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七章 東域と侍従長
穏やかな日常は竜とともに去りぬ
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合っ体っ。
「人化」したフィンを、地上に降りると同時に肩車。手を繋いで、という妥協はしてくれないので、街では仲良し兄弟、或いは兄妹で、そこそこ話題になっているようだ。
フィンの魔力の流れを感じ取る。「隠蔽」や「幻影」だろうか、魔法を使ったようだ。
ーーあ、やばい、見つかった。
どたどたどたどたっ。がしがしがしがしっ。
「フィ~ン! おっはよ~ん」
「り~と~」
「おはよう、ミリア」
僕たちを見つけたミリアは、全力疾走で遣って来て、遠慮など氷竜に氷漬けにされてしまったのか、僕を攀じ登って、肩に立つと。
フィンの肩に座って、超っ合っ体っ!
フィンが真ん中で調整してくれるので、魔力を貰わなくても何とかなるのだが、ミリアは大人しくしてくれないので油断ならない。然ても、街の人々の視線は暖かなものなので。とはいえ、見世物になるのは御免被りたいので、とっととお店に行くことにする。
「あはは、悪いねぇ、ミリアと遊んでもらって」
「いえいえ。然し、この周期で、見事な魔力操作ですから。魔法使いには、弟子入りさせないんですか?」
僕と親父さんの会話などそっちのけ、フィンを引き摺ったミリアがお店の中に入ってゆく。男の子顔負けだが、まだ五歳なので親父さんも自由にさせているのだろう。
「魔法使い、魔法使いねぇ。東域の北西じゃ魔法使いはあんまり居ないから。北東に知り合いはいないし、ミリアを一人でやるなんて……うっうっ、そっ、そんなことぉ~っ!」
頭を抱えてしまう、娘が大好き過ぎる親父さん。愛娘が大好き過ぎる僕と意気投合した、とかそんなことはないけど。竜にも角にも、親父さんとミリアが望むのなら、ということで、竜の国で学ぶ、という選択肢を提示しておいた。
今は問題ないようだが、これから先、魔力がミリアにとって弊害となるようなら竜の国を頼るように、との付言も。
お店の中に入ると、がぶがぶがぶがぶ。
この竜が遠慮なんてするわけないので、でっかい肉の塊が、ずんどこ減っていっている。
まだ三つ音で、僕は竜の胃袋を持っていないので、相伴することは出来ない。なので、不味くない、程度の葡萄酒を注文する。
フィンが普通の子供じゃないのは一目竜然なのだが、ミリアは気にしていないし、親父さんも、ミリアの友達に悪い奴なんていない! と断言していたので、まぁ、そういうことである。
「あ、そうだ、親父さん。フフスルラニード国で串焼きを食べたんですが、通常の肉以外だと、どんな肉だかわかりますか?」
「肉に関することなら任せな! と言いたいところだけど、まったくリシェ君は、怖いことを聞いてくるねぇ」
「大丈夫ですよ。そっち方面のことではなくて、元猟師が食べるようなお肉のことです」
「仕方がないねぇ。じゃあ、ちょこっとだけだよ」
フィンのお皿に、切り分けたお肉を、どすんっ。店の奥に行くと、小さなお皿を持って戻ってくる。
「はい。食べてみて」
「では、頂きます」
……弾力があるのに、脆い。串焼きの肉とは違う、こちらも食べたことのない味と食感。お世辞にも美味しいとは言えない。少し、ではないくらいに苦みもある。
「リシェ君なら大丈夫だと思うけど、他の人に言ったら駄目だよ」
「はい。別の風竜に関することなので、それ以外では、だんまりだまだま、なので竜でも知りません」
「先ず、小鬼だねぇ。一番手に入り易いけど、残念ながら不味いんだよねぇ。狙うなら、獣型。ああ、でも、ギザマルは駄目だよ。飼育して……って、今のはなしっ、聞かなかったことにして!」
なるほど。ギザマルも餌か環境を整えることで、食べられるようになるらしい。でも、串焼きの肉の大きさからして、あと元猟師ということも勘案すると、ギザマルは外れだろう。
「因みに一番美味しいお肉って、何ですか?」
「え? そりゃあ、勿論、竜の……ひぃっ!!」
「ーーあ、すみません。今のは何でもないので、記憶から抹消してください」
「だだだだだだだだっ大丈夫っ! 何も覚えてないから!」
「がぁー! りっしぇー、おとーしゃんいじめたら、めーっ!」
「あ~、ごめんごめん、ミリア。僕と親父さんは仲良しだから、すぐに仲直りで竜々だから大丈夫だよ~」
「げーらー」
いや、フィン。そんな嘲笑わなくても。
昨日買った飴を、ミリアのお口に、ぽいっ。泣いた竜が笑った、ってくらいに、ご機嫌な幼女から顔を逸らして、追究追及追求。
「ーーで、竜のお肉は美味しいんですか?」
「ちょっと、リシェ君っ、苛めないで! ……そういう伝説があるだけだからねぇ。本音を言うと、食べてみたいけど、でも、人間じゃ耐えられないと思うよ」
「耐えられない、ですか?」
「これは魔獣もそうだと言われてるけど、竜の魔力って、普通の、人間とかの魔力とは違うみたいでねぇ。得も言われぬ美味さに、そのまま地の国へと旅立ってしまうとも、不老不死が得られるとも、眉唾な話なら幾らでもあるよ」
「不老不死ーー?」
有り得ないーーと言えないのが、何とも。竜の魔力を貰って、色々と試していたが、現在の肉体を維持することくらいなら、出来そうな気がするのだが。
他にも、ラン・ティノは、イオラングリディアと愛し合っているというーーつまり、竜と交わることで……ことで?
交わる……目合い……交合? じゃなくて、交尾な性向、もとい成功で生硬な性交、って、だからっ、そうじゃなくて! そういうことでもなくなくてっ! ……もし、「分化」した竜と、触れ合ったら、僕は……ごぷっ。
「…………」
世界の果てでも地の果てでも空の果てでも魔力の果てでも生命の果てでも竜の果てでも何でもいいので竜にも角にも鱗にも尻尾にも彼方にほっぽってしまうのが解決竜も幸せになってしまうくらいの有り触れた日常に回帰する為の竜のお肌が……ごぶっ。
「……挙動不審という言葉が、裸足で逃げ出しそうな感じだけど、大丈夫? 手遅れじゃないよね?」
「……大丈夫です。ちゃんと帰ってこれました。まだまだ余力はあります」
炎竜にも氷竜にも、金貨を二枚、親父さんに渡す。この等級の肉は、出回る量が限られているので、明日からは肉塊ではなく、調理されたものを食べさせるとしよう。
「ほ~ら! フィ~ン、おくちふかないとだめーっ!」
「れ~る~」
五歳の子供に世話を焼かれる竜というのも、何だか絵になる光景である。
お別れの際に時間が取れるなら、正体をーーいや、それは野暮というものだろう。一人と一竜は、種族なんて関係なく、今を楽しんでいる。それ以上に重要なことは、大切なことはない。
「フィンフィ~ン、まったね~」
「と~し~っ」
もしかしたら、ミリアはフィン語を理解しているのかもしれない。言葉以上のもの、というのは確かにあるのだ。
フィンは、フィン語以外の、身体表現が淡泊なので、肩車した氷竜の手を取って、ぶんぶん振る。氷竜は嫌がっていないので、角を曲がるまで、ぶんぶんぶんぶんっ。
ミリアが見えなくなって、ちらっと見てみると、フィンの不機嫌な顔にちょっとだけ、変化の兆しが。何も言わず、膝から下に魔力を擦り込んであげる。
「んーじー」
「うん。角から尻尾まで、ぜんぶ僕が悪かったから、次に行こう」
然てまた食べ歩き、継続である。あれだけ竜喰いしても、体重に変化はない。まぁ、あっても困るのだが。妙な噂が広まらないように、他のお店では少しずつ摘んでゆく。
「やーい、リシェ様とフィン様が来たぞ~」
「今日こそ、フィンちゃんの遊び相手は、あたしがするからね!」
「ほ~れほれ、御二人だけに任せず、お前らも働け~」
「フィンちゃ~ん。ほら、お菓子だよ~、美味しいよ~」
僕が魔法を使えるということになっているので、五つ音からは、壊れた橋の修復のお手伝い。まぁ、お手伝い、という領分を超えて、百人力どころか竜人力な活躍なので、この歓迎ぶりというわけである。
七つ音に、マルガリット老から好魔チーズをたんまり買い込んで、二つどころか三つの魔法を覚えたフィンへのご褒美である。最後に、フィンが気に入った本を一冊購入。氷竜に乗って、塒へ帰宅である。
「てーるーっ」
ごくごくごくごく、と鍋の好魔チーズは、余さずフィンのお腹の中へ。ぷっはぁ~、と大満足な氷竜。
食後のまったりのあと、便利竜のフィンが食器等のお片付け。僕は「フィンの秘宝」の整理となるわけだが、今日は遣っておかなければならないことがあった。
「んーだー?」
「これは、竜酒ーー今周期のものはまだ出来ていないから、暫定で、竜の国で今、一番美味しいお酒なんだけどね。はい、先ずはこれ、舐めてみて」
お皿にちょびっと垂らして、フィンの前に差し出すと、べろり。
「な…ん…っ」
お子ちゃまにはわからない味だったか。と言えればいいのだけど、僕も違いのわからない少年なので、偉そうなことは言えない。
然ても、もう一度である。同じくお皿に、ぽたり。竜酒に指を付けて、フィンの前に差し出す。
「だーよーっ」
「まぁまぁ、そう言わずに、騙されたと思って、というか、騙されて、舐めてみて」
「なーんー」
本当に騙された場合に、物凄いことを要求されてしまったが、いや、さすがにあれを舐めたり飲んだりするのは無理じゃないかと。
「だ~よ~っ!」
ぺろっ、とした氷竜は、冷気をもうもうと、もっと呉れ呉れと催促してくる。
ぐっ、布袋の中身をぜんぶフィンのお口に投入したくなってくるが、我慢我慢で竜も我慢。予想通りの効果ーー僕を介することで竜に影響があるーーが確認できたので、仕込みをしつつ、竜笛を見てもらう。
「まーだー?」
「って、駄目駄目っ! 吹いちゃっ!? ……大陸の全竜に聞こえるらしいから、こんな近くだと、たぶん凄く煩いんじゃないかな」
咄嗟に魔力で奪い取って、スナから貰った竜笛を手元に置く。
このあとは、戦略戦術、というより戦法と言ったほうが近いのか、色々とやるんだけど。基本的なものは、昨日の時点で終えている。
立ち位置の確認に、魔法の時機。それから、近くの湖に何十回も跳ね飛ばされたり、股の間を潜るのにフィンが失敗したりして、昨日は蟹股だったとか、いや、ほんと、これらのことが役に立たなかったら、枕を涙で濡らしてしまうかもしれない。
フィンが片付けを終えたので、今日買った本を持って、初日に街で購入した毛布の上に座る。
ペルンギーの宝石ほどではないが、中々の手触りである。なので、フィンがお眠になるまでは、肩車ではなく、膝枕である。
ゆっくりと動かして、氷竜の氷髪の感触を味わいながら、読み聞かせの開始。
今日の物語は、……有名な竜退治の話なのだが、まぁ、フィンは気にしていないようなので、魔獣使いである主人公の波乱万丈な冒険譚を語ってゆく。
「は~な~っ」
「はは、そうだね。魔獣百匹で襲い掛かるのは酷いよねぇ。途中からは、主人公が強くなり過ぎちゃって、読み手を選ぶ物語になっちゃったから。それに、竜がちょっと可哀想。幾ら主人公の策略とはいえ、仲間の竜が誰も助けに来てくれなかったからね」
「さーなー」
「そこは、まぁ、ご都合主義ってことで、作者は竜の能力の本当のところは知らないわけだから。はい、じゃあ、次だね」
ここからは、フィンが満足するまで、或いは僕が限界を迎えるまで、古き知識に、物語に触れてゆく。昨日運んできた分が残っているので、積み重なった「フィンの秘宝」の、一番上の本を手に取る。
「へ~、これは聖語時代の逸話を集めたものらしいね。さすがに聖語使いではなく、下位語を用いていた人々の、ん? 民間伝承もあるのか」
「く~ち~っ」
せがまれ捲りなので、さっそく読んでゆく。
「フィンの秘宝」の多くが、竜語で記されていた。今は埋まってしまっているらしい「竜図書」から写したものだそうだ。
そう、フィンは狡っ娘な魔法使いと違って、きちんとひとつひとつ手書きで写していったのだ。つまり、「フィンの秘宝」の蔵書は、現存するすべての書を写した竜書庫の劣化版ーーなどと言ってはいけない。
たとえ事実であろうと、別の側面から見れば、お宝、ということなら「フィンの秘宝」のほうに軍配が上がるだろう。
竜書庫の本と異なって、一言で言うと、味が、重みがあるのだ。周期を閲した、匂いや感触。匂いーーというのは、まぁ、本好きが感じる、におい、というやつである。
必要がなくなった、使わなくなったものは、周期の優しさと厳しさに磨り潰されるのは、人も竜も変わりがなく。いつの間にか、フィンは竜語を解することが出来なくなっていた。
日常的に、或いは記憶を刺激し続ければ、覚えていられると。そんなことをスナが言っていたような。
過去に覚えていたはずの、失われてしまった、いや、忘れてしまった、人の言葉を、周期が降り積もって尚在り続ける、宝箱に仕舞っていくように。
ふと、思い出す。スナと、一人と一竜で完結していた物語。
今は、フィンと、一人と一竜で完結していない物語。そう、あのときとは明確に違うことがある。
静かで、僕の声以外には、優しいものしかないから、ゆったりと漂ってしまう。フィンの不機嫌な顔の向こうに、膨れっ面の女の子の姿がーー。
「ーーーー」
ーーコウさんは、これだけの蔵書を有するフィンに逢いに来ることはなかった。それはフィンに限ったことではなく、すべての竜に対しても。
当然、魔法使いは大陸の、いやさ、世界の全竜の居場所を把握していたはず。あの、好奇心だらだらの娘が、竜と接触しなかったのは、……う~ん、老師でもコウさんを止めることは出来なかっただろうから、はぁ、あの娘っ子、まだ何か隠し事をしているのかもしれない。
すべてが解決して、魔法使いが願った通りの結末に、みーは大好きな女の子の胸に飛び込んでいって、それを見詰めている僕の顔がーー、
「もう、フィフォノは眠っています」
思惟の湖に潜り過ぎた所為か、竜の気配だというのに、まったく気付かなかった。
「何を考えていたのでしょう。『千竜王』は、とても優しい顔をしていました」
「……っ」
え、あ、うっ、……ぐぅ、心の内を見られていたわけでもないのに、何だろう、この竜も寝転がってお腹を見せたい感じの、服従的な羞恥心の集まりみたいなものは。
見ると、服が捲れて、竜のお腹が丸出しだったので、直してあげる。
然しも無し、リンが遣って来るのは、予想より些か早かったが、大丈夫、間に合った。
「……フィフォノは、何をしているのでしょう?」
見ると、ふわりと浮き上がったフィンが、その場でくるりくるりと横回転して、僕の膝に、顔、というか頭全体を擦り付けていた。
「もう少し、みたいですね。ぐりぐりも、ずりずりも、さわさわもいまいちだったようで、今日はくるくる、かな? 魔力の感じからして、もう一歩、というところみたいです。……あー、えっと、リンちゃん、どうしたの?」
「知らないのでしょうか。地竜は大地の魔力を享け易くする為、うつ伏せで眠るのです」
ゆくりなく地面に膝を突いたリンは、そのまま、ぽふんっ、と前に倒れて、僕の膝に顔面を乗せる。
これもまぁ、膝枕なのかな? そういえば、ボーデンさんのお店では、リンより先に寝て、地竜より後に起きたんだったっけ。でも、翡翠亭でナトラ様は、仰向けで眠っていたから、うん、深く突っ込んで聞いてはいけないようだ。
ふむ、膝枕の前、リンはフィンの竜頭を見ていたから、問題ないだろう。
「……っ」
ぴくり、と地竜が微震。すぐに治まったので、撫で撫で、継続。
でも、このままだと、地竜が大地震を起こしてしまうかもしれないので、炎竜氷竜風竜地竜にする。
「皆は、ーーどうだった」
「『千竜王』は、どこまで邪竜なのでしょう。モルゲルガス、ゼーレインバス、ユピフルクシュナに助力を乞うて。ユミファナトラとーーこのようなこと、大陸では初めてでしょう。五地竜結界で、……本当は、六地竜結界にしたかったのですが、炎氷風を閉じ込めました」
「皆は、明日の朝には遣って来るのかな」
「実際に、やってみないとわからない、ということがあると知りました」
「ごめんなさい。リンちゃんには、まだやって欲しいことがあります」
フィンの願いを断れなかったとはいえ、リンには迷惑を掛けてしまったので、心づからこれ以上ないくらいに繊細に、柔らかに地髪を梳る。
「あのとき、止められなかった責任もあります。あとは、何をすれば良いのでしょう」
「あとで規則を記した紙を渡すので、スナに届けてください。そうすれば、スナたちは、その範囲内で僕をぎったんぎったんにしてくれると思うので」
「難儀なことです。『千竜王』は自分が悪いことをしたとわかっているのに、後悔はしていないようです」
「……そういうわけで、ルエルとレイとーー、ユピフルクシュナは、ナトラ様と同じで、強そうな愛称のほうがいいかな?」
「そんなことはありません。可愛い愛称にしてあげたほうがユピフルクシュナは喜びます。……たぶん、きっと、そんな感じが、あるかもしれません」
言い切ってはみたものの、素直なリンは、嘘を吐き通すことが出来なくて。地竜のお願いを聞いてあげたいところだけど、実際にそうしてしまったら、きっとリンは自分を責めてしまうだろうから。
でも、正当化の為に、僕を悪者にもできないだろうから、そうだなぁ、パルの愛称を付けたときのように、響いた言葉を拾い上げてみるとしよう。
「ジュナーーにしようかな」
「ユピフルクシュナも喜ぶと思います」
即座に反応が返ってきたので、何だか地竜が可愛くて、悪戯したいところだったけど。
竜の願いと竜の願いが重なったとき、僕はどうするのか、それに答えを出しておかないといけないので。感謝の意味を込めて、角を軽ぅ~く擦るに留めておくのだった。
「人化」したフィンを、地上に降りると同時に肩車。手を繋いで、という妥協はしてくれないので、街では仲良し兄弟、或いは兄妹で、そこそこ話題になっているようだ。
フィンの魔力の流れを感じ取る。「隠蔽」や「幻影」だろうか、魔法を使ったようだ。
ーーあ、やばい、見つかった。
どたどたどたどたっ。がしがしがしがしっ。
「フィ~ン! おっはよ~ん」
「り~と~」
「おはよう、ミリア」
僕たちを見つけたミリアは、全力疾走で遣って来て、遠慮など氷竜に氷漬けにされてしまったのか、僕を攀じ登って、肩に立つと。
フィンの肩に座って、超っ合っ体っ!
フィンが真ん中で調整してくれるので、魔力を貰わなくても何とかなるのだが、ミリアは大人しくしてくれないので油断ならない。然ても、街の人々の視線は暖かなものなので。とはいえ、見世物になるのは御免被りたいので、とっととお店に行くことにする。
「あはは、悪いねぇ、ミリアと遊んでもらって」
「いえいえ。然し、この周期で、見事な魔力操作ですから。魔法使いには、弟子入りさせないんですか?」
僕と親父さんの会話などそっちのけ、フィンを引き摺ったミリアがお店の中に入ってゆく。男の子顔負けだが、まだ五歳なので親父さんも自由にさせているのだろう。
「魔法使い、魔法使いねぇ。東域の北西じゃ魔法使いはあんまり居ないから。北東に知り合いはいないし、ミリアを一人でやるなんて……うっうっ、そっ、そんなことぉ~っ!」
頭を抱えてしまう、娘が大好き過ぎる親父さん。愛娘が大好き過ぎる僕と意気投合した、とかそんなことはないけど。竜にも角にも、親父さんとミリアが望むのなら、ということで、竜の国で学ぶ、という選択肢を提示しておいた。
今は問題ないようだが、これから先、魔力がミリアにとって弊害となるようなら竜の国を頼るように、との付言も。
お店の中に入ると、がぶがぶがぶがぶ。
この竜が遠慮なんてするわけないので、でっかい肉の塊が、ずんどこ減っていっている。
まだ三つ音で、僕は竜の胃袋を持っていないので、相伴することは出来ない。なので、不味くない、程度の葡萄酒を注文する。
フィンが普通の子供じゃないのは一目竜然なのだが、ミリアは気にしていないし、親父さんも、ミリアの友達に悪い奴なんていない! と断言していたので、まぁ、そういうことである。
「あ、そうだ、親父さん。フフスルラニード国で串焼きを食べたんですが、通常の肉以外だと、どんな肉だかわかりますか?」
「肉に関することなら任せな! と言いたいところだけど、まったくリシェ君は、怖いことを聞いてくるねぇ」
「大丈夫ですよ。そっち方面のことではなくて、元猟師が食べるようなお肉のことです」
「仕方がないねぇ。じゃあ、ちょこっとだけだよ」
フィンのお皿に、切り分けたお肉を、どすんっ。店の奥に行くと、小さなお皿を持って戻ってくる。
「はい。食べてみて」
「では、頂きます」
……弾力があるのに、脆い。串焼きの肉とは違う、こちらも食べたことのない味と食感。お世辞にも美味しいとは言えない。少し、ではないくらいに苦みもある。
「リシェ君なら大丈夫だと思うけど、他の人に言ったら駄目だよ」
「はい。別の風竜に関することなので、それ以外では、だんまりだまだま、なので竜でも知りません」
「先ず、小鬼だねぇ。一番手に入り易いけど、残念ながら不味いんだよねぇ。狙うなら、獣型。ああ、でも、ギザマルは駄目だよ。飼育して……って、今のはなしっ、聞かなかったことにして!」
なるほど。ギザマルも餌か環境を整えることで、食べられるようになるらしい。でも、串焼きの肉の大きさからして、あと元猟師ということも勘案すると、ギザマルは外れだろう。
「因みに一番美味しいお肉って、何ですか?」
「え? そりゃあ、勿論、竜の……ひぃっ!!」
「ーーあ、すみません。今のは何でもないので、記憶から抹消してください」
「だだだだだだだだっ大丈夫っ! 何も覚えてないから!」
「がぁー! りっしぇー、おとーしゃんいじめたら、めーっ!」
「あ~、ごめんごめん、ミリア。僕と親父さんは仲良しだから、すぐに仲直りで竜々だから大丈夫だよ~」
「げーらー」
いや、フィン。そんな嘲笑わなくても。
昨日買った飴を、ミリアのお口に、ぽいっ。泣いた竜が笑った、ってくらいに、ご機嫌な幼女から顔を逸らして、追究追及追求。
「ーーで、竜のお肉は美味しいんですか?」
「ちょっと、リシェ君っ、苛めないで! ……そういう伝説があるだけだからねぇ。本音を言うと、食べてみたいけど、でも、人間じゃ耐えられないと思うよ」
「耐えられない、ですか?」
「これは魔獣もそうだと言われてるけど、竜の魔力って、普通の、人間とかの魔力とは違うみたいでねぇ。得も言われぬ美味さに、そのまま地の国へと旅立ってしまうとも、不老不死が得られるとも、眉唾な話なら幾らでもあるよ」
「不老不死ーー?」
有り得ないーーと言えないのが、何とも。竜の魔力を貰って、色々と試していたが、現在の肉体を維持することくらいなら、出来そうな気がするのだが。
他にも、ラン・ティノは、イオラングリディアと愛し合っているというーーつまり、竜と交わることで……ことで?
交わる……目合い……交合? じゃなくて、交尾な性向、もとい成功で生硬な性交、って、だからっ、そうじゃなくて! そういうことでもなくなくてっ! ……もし、「分化」した竜と、触れ合ったら、僕は……ごぷっ。
「…………」
世界の果てでも地の果てでも空の果てでも魔力の果てでも生命の果てでも竜の果てでも何でもいいので竜にも角にも鱗にも尻尾にも彼方にほっぽってしまうのが解決竜も幸せになってしまうくらいの有り触れた日常に回帰する為の竜のお肌が……ごぶっ。
「……挙動不審という言葉が、裸足で逃げ出しそうな感じだけど、大丈夫? 手遅れじゃないよね?」
「……大丈夫です。ちゃんと帰ってこれました。まだまだ余力はあります」
炎竜にも氷竜にも、金貨を二枚、親父さんに渡す。この等級の肉は、出回る量が限られているので、明日からは肉塊ではなく、調理されたものを食べさせるとしよう。
「ほ~ら! フィ~ン、おくちふかないとだめーっ!」
「れ~る~」
五歳の子供に世話を焼かれる竜というのも、何だか絵になる光景である。
お別れの際に時間が取れるなら、正体をーーいや、それは野暮というものだろう。一人と一竜は、種族なんて関係なく、今を楽しんでいる。それ以上に重要なことは、大切なことはない。
「フィンフィ~ン、まったね~」
「と~し~っ」
もしかしたら、ミリアはフィン語を理解しているのかもしれない。言葉以上のもの、というのは確かにあるのだ。
フィンは、フィン語以外の、身体表現が淡泊なので、肩車した氷竜の手を取って、ぶんぶん振る。氷竜は嫌がっていないので、角を曲がるまで、ぶんぶんぶんぶんっ。
ミリアが見えなくなって、ちらっと見てみると、フィンの不機嫌な顔にちょっとだけ、変化の兆しが。何も言わず、膝から下に魔力を擦り込んであげる。
「んーじー」
「うん。角から尻尾まで、ぜんぶ僕が悪かったから、次に行こう」
然てまた食べ歩き、継続である。あれだけ竜喰いしても、体重に変化はない。まぁ、あっても困るのだが。妙な噂が広まらないように、他のお店では少しずつ摘んでゆく。
「やーい、リシェ様とフィン様が来たぞ~」
「今日こそ、フィンちゃんの遊び相手は、あたしがするからね!」
「ほ~れほれ、御二人だけに任せず、お前らも働け~」
「フィンちゃ~ん。ほら、お菓子だよ~、美味しいよ~」
僕が魔法を使えるということになっているので、五つ音からは、壊れた橋の修復のお手伝い。まぁ、お手伝い、という領分を超えて、百人力どころか竜人力な活躍なので、この歓迎ぶりというわけである。
七つ音に、マルガリット老から好魔チーズをたんまり買い込んで、二つどころか三つの魔法を覚えたフィンへのご褒美である。最後に、フィンが気に入った本を一冊購入。氷竜に乗って、塒へ帰宅である。
「てーるーっ」
ごくごくごくごく、と鍋の好魔チーズは、余さずフィンのお腹の中へ。ぷっはぁ~、と大満足な氷竜。
食後のまったりのあと、便利竜のフィンが食器等のお片付け。僕は「フィンの秘宝」の整理となるわけだが、今日は遣っておかなければならないことがあった。
「んーだー?」
「これは、竜酒ーー今周期のものはまだ出来ていないから、暫定で、竜の国で今、一番美味しいお酒なんだけどね。はい、先ずはこれ、舐めてみて」
お皿にちょびっと垂らして、フィンの前に差し出すと、べろり。
「な…ん…っ」
お子ちゃまにはわからない味だったか。と言えればいいのだけど、僕も違いのわからない少年なので、偉そうなことは言えない。
然ても、もう一度である。同じくお皿に、ぽたり。竜酒に指を付けて、フィンの前に差し出す。
「だーよーっ」
「まぁまぁ、そう言わずに、騙されたと思って、というか、騙されて、舐めてみて」
「なーんー」
本当に騙された場合に、物凄いことを要求されてしまったが、いや、さすがにあれを舐めたり飲んだりするのは無理じゃないかと。
「だ~よ~っ!」
ぺろっ、とした氷竜は、冷気をもうもうと、もっと呉れ呉れと催促してくる。
ぐっ、布袋の中身をぜんぶフィンのお口に投入したくなってくるが、我慢我慢で竜も我慢。予想通りの効果ーー僕を介することで竜に影響があるーーが確認できたので、仕込みをしつつ、竜笛を見てもらう。
「まーだー?」
「って、駄目駄目っ! 吹いちゃっ!? ……大陸の全竜に聞こえるらしいから、こんな近くだと、たぶん凄く煩いんじゃないかな」
咄嗟に魔力で奪い取って、スナから貰った竜笛を手元に置く。
このあとは、戦略戦術、というより戦法と言ったほうが近いのか、色々とやるんだけど。基本的なものは、昨日の時点で終えている。
立ち位置の確認に、魔法の時機。それから、近くの湖に何十回も跳ね飛ばされたり、股の間を潜るのにフィンが失敗したりして、昨日は蟹股だったとか、いや、ほんと、これらのことが役に立たなかったら、枕を涙で濡らしてしまうかもしれない。
フィンが片付けを終えたので、今日買った本を持って、初日に街で購入した毛布の上に座る。
ペルンギーの宝石ほどではないが、中々の手触りである。なので、フィンがお眠になるまでは、肩車ではなく、膝枕である。
ゆっくりと動かして、氷竜の氷髪の感触を味わいながら、読み聞かせの開始。
今日の物語は、……有名な竜退治の話なのだが、まぁ、フィンは気にしていないようなので、魔獣使いである主人公の波乱万丈な冒険譚を語ってゆく。
「は~な~っ」
「はは、そうだね。魔獣百匹で襲い掛かるのは酷いよねぇ。途中からは、主人公が強くなり過ぎちゃって、読み手を選ぶ物語になっちゃったから。それに、竜がちょっと可哀想。幾ら主人公の策略とはいえ、仲間の竜が誰も助けに来てくれなかったからね」
「さーなー」
「そこは、まぁ、ご都合主義ってことで、作者は竜の能力の本当のところは知らないわけだから。はい、じゃあ、次だね」
ここからは、フィンが満足するまで、或いは僕が限界を迎えるまで、古き知識に、物語に触れてゆく。昨日運んできた分が残っているので、積み重なった「フィンの秘宝」の、一番上の本を手に取る。
「へ~、これは聖語時代の逸話を集めたものらしいね。さすがに聖語使いではなく、下位語を用いていた人々の、ん? 民間伝承もあるのか」
「く~ち~っ」
せがまれ捲りなので、さっそく読んでゆく。
「フィンの秘宝」の多くが、竜語で記されていた。今は埋まってしまっているらしい「竜図書」から写したものだそうだ。
そう、フィンは狡っ娘な魔法使いと違って、きちんとひとつひとつ手書きで写していったのだ。つまり、「フィンの秘宝」の蔵書は、現存するすべての書を写した竜書庫の劣化版ーーなどと言ってはいけない。
たとえ事実であろうと、別の側面から見れば、お宝、ということなら「フィンの秘宝」のほうに軍配が上がるだろう。
竜書庫の本と異なって、一言で言うと、味が、重みがあるのだ。周期を閲した、匂いや感触。匂いーーというのは、まぁ、本好きが感じる、におい、というやつである。
必要がなくなった、使わなくなったものは、周期の優しさと厳しさに磨り潰されるのは、人も竜も変わりがなく。いつの間にか、フィンは竜語を解することが出来なくなっていた。
日常的に、或いは記憶を刺激し続ければ、覚えていられると。そんなことをスナが言っていたような。
過去に覚えていたはずの、失われてしまった、いや、忘れてしまった、人の言葉を、周期が降り積もって尚在り続ける、宝箱に仕舞っていくように。
ふと、思い出す。スナと、一人と一竜で完結していた物語。
今は、フィンと、一人と一竜で完結していない物語。そう、あのときとは明確に違うことがある。
静かで、僕の声以外には、優しいものしかないから、ゆったりと漂ってしまう。フィンの不機嫌な顔の向こうに、膨れっ面の女の子の姿がーー。
「ーーーー」
ーーコウさんは、これだけの蔵書を有するフィンに逢いに来ることはなかった。それはフィンに限ったことではなく、すべての竜に対しても。
当然、魔法使いは大陸の、いやさ、世界の全竜の居場所を把握していたはず。あの、好奇心だらだらの娘が、竜と接触しなかったのは、……う~ん、老師でもコウさんを止めることは出来なかっただろうから、はぁ、あの娘っ子、まだ何か隠し事をしているのかもしれない。
すべてが解決して、魔法使いが願った通りの結末に、みーは大好きな女の子の胸に飛び込んでいって、それを見詰めている僕の顔がーー、
「もう、フィフォノは眠っています」
思惟の湖に潜り過ぎた所為か、竜の気配だというのに、まったく気付かなかった。
「何を考えていたのでしょう。『千竜王』は、とても優しい顔をしていました」
「……っ」
え、あ、うっ、……ぐぅ、心の内を見られていたわけでもないのに、何だろう、この竜も寝転がってお腹を見せたい感じの、服従的な羞恥心の集まりみたいなものは。
見ると、服が捲れて、竜のお腹が丸出しだったので、直してあげる。
然しも無し、リンが遣って来るのは、予想より些か早かったが、大丈夫、間に合った。
「……フィフォノは、何をしているのでしょう?」
見ると、ふわりと浮き上がったフィンが、その場でくるりくるりと横回転して、僕の膝に、顔、というか頭全体を擦り付けていた。
「もう少し、みたいですね。ぐりぐりも、ずりずりも、さわさわもいまいちだったようで、今日はくるくる、かな? 魔力の感じからして、もう一歩、というところみたいです。……あー、えっと、リンちゃん、どうしたの?」
「知らないのでしょうか。地竜は大地の魔力を享け易くする為、うつ伏せで眠るのです」
ゆくりなく地面に膝を突いたリンは、そのまま、ぽふんっ、と前に倒れて、僕の膝に顔面を乗せる。
これもまぁ、膝枕なのかな? そういえば、ボーデンさんのお店では、リンより先に寝て、地竜より後に起きたんだったっけ。でも、翡翠亭でナトラ様は、仰向けで眠っていたから、うん、深く突っ込んで聞いてはいけないようだ。
ふむ、膝枕の前、リンはフィンの竜頭を見ていたから、問題ないだろう。
「……っ」
ぴくり、と地竜が微震。すぐに治まったので、撫で撫で、継続。
でも、このままだと、地竜が大地震を起こしてしまうかもしれないので、炎竜氷竜風竜地竜にする。
「皆は、ーーどうだった」
「『千竜王』は、どこまで邪竜なのでしょう。モルゲルガス、ゼーレインバス、ユピフルクシュナに助力を乞うて。ユミファナトラとーーこのようなこと、大陸では初めてでしょう。五地竜結界で、……本当は、六地竜結界にしたかったのですが、炎氷風を閉じ込めました」
「皆は、明日の朝には遣って来るのかな」
「実際に、やってみないとわからない、ということがあると知りました」
「ごめんなさい。リンちゃんには、まだやって欲しいことがあります」
フィンの願いを断れなかったとはいえ、リンには迷惑を掛けてしまったので、心づからこれ以上ないくらいに繊細に、柔らかに地髪を梳る。
「あのとき、止められなかった責任もあります。あとは、何をすれば良いのでしょう」
「あとで規則を記した紙を渡すので、スナに届けてください。そうすれば、スナたちは、その範囲内で僕をぎったんぎったんにしてくれると思うので」
「難儀なことです。『千竜王』は自分が悪いことをしたとわかっているのに、後悔はしていないようです」
「……そういうわけで、ルエルとレイとーー、ユピフルクシュナは、ナトラ様と同じで、強そうな愛称のほうがいいかな?」
「そんなことはありません。可愛い愛称にしてあげたほうがユピフルクシュナは喜びます。……たぶん、きっと、そんな感じが、あるかもしれません」
言い切ってはみたものの、素直なリンは、嘘を吐き通すことが出来なくて。地竜のお願いを聞いてあげたいところだけど、実際にそうしてしまったら、きっとリンは自分を責めてしまうだろうから。
でも、正当化の為に、僕を悪者にもできないだろうから、そうだなぁ、パルの愛称を付けたときのように、響いた言葉を拾い上げてみるとしよう。
「ジュナーーにしようかな」
「ユピフルクシュナも喜ぶと思います」
即座に反応が返ってきたので、何だか地竜が可愛くて、悪戯したいところだったけど。
竜の願いと竜の願いが重なったとき、僕はどうするのか、それに答えを出しておかないといけないので。感謝の意味を込めて、角を軽ぅ~く擦るに留めておくのだった。
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