ほら、おいで? もう怖くないよ?」
ウサギは恐る恐ると言った様子でソフィアに近づいてくる。
「見た目に惑わされるな! そいつは危険な魔獣なんだぞ!!」
だが、俺の警告をソフィアは全く本気にしなかった。
「いいえ、わたしには分かります。この子の魔力には、敵意が一切ありません!」
これは困ったことになったぞ。
一度こうなったソフィアは、よほどの理由がない限り自分の意志を曲げない。
そう問答している間にもウサギは近づいてくる。
今やソフィアの目と鼻の先だ。
こうなったら、意地でもソフィアが傷付かないように守護らねば……!
しかし、繰り広げられた光景は俺の予想とは全く異なるものであった。
「クゥ?」
ウサギが可愛らしい声を上げる。
「ほら、大丈夫。おいで? リンゴ食べる?」
「クゥ!」
ソフィアが優しく手を差し伸べると、ウサギは人懐っこい様子でソフィアに甘えた。
一見それは、少女と野生動物の触れ合う感動的な場面であった。
「どういうことなんだ、いったい……」
俺は目の前で起こった出来事が信じられなかった。
お前はそんな可愛らしい性格じゃなかっただろ? それとも全部俺の勘違いで、此処に居るのは別の個体なのだろうか?
シャクシャクと、ウサギが林檎を齧る。
そして一瞬だけ俺を見ると――鼻で笑った。
その瞬間、俺に電流が走る。
ハッ!? こいつまさか、俺が手を出せなくなると分かって、ソフィアに取り入ったというのか!!
俺は全てを理解した。
「クゥー、クゥー!」
「ウフフ……モフモフです♪」
ソフィアは上機嫌だった。
あざとくソフィアに媚を売るクソウサギ。そんなクソウサギの可愛さにメロメロなソフィア。
このクソウサギは理解していたのだ。
もはや俺のほうが、実力が上であることを。
だからこそ、こいつはソフィアを味方につけたのだ!
「こ の ク ソ ウ サ ギ め……!!」
今まで散々俺をコケにしてくれたことも、ちゃっかり俺を悪者に仕立て上げたことも、絶対に許さんからな。
いつでも本性を表してみろ。
ソフィアの同意が得られ次第、すぐにでもパイにして食ってやる!
ピー○ーラビット異世界記は、父親の代わりに主人公がパイになって終わるのだ!!
こうして新たに、クソウサギが冬の城の住人に加わった。
この日も、とても平和な一日だった。
相変わらず、この地は冬に閉ざされている。
冬に閉ざされた、ずっと、何も変わらない日々。
それと同じように、あれから俺とソフィアと、ついでに魔女の居る日常にも、大きな変化はなかった。
強いて挙げるなら、ここ最近は魔女が出かけていることが多くなったぐらいだろうか。
どうやら、会いたい魔女になかなか会えないらしい。
普段は呼ばなくても絡んでくるくせに、こっちが探しているときに限って見つからない……と、放浪の魔女は愚痴をこぼしていた。
何はともあれ、総じてここしばらくは平和だった。
俺自身に関しては、魔法の鏡を見ている時間が極端に減っていた。
ソフィアが来る以前はそれこそ一日中眺めていたが、定期的に薪を採ってきたり、狩りをしたり、あとなぜかソーセージを追加で作らされたり……こんな感じで色々やることが増えたため、ネットサーフィンしている時間が無くなってしまったのだ。
自分だけの時間は少なくなった。だが、意外と言うべきか、それでも不満はなかった。
不思議なものだ。ソフィアと過ごせる平穏な日々を思えば、多少の自由を失おうとも全然苦ではなかったのである。
もちろん、魔術の訓練も欠かさず続けている。
以前魔女が言ったとおり、俺はだいたい中位くらいまでの凍結系統魔術を習得していた。
とは言っても、まだ大したことはできない。
せいぜい自分が隠れられる氷の壁を作ったり、二・三本の氷柱を作って飛ばしたりできる程度だ。
しかし、この程度の魔術でも使えれば、あとは工夫次第でどうにでもなる。
実際に中距離・遠距離からの攻撃手段が増えたことで、狩りがとても捗った。
少なくとも、わざわざ全速力で走って蒼シカの首に喰らいつくことはなくなった。仮にやるとしても、それは最後の手段だ。
これだけでも、俺にとっては素晴らしい進歩であると言えるだろう。
まだ試していない属性魔術の習得については、意外にも仮面ゴーレムたちが手伝ってくれた。
別に頼んだわけではない。
俺が一人で属性変化の特訓をしていたところ、近くにいた仮面ゴーレムたちが勝手にお手本を見せてくれたのだ。
いつの間にか魔力をチャージした仮面ゴーレムたちが無言で背後に立っていたので、あの時は謀反を起こされたのかと、正直とても驚いた。
彼らが教えてくれたのは、火属性と地属性への魔力変換だ。
残念なことに俺に適性があったのは地属性のほうだけであったが……たとえ適性が無くとも火属性の魔術だけは意地でも習得したかった。
死ななくても、寒いものは寒いのである。
この地で生きるには、火属性魔術が必須技能なのだ。
そして努力の甲斐もあって、指先を温める程度の小さな火は起こせるようになった。
あと、なぜか仮面ゴーレムたちは冥属性を執拗にお勧めしてきた。
しかし、そもそも冥属性は自然魔術の八属性に含まれない特殊な属性だったはず。なので、今回は諦めざるを得なかった。
その旨を仮面ゴーレムたちに伝えたところ、彼らは目に見えてがっかりしているリアクションをとった。
……もしかしてこの仮面ゴーレムたちには、感情が備わっているのだろうか。
もしそうだとして、この仮面ゴーレムたちは俺に冥属性魔術を覚えさせることで、いったい何をさせるつもりだったのだろう。
冥属性って、つまり幽霊とかお化けとかが見えるようになる属性だよな?
実のところ、こいつらはゴーレムではなくて、呪いの人形の類だった……なんてオチはないだろうか?
実際には大した意味など無いと思うが、そう考えると少しだけ怖くなった。
しかし何よりも大きな収穫と言えば、空間魔法を習得したことだ。
放浪の二つ名をもつ魔女の手ほどきによって、俺も小さな転移門を開けるようになったのである。
……とはいえ、大きさはせいぜい腕が一本通る程度だ。
しかも、門を開ける場所も固定。具体的には、自分がいつも寝床にしている冬の城のあの部屋にしか繋げられない。
厳密には俺が最も睡眠をとった場所に依存するらしいが……まるでオープンワールド系ゲームの、リスポーン地点でも設定しているかのようだ。
そして俺の才能では、これ以上の成長はほとんど期待できないらしい。
それ故、俺はもっぱら魔法の鏡を収納するのに利用していた。
自身の転移に使えない以上、転移門と言いつつも、その実態は使い勝手の微妙な空間収納みたいなものである。
しかし、これはこれで悪くない。
少し残念ではあったが、屋外に居ても魔法の鏡の取出しが自由なのは非常に便利だった。
習得した意味は十分にあったと言えるだろう。
そんなこんなで、色々と新しい力を得たり、暮らしが便利になったりしていく中で、俺たちは冬の城でのんびりとした時間を過ごしていた。
* * *
冬に呪われた地には、まだまだ俺の知らない場所も多い。
城周辺の情報を集めるための散策は俺の日課となっている。
今日の散策にはソフィアが付いて来た。
きっかけは、昨日ソフィアへのお土産にした白いリンゴだった。
ヘタや芯の部分が美しいマリンブルーの、夜の雪景色みたいな白リンゴ。どうもこの冬に呪われた地の固有種だったらしい。
その見た目の美しさと溢れる蜜の甘さは、お姫様の心も掴んでしまったようである。
誰にも踏み荒らされていない新雪を、さくりさくりと踏み分けて、俺たちの背後に続く足跡だけがどこまでも伸びている。まるで世界を二人占めしたかのような気分だ。
ソフィアが散策に付いて来ることは、俺にとっては喜ばしいことだった。
そもそも何を隠そう、誘ったのは俺のほうなのだ。
現状では一日のほとんどを城の中で過ごしているソフィア。
この雪と氷以外は基本的に何もないこの地で、せっかく彼女の興味を引く珍しいものがあったのだ。
彼女の気晴らしのためにも、俺は一緒にリンゴの木を見に行くことを提案したのだった。
青空が晴れ渡る。本日は絶好のピクニック日和だ。
リンゴの木を目指して、雪景色の中を歩む一人と一頭。
俺が尻尾に引っ掛けているのは、リンゴを入れるためのバスケット。
今日の彼女は修道服ではなく、普段着の格好であった。俺は民俗学に明るいわけではないが、西洋の町娘風と表現すれば、なんとなくイメージは伝わると思う。
「いいお天気ですね、魔獣さん」
コマドリのような小鳥と戯れながらソフィアが言った。小鳥たちはソフィアの鼻歌に合わせて囀り歌を奏でる。
「ああ、そうだな」
俺もソフィアみたいに小鳥を撫でてみたくなって、こっそり尻尾を伸ばしてみたが……ほんの少し近づいたところで、あっと言う間に小鳥たちは散り散りに飛び去って行った。
「あっ……」
今日こそはいけそうな気がしたが、やっぱり駄目だったようだ。
「もう、魔獣さん。あんまりこの子たちを怖がらせちゃダメですよ?」
「う、すまない……」
呆れ顔のソフィアに叱られた俺は、少しばつが悪くなった。
この色鮮やかな小鳥たちはソフィアにとても懐いていた。どうやら普段から、ちょくちょく餌付けされていたらしい。
そして当然ながらと言うべきか、ソフィアと違って俺は完全に恐れられている。
この間もソフィアと一緒に餌付けに挑戦してみたが……悲しいことに彼女経由でしかパン屑を食べてくれなかった。
まあ、仕方がないことだとは思う。
今となっては名実ともに、俺がこの地における食物連鎖の頂点なのだ。そんな肉食獣を相手に、怖がるななんて言うほうが無理であろう。
だから、悲しくなんて、ないんだからな!
魔術を会得し、戦闘力の上がった俺。
以前はひたすら戦いを避けていた魔獣クマや魔獣イノシシも、もはや俺の敵ではない。
だからこそ、安心してソフィアを連れて堂々と外を歩けるのである。ソフィアを危険な目に合わせるわけにはいかないからな。
この弱肉強食の世界では、強さこそが自由を得るためのプラチナ切符なのだ。
「魔獣さんが悪いわけではないですけれど……やっぱりその姿は、恐ろしいですから。あ、でも、わたしは魔獣さんが本当は優しいってこと、ちゃんと知ってますよ?」
ソフィアが楽しげに言いながら、横を歩く俺の鬣を優しく撫でた。
彼女は俺の毛並みが気に入ったのか、隙あらば俺の鬣に触れるようになっていた。
日々のブラッシングの甲斐もあってか、我ながらモッフモフの毛並みである。
苦しゅうない、好きに撫でるが良いぞ。
「ああ、そうだな。ありがとう――お?」
撫でられながら、俺は雪景色の向こうを凝視した。
「……そうか、天気が良好なら、ここからも見えるんだな。ソフィア、あれが俺たちの目指しているリンゴの樹だ」
俺が指し示した先には、一本の巨大な樹があった。
白い幹に濃い青色の葉。
綿帽子のように雪をかぶった白リンゴの樹。
根元まで辿り着いてみれば、さらに尋常でない大きさだ。
ちなみに、俺が初めてこの樹を見たときは、「世界樹か!?」と思ったが、それも無理からぬ話だろう。
「わぁ、すごいです。こんなに大きな木、初めて見ました」
真下からリンゴの木を見上げたソフィアは、まるで子供のように無邪気にはしゃいでいた。
その白い幹は俺の全長ぐらいの太さで、枝は横に広がっている。本当に「高い」というよりも「大きい」という印象だ。
しかし、高くないということでは全然なく、地表から一番低い枝まで軽く十メートル以上はあるだろう。
真下から見たリンゴの樹は、青色の葉でドームのように空を覆っていた。
群青色の屋根の下に白いリンゴを無数の星のように実らせており、まるで一種のプラネタリウムだ。
「でも……どうやってリンゴの実を採りましょうか」
悩んだ様子でソフィアが言った。
「ソフィアなら風の魔術でどうにかならないか?」
彼女は日常生活の中でも、かなり器用な魔術の使い方をする。
魔力を直接見ることができるバフォメット族らしく、魔術の細かい調整に長けていた。
ちょっとした裁縫をするときでさえ、風魔術で糸切りや裁断を行ない、鋏を一切使わないのだから、バフォメット族の魔術依存は筋金入りである。
だが、そんなソフィアですらも難しい顔をしていた。
「実を採るために、周囲の葉っぱまで散らせてしまうのは可哀そうです。あれだけ離れていると、狙って細かい操作もできませんし……魔獣さんのときは、どうやって採ったのですか?」
「俺か? そりゃあ、普通に登って、手づかみだ」
ソフィアは意外そうな表情で俺を見た。
確かにパッと見た俺の外見は、鬣のあるオオカミだからな。木登りが得意そうには見えないだろう。
しかし、俺の前脚は人間だった頃と同じように扱える器用な手だし、後脚は鋭い鉤爪がある分、木の凹凸に引っ掛けやすい。
さらに俺の太い尻尾は自由に動かせる上、生えている刺も指のように扱える。
そして何より、しっかりとものを掴むための肉球もあるのだ。
尻尾は筋肉の塊であるから、当然力も強い。その気になれば尻尾だけで枝に体を固定できる。
「魔獣さんのしっぽ……やはり侮れませんね!」
ソフィアは俺の尻尾を見ながら言った。
事実上の第三の腕だ。
そこらのサルなんかよりは、よっぽど器用に扱えるだろうな。
そして余談だが、尻尾の肉球はもちろんソフィアのお気に入りでもある。ブラッシングと称して、後ろ足と同じように毎晩プニプニされていた。
「じゃあ、俺が登ってリンゴを集めてくるとしよう」
俺は木の幹に爪を引っ掛けた。
「たくさん採ったら、大きなアップルパイを焼きましょうか。今晩にでも、食後のデザートにしましょう」
ソフィアが提案した。
「ああ、それは良いな」
今から楽しみになってきた。
そして俺は意気揚々と木に登り、よく熟れたリンゴを集めたのだった。
――数分後。
バスケットの中には白いリンゴが山のように入っていた。
そのうち一つを手に取って齧ってみる。
甘酸っぱくも優しい風味が口の中に広がった。
ちょうどよく熟れている食べ頃だ。
俺の選別眼に狂いはなかったようである。
「やっぱりこのリンゴ、いつも食べているものよりすっごく甘いですね。毎日でも食べたいです」
ソフィアもリンゴを一つ齧ると、頬の蕩けるような笑顔を見せた。
その笑顔を見て、今後はこのリンゴを定期的に採ってくることを決めた。
守りたい、この笑顔。
彼女のためならば、俺はなんでもできる気がする。
「……そうだ。いっそのこと、こいつの種を庭園に埋めてみるか」
俺は思いついたことをそのまま口にした。
単純に、この城リンゴの樹が冬の城の庭にあれば便利だなと、そう思って――。
「それは、とても素敵ですね……またいつの日か、わたしがこの地を訪れることができたら、是非たくさん実を付けたリンゴの樹を見せて下さい」
ソフィアが少し淋しそうな表情で言った。
その表情を見て、俺は気付かされた。
植えたリンゴの種が実るころには、とっくにソフィアは居ないはずであることを。
当たり前のこと。
知っていたはずのこと。
それどころか、望んでいたはずのこと。
それなのになぜか、俺はその現実を受け入れられなかった。
「そう言えば、リンゴって実が生るまで、どのくらいかかるものなのでしょうか? 五年くらいでしょうかね?」
ソフィアは可愛らしく小首をかしげていた。
俺は何も答えられなかった。
リンゴの樹からの帰り道、俺の知覚センサーに何かの気配が引っ掛かった。
俺は意識をそっちに集中させる。
「……魔獣さん? どうしたのですか?」
俺の変化に気が付いたソフィアが、心配そうに声をかけてきた。
「何かが来る」
俺は端的に伝えた。
ソフィアはもうすぐ姿を現すであろう魔獣の存在に身を強張らせた。
そして、そいつは岩の影から顔を出した。
警戒する素振りも見せず、堂々と。まるで古い友人に会いに来たかのごとく。
その正体は忘れもしない、俺にとって不倶戴天の敵だった。
「テメエは……!」
長い耳。
小柄な体躯。
そして、純白でふわふわの毛皮。
その小生意気で憎らしい姿の魔獣はクゥクゥと、あざとく鳴いた。
「まさか、ここで会うとは……久しぶりだな、クソウサギ!!」
そこには散々俺をコケにし続けた、鬼畜速攻いたずらウサギの姿があった。
俺はソフィアを庇いながら前へ出た。
このウサギ、見た目は可愛らしいが、その実態は恐ろしい魔獣なのである。
小さくてトリッキーかつ、好戦的で悪戯好き。
特に耳の先が灰色に染まっているこの個体は、初めて会ったあの日から、俺を見つけると理由もなくちょっかいを仕掛けてきた。
そして散々俺を馬鹿にした後、満足したら勝手に去っていくのだ。
本当に、何がしたいのか訳が分からない。
ここ最近は姿を見せないと思っていたが、よりにもよってソフィアを連れたこのタイミングでエンカウントするとは……!
「氷の矢、用意……!!」
俺は攻撃用の魔術を展開する。
無言でも扱えるのだが、簡単な呪文を声に出したほうが発動は安定していた。
どうやら俺は呪文があったほうが魔術を使いやすいタイプだったらしい。
呪文と呼ぶにはお粗末な単語と命令文だが、あまり長くても使いづらいし、この程度で十分だ。
「発っし――」
「ダメです!!」
ウサギに向けた射撃は、ソフィアの捨身の妨害によって阻止された。
「なぜ邪魔をする!? ソフィア!!」
吼える俺にソフィアは毅然とした態度で立ち向かってきた。
「魔獣さん、見損ないました! こんなに人懐こくて可愛いウサギさんに乱暴するなんて……!」
ソフィアはしゃがみ、持っていたリンゴをウサギに差し出した。
「ほら、おいで? もう怖くないよ?」
ウサギは恐る恐ると言った様子でソフィアに近づいてくる。
「見た目に惑わされるな! そいつは危険な魔獣なんだぞ!!」
だが、俺の警告をソフィアは全く本気にしなかった。
「いいえ、わたしには分かります。この子の魔力には、敵意が一切ありません!」
これは困ったことになったぞ。
一度こうなったソフィアは、よほどの理由がない限り自分の意志を曲げない。
そう問答している間にもウサギは近づいてくる。
今やソフィアの目と鼻の先だ。
こうなったら、意地でもソフィアが傷付かないように守護らねば……!
しかし、繰り広げられた光景は俺の予想とは全く異なるものであった。
「クゥ?」
ウサギが可愛らしい声を上げる。
「ほら、大丈夫。おいで? リンゴ食べる?」
「クゥ!」
ソフィアが優しく手を差し伸べると、ウサギは人懐っこい様子でソフィアに甘えた。
一見それは、少女と野生動物の触れ合う感動的な場面であった。
「どういうことなんだ、いったい……」
俺は目の前で起こった出来事が信じられなかった。
お前はそんな可愛らしい性格じゃなかっただろ? それとも全部俺の勘違いで、此処に居るのは別の個体なのだろうか?
シャクシャクと、ウサギが林檎を齧る。
そして一瞬だけ俺を見ると――鼻で笑った。
その瞬間、俺に電流が走る。
ハッ!? こいつまさか、俺が手を出せなくなると分かって、ソフィアに取り入ったというのか!!
俺は全てを理解した。
「クゥー、クゥー!」
「ウフフ……モフモフです♪」
ソフィアは上機嫌だった。
あざとくソフィアに媚を売るクソウサギ。そんなクソウサギの可愛さにメロメロなソフィア。
このクソウサギは理解していたのだ。
もはや俺のほうが、実力が上であることを。
だからこそ、こいつはソフィアを味方につけたのだ!
「こ の ク ソ ウ サ ギ め……!!」
今まで散々俺をコケにしてくれたことも、ちゃっかり俺を悪者に仕立て上げたことも、絶対に許さんからな。
いつでも本性を表してみろ。
ソフィアの同意が得られ次第、すぐにでもパイにして食ってやる!
ピー○ーラビット異世界記は、父親の代わりに主人公がパイになって終わるのだ!!
こうして新たに、クソウサギが冬の城の住人に加わった。
この日も、とても平和な一日だった。
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