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7.Winter song.-雨野秋良の場合-
告白
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蛍はROOTのホームページを表示すると、アーティストの中からナナツボシの名前をクリックした。
以前見た時はナナツボシとミュージックフェスに出演をするという情報以外は全て “Coming Soon”だったが、フェスで優勝しているのにそのままというのは有り得ないだろうという世間的NGが強過ぎて更新をする事になった様だ。
フェス出場が決まった時は、情報が無いのも謎めいていて良いと思ったけど、流石に顔を晒してからの “Coming Soon”は如何なものかと思う。
まぁ、為平社長の事だから何か考えがあるんだうけど。
「流石にアー写は真面目なの使ってるな。
俺の予想だと、Ambivalenceのジャケットはあの写真っと⋯ 」
ナナツボシのディスコグラフィの頁をクリックすると、予想通りのジャケット写真が画面上に表示される。
「ん?!⋯ これ、ジャケットになっちゃうんだ!?
えっ?!良いの?これ?!!」
相当焦っている様子の蛍を見ると笑いが込み上げてくる。
「写真系は全部社長セレクトなんだよ。
トップの意見なんだから良いんじゃない?」
「まじか⋯ よりによってこの写真か」
蛍が嫌がったその写真は、例の西村さんにキスマーク隠せと言われた写真。
確かにその時は撮られていた側だから気にしていなかったが、こうして客観視してみると良い具合にエロティックな印象だ。
被写体がどうかはさておき、ナナツボシの楽曲イメージからもこの辺りの写真を使うのが妥当だろう。
寧ろ狙い通りだ。
「俺達にはジャケットのイメージに意見する権限無いの?」
「曲が出来た時点で、コンセプトやジャケットのイメージは申告済みだからな。そのイメージを元に社長も選んでる筈だよ。
今回は時間が無くて、俺ひとりでコンセプトとか出しちゃったから半分は俺の意見なのかも。
⋯ 嫌だった?」
「嫌って言うか最初からこれだと、何て言うんだろ?⋯ いや、単に俺が恥ずかしいってだけかも」
「インパクトあるジャケットだと思うけど?」
「そうなんだけど、そうじゃなくて⋯ 」
歯切れ悪く言葉を途切れさせると蛍は黙り込んだ。
何が引っかかっているんだろう。
キスマークを隠している写真だなんて言わなきゃ分からないし、他に恥ずかしがる様な所は見つからない。
「ねぇ秋、楽屋で言っていた事なんだけどさ」
「うん?」
「⋯ “嫌なら恋人じゃなくてもいい” って、どういう意味?」
「そのまんまの意味だけど。
蛍がただ兄弟や、ナナツボシをやっていく為だけの仲間って思うんならオレはそれでも⋯ 」
「違う!そうじゃ無くて⋯ 」
突然大きな声を上げた蛍に驚くと、ごめんと俯いた。
「どうしたんだよ?」
風呂上がりのほんのりと赤いままの体を、肩を掴んでに向けると自分と同じシャンプーの香りがした。
暫しの沈黙の後、蛍が訪ねてくる。
「秋はさ、その⋯ 俺と付き合ってるって思ってくれてたの?」
「そうだけど⋯ そう言うってことは蛍はそうじゃなかったみたいだね。⋯ ひとりだけ舞い上がって恥ずかしいよ」
苦笑いをして目を逸らすと、膝の上で握った蛍の拳が視界に入った。
「あの時は付き合うとかそういう話しなかったからそう思ってなくて⋯ 」
蛍の言葉がフェードアウトしていく。
─言い難い事を迷う時はいつもこうだ。
それに鈍感。
蛍には言葉でちゃんと言葉にしないと伝わらない。
どんな結果が待っていても。
「⋯ 俺は蛍が好きだよ。今までもこれからも。だから俺と付き合ってほしい」
そう告げると、蛍は俯いて黙り込んだ。
「⋯ 正直、色々あって混乱している。秋がこうやって真剣に向き合ってくれてるから、俺も中途半端な返事はしたくない」
徐々に蛍の目線が上がってくると、真剣な顔が覗いた。
フッと息を吐くと、言葉を続ける。
「秋の気持ちは嬉しい⋯ でも今は素直に頷けない。暫くそばで、今まで通り居ながら考える時間貰ったらだめかな⋯ 」
「⋯ うん、それで良いよ。
無理強いはしたくないし、蛍と一緒にいられるなら今はそれで満足。
でも、俺はずっと一緒にいたいって思っていることは忘れないで。だから蛍が、俺と付き合っても良いと思えたその時はちゃんと教えほしい」
蛍は再び俯くと、迷いの色を浮かべる。
「一番の願いは蛍が笑顔でいられる道を選んでくれる事。綺麗事に聞こえるかもしれないけど、蛍が嫌々俺と付き合ったって嬉しくないから。
でも、帰ってくる家はここだと思ってほしい。家を空けるなとは言わない。でも連絡くらいはして?」
「⋯ うん⋯⋯ わかった」
─本当はこんなに物分りが良い人間じゃない。
本音を言えば無理にでも押さえ付けて自分のものにしてしまいたい。
でも、そんな事をしたって心まで手に入らないって事を知っているから。
だから、蛍が笑顔でいられる道を選んでほしいというのは本心。
決して善人ぶっている訳じゃなくて、それが一番、収まりが良いと感じるだけ。
蛍が幸せで、その上で自分も幸せになれたらそれは願ってもない事で、そうなれたら良いと心から思う。
今は待つよ。
待てる。
ナナツボシがあるし、蛍も俺の元に戻ってきてくれたんだから。
蛍の髪をそっと撫でると少しだけ緊張が和らいだ気がした。
蛍は抵抗せずにいてくれて、良い返事は貰えなかったのにそこまで気持ちが落ち込むこともなく、その距離感はちょうど良い。
蛍が帰ってこないとソワソワしていた先週とは天国と地獄程の差があった。
以前見た時はナナツボシとミュージックフェスに出演をするという情報以外は全て “Coming Soon”だったが、フェスで優勝しているのにそのままというのは有り得ないだろうという世間的NGが強過ぎて更新をする事になった様だ。
フェス出場が決まった時は、情報が無いのも謎めいていて良いと思ったけど、流石に顔を晒してからの “Coming Soon”は如何なものかと思う。
まぁ、為平社長の事だから何か考えがあるんだうけど。
「流石にアー写は真面目なの使ってるな。
俺の予想だと、Ambivalenceのジャケットはあの写真っと⋯ 」
ナナツボシのディスコグラフィの頁をクリックすると、予想通りのジャケット写真が画面上に表示される。
「ん?!⋯ これ、ジャケットになっちゃうんだ!?
えっ?!良いの?これ?!!」
相当焦っている様子の蛍を見ると笑いが込み上げてくる。
「写真系は全部社長セレクトなんだよ。
トップの意見なんだから良いんじゃない?」
「まじか⋯ よりによってこの写真か」
蛍が嫌がったその写真は、例の西村さんにキスマーク隠せと言われた写真。
確かにその時は撮られていた側だから気にしていなかったが、こうして客観視してみると良い具合にエロティックな印象だ。
被写体がどうかはさておき、ナナツボシの楽曲イメージからもこの辺りの写真を使うのが妥当だろう。
寧ろ狙い通りだ。
「俺達にはジャケットのイメージに意見する権限無いの?」
「曲が出来た時点で、コンセプトやジャケットのイメージは申告済みだからな。そのイメージを元に社長も選んでる筈だよ。
今回は時間が無くて、俺ひとりでコンセプトとか出しちゃったから半分は俺の意見なのかも。
⋯ 嫌だった?」
「嫌って言うか最初からこれだと、何て言うんだろ?⋯ いや、単に俺が恥ずかしいってだけかも」
「インパクトあるジャケットだと思うけど?」
「そうなんだけど、そうじゃなくて⋯ 」
歯切れ悪く言葉を途切れさせると蛍は黙り込んだ。
何が引っかかっているんだろう。
キスマークを隠している写真だなんて言わなきゃ分からないし、他に恥ずかしがる様な所は見つからない。
「ねぇ秋、楽屋で言っていた事なんだけどさ」
「うん?」
「⋯ “嫌なら恋人じゃなくてもいい” って、どういう意味?」
「そのまんまの意味だけど。
蛍がただ兄弟や、ナナツボシをやっていく為だけの仲間って思うんならオレはそれでも⋯ 」
「違う!そうじゃ無くて⋯ 」
突然大きな声を上げた蛍に驚くと、ごめんと俯いた。
「どうしたんだよ?」
風呂上がりのほんのりと赤いままの体を、肩を掴んでに向けると自分と同じシャンプーの香りがした。
暫しの沈黙の後、蛍が訪ねてくる。
「秋はさ、その⋯ 俺と付き合ってるって思ってくれてたの?」
「そうだけど⋯ そう言うってことは蛍はそうじゃなかったみたいだね。⋯ ひとりだけ舞い上がって恥ずかしいよ」
苦笑いをして目を逸らすと、膝の上で握った蛍の拳が視界に入った。
「あの時は付き合うとかそういう話しなかったからそう思ってなくて⋯ 」
蛍の言葉がフェードアウトしていく。
─言い難い事を迷う時はいつもこうだ。
それに鈍感。
蛍には言葉でちゃんと言葉にしないと伝わらない。
どんな結果が待っていても。
「⋯ 俺は蛍が好きだよ。今までもこれからも。だから俺と付き合ってほしい」
そう告げると、蛍は俯いて黙り込んだ。
「⋯ 正直、色々あって混乱している。秋がこうやって真剣に向き合ってくれてるから、俺も中途半端な返事はしたくない」
徐々に蛍の目線が上がってくると、真剣な顔が覗いた。
フッと息を吐くと、言葉を続ける。
「秋の気持ちは嬉しい⋯ でも今は素直に頷けない。暫くそばで、今まで通り居ながら考える時間貰ったらだめかな⋯ 」
「⋯ うん、それで良いよ。
無理強いはしたくないし、蛍と一緒にいられるなら今はそれで満足。
でも、俺はずっと一緒にいたいって思っていることは忘れないで。だから蛍が、俺と付き合っても良いと思えたその時はちゃんと教えほしい」
蛍は再び俯くと、迷いの色を浮かべる。
「一番の願いは蛍が笑顔でいられる道を選んでくれる事。綺麗事に聞こえるかもしれないけど、蛍が嫌々俺と付き合ったって嬉しくないから。
でも、帰ってくる家はここだと思ってほしい。家を空けるなとは言わない。でも連絡くらいはして?」
「⋯ うん⋯⋯ わかった」
─本当はこんなに物分りが良い人間じゃない。
本音を言えば無理にでも押さえ付けて自分のものにしてしまいたい。
でも、そんな事をしたって心まで手に入らないって事を知っているから。
だから、蛍が笑顔でいられる道を選んでほしいというのは本心。
決して善人ぶっている訳じゃなくて、それが一番、収まりが良いと感じるだけ。
蛍が幸せで、その上で自分も幸せになれたらそれは願ってもない事で、そうなれたら良いと心から思う。
今は待つよ。
待てる。
ナナツボシがあるし、蛍も俺の元に戻ってきてくれたんだから。
蛍の髪をそっと撫でると少しだけ緊張が和らいだ気がした。
蛍は抵抗せずにいてくれて、良い返事は貰えなかったのにそこまで気持ちが落ち込むこともなく、その距離感はちょうど良い。
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