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第2章 王都にて(前)

第47話 微笑みの皇子

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エレンはリカルドのことを

ユーリと全然似ていないという意味で、

『なんか思ってたのと違うな( ´_ゝ`)』

と思っていたが、

一方、ユーリとエレンのお茶会に爽やかな笑顔で近づいていったリカルドも

『なんか思ってたのと違うな。』

と思っていた。

てっきりリカルド狙いの妙齢の令嬢がユーリを踏み台にしようとしているのだろうと思っていたが、

ユーリとお茶会をしていたのはユーリよりも幼そうな、

真っ黒なまあるい瞳に、

肩くらいまでの癖っ毛の黒髪に、

頭の後ろにちょこんと白い花の形をした髪飾りをつけた、

深緑色のシンプルなドレスを着た、

元気そうな女の子だった。

これではいくらなんでも幼すぎる。

ちなみに髪飾りの選択基準は、

『王宮の庭の花に似ているかどうか』だった。

エレンは王宮でのかくれんぼにかなり気合いをいれていた。

女の子は笑いながらお茶会に近寄っていく自分と遠めに目が合うと、

『げ( ´_ゝ`)』

という顔をして目をそらした。

通常リカルドの笑顔を見た令嬢は、

頬を染めたり、うっとり見つめたり、

獲物を狙うようなギラギラした目をするのがほとんどだった。

リカルドは自分の腹黒さを自覚しており、

自分の演技力にはまあまあ自信があった。

母親と上の妹には腹黒いのが薄々ばれているようだったが、

下の妹とユーリにはまだばれていないようだった。

ちなみに、父親の国王は何を考えているかわからない。

学園でもリカルドの腹黒さに気づく人間は少なく、

リカルドは学園で『微笑みの皇子』とか呼ばれて、

リカルドは学園でたくさんの取り巻きに囲まれていたが、

リカルドは自分の腹黒さに気づいた人間だけを、

自分の将来の側近候補にしていた。

自分程度の腹黒さに気づかないやつは、

将来腹黒い貴族たちと渡り合っていけないからだ。

リカルドの腹黒さに気づいた人間も、

しばらく会話をするうちに気づいたものがほとんどだった。

一人だけ学園の入学式で初めて目があったときに

今のエレンと同じように

『げ( ´_ゝ`)』

という顔をした公爵家の四男坊がいた。

後で仲良くなった後に聞いた話では、

四男坊は一目でリカルドの笑顔はうさんくさいと気づいたそうだ。

四男坊は名をレオナルドといい、

リカルドの数少ない心を許せる親友になった。

エレンはレオナルドと同じように

『げ( ´_ゝ`)』

という顔をしたあと目をそらし、

少し考えると、

急に顔つきを変えて、

わざとらしくくねくねし始めた。

それを見たユーリやユーリ付きの侍女たちは不可解な顔をした。

『もしかしてこの子、気づいたのかな?』

勘のいいリカルドはそう思うと、

さっきまで適当にあしらおうと思っていた令嬢に急に興味が湧いてきた。

親友のレオナルドも黒目黒髪で、

エレンと少し雰囲気が似ていた。
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