竜の国の侍従長

風結

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八章 千竜王と侍従長

…………。

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 …………。……、ーー。ーーーー。ーー。……。

 ……落ちていった。はずだったが、漂っているような。
 暗竜のお腹の中なのか、真っ暗で何も見えない。そう思ったら。
 仕舞った。すべてが透明に、丸見えになってしまって。
 ただただ圧倒的な空間のようなものがあって。そこには。
 体がない。だから感覚もないはずで。頭もないから。
 考えることだって出来ないはずだから。心とか魂とか。
 そんなものを強く自覚することで耐えようとするんだけど。
 力が入らない。それよりも、ここは何処で、僕は何をしていたんだっけ。

 ーーーー。ーー、……。…………。……、ーー。

 ここが何処かは重要じゃない。僕は機会を得たから。
 それが何かは思い出せないけれど。何かをしないと。
 それだけはまだ失っていないから。だから、心とか魂とか。
 薄れていくから、気付いた。ここは失っていく場所だと。
 考えるごとに、思う度に、解けていってしまう。だったら。
 思い出せない。大切なものを。僕が僕であった意味を。

 ……、ーー。ーーーー。ーー、……。…………。

 時間が過ぎ去った気がする。途方もない。それでいて。
 時間だって、ここにはないだろうから。そんなものにも意味なんて。
 でも。何もないから。残っているものもあって。
 消えないものが消えてしまっても。消えないとわかっているから。

 ーー、……。…………。……、ーー。ーーーー。

 もう。何もなくて。わからない。わからない。わからない。けど。
 ぎゅっと。握る。何かで。ここは怖いのかどうかも。わからない。
 だから。ぎゅっと。ぎゅっと。握って。ぜんぶ。
 なくなって。しまうくらい。ぎゅっと。にぎって。

 …………。ーーーー。…………。ーーーー。ーーーー。…………。

 そうしろと。何処かで響いている。失ってしまった。何かが。
 もう。残っていない。なくなって。欠片よりも遥かに。
 少ない。何かを。分からない。何かに。ーー受け容れた。
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