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6.Music festival.-吉澤蛍の場合-
父の幸せ
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「蛍、行くぞ」
「あ、うん」
事務所に着くと、まずは為平の所に挨拶に向かった。
昨日のミュージックフェスの評価と、事務所に届いているファンメールやホームページのアクセス数等、周りからの評価が高い事を知らされる。
ステージに立ってもなお実感が湧かないのだと伝えると、為平はそんなもんだと笑った。
それから、もう既に数件の仕事が来ていて、社長判断で1件だけ受けたCMの仕事があることを聞かされた。
ミュージックフェスの結果によってはそれ絡みのスケジュールも増えるが、月末のCM撮影は確定らしい。
ミュージックフェスの投票締切が前日の18時。
その結果で翌日もう1度ステージに立つかが決まるのだから投票締切日に撮影が入ろう物なら結構なハードスケジュールだ。
どちらにせよ、両日共に平日。
スケジュールが入れば、学校は休む事になる。
進路希望も中途半端なままだ。
そこら辺は親や担任とも話さなければいけない。
打ち合わせは思ったよりも早く終わって、帰宅。
家に来いという秋良の誘いをやんわり断って、鷹城に車で送ってもらい帰宅。
今日は水曜日だから、イレギュラーな対応がなければ佳彦が帰っているはずだ。
予想通り佳彦は帰っていて、夕飯の支度が丁度終わった所だった。
メインは和風ハンバーグ。
ご飯を頬張りながら佳彦の話に耳を傾ける。
「ミュージックフェス、評判良いみたいだね」
「うーん、今日も撮影だったし、あんまり実感ないけど。あ、審査員に撫子さんがいた!」
「親子共演、割とすぐだったね」
「うん」
「⋯ 父さん近々、撫子さんと入籍しようと思うんだけど蛍はどう思う?」
真剣な目だった。
今まで自分中心に考えてくれた父の幸せを、反対する筈が無い。
「勿論!賛成だよ」
「良かった⋯
それで蛍、暫く秋良くんの家にお世話になる事出来ないかな?発表したらここにも報道陣が来る可能性もある。その時、撫子さんと蛍が親子だって知られるのもまずいだろ?
父さんも殆ど家に帰ってないし、撫子さんも勿論今まで通りの家に帰る。この家に誰も出入りしてなければ怪しまれずに済むかと思って」
「⋯ うん、分かった。秋に相談してみるよ」
─相手はあの雨野撫子だもんね。
これだけ警戒する方が良い位なんだろう。
ご飯を食べてお風呂に入ってから蛍は秋良に早速電話をかける。
先程佳彦に言われた話しを伝えると、寧ろ喜んでいる様子だった。
電話を切ると、普段使うものをスーツケースに詰め込んで行く。
秋良も言っていたが、足りないものは買えば良い。
そう思いながら荷物を詰めていくが、何だかんだで多くなってしまうものだ。
─近い内に秋良の家に運ばせてもらおう。
いつ発表するかは教えてくれるだろうけど、家に帰れないタイミングって事も有り得るし。
荷物を纏め終わると、メールの通知音が鳴った。
差出人は雪弥。
移動中にしたメールの返事だろう。
『返信ありがとう。安心した。
急だけど、明日はどうだろうか?その後だと暫く空きそうにないから、明日会えるなら嬉しい』
─明日か⋯
逃げて先送りにしてもモヤモヤするのは間違いないし、話さないまま会ったら気まずいだろうな。
それに秋の家に行ったら、ひとりで出掛けるのも簡単じゃないだろうし。
『お疲れ様。
明日で大丈夫。学校があるから17時以降になりそうだけど、雪弥の都合はどう?』
返事をすると、すぐにメールが返ってくる。
『ああ、大丈夫だ。18時に家の前まで迎えに行く』
─家、知ってるのか。
行くって事は知ってるんだろうけど、一応聞いておく?
『分かった。家分かる?』
『何度か行ったことあるから、覚えていると思う』
『了解。じゃあまた明日』
『おやすみ』
─なんだ、割と普通。
メールだからかな。
ってか、雪弥が家に何度も来た記憶が無い⋯
雪弥には話したつもりだが、覚えている事の方が少ないんだ。
それはもう一度、明日会ったら聞いてみよう
「あ、うん」
事務所に着くと、まずは為平の所に挨拶に向かった。
昨日のミュージックフェスの評価と、事務所に届いているファンメールやホームページのアクセス数等、周りからの評価が高い事を知らされる。
ステージに立ってもなお実感が湧かないのだと伝えると、為平はそんなもんだと笑った。
それから、もう既に数件の仕事が来ていて、社長判断で1件だけ受けたCMの仕事があることを聞かされた。
ミュージックフェスの結果によってはそれ絡みのスケジュールも増えるが、月末のCM撮影は確定らしい。
ミュージックフェスの投票締切が前日の18時。
その結果で翌日もう1度ステージに立つかが決まるのだから投票締切日に撮影が入ろう物なら結構なハードスケジュールだ。
どちらにせよ、両日共に平日。
スケジュールが入れば、学校は休む事になる。
進路希望も中途半端なままだ。
そこら辺は親や担任とも話さなければいけない。
打ち合わせは思ったよりも早く終わって、帰宅。
家に来いという秋良の誘いをやんわり断って、鷹城に車で送ってもらい帰宅。
今日は水曜日だから、イレギュラーな対応がなければ佳彦が帰っているはずだ。
予想通り佳彦は帰っていて、夕飯の支度が丁度終わった所だった。
メインは和風ハンバーグ。
ご飯を頬張りながら佳彦の話に耳を傾ける。
「ミュージックフェス、評判良いみたいだね」
「うーん、今日も撮影だったし、あんまり実感ないけど。あ、審査員に撫子さんがいた!」
「親子共演、割とすぐだったね」
「うん」
「⋯ 父さん近々、撫子さんと入籍しようと思うんだけど蛍はどう思う?」
真剣な目だった。
今まで自分中心に考えてくれた父の幸せを、反対する筈が無い。
「勿論!賛成だよ」
「良かった⋯
それで蛍、暫く秋良くんの家にお世話になる事出来ないかな?発表したらここにも報道陣が来る可能性もある。その時、撫子さんと蛍が親子だって知られるのもまずいだろ?
父さんも殆ど家に帰ってないし、撫子さんも勿論今まで通りの家に帰る。この家に誰も出入りしてなければ怪しまれずに済むかと思って」
「⋯ うん、分かった。秋に相談してみるよ」
─相手はあの雨野撫子だもんね。
これだけ警戒する方が良い位なんだろう。
ご飯を食べてお風呂に入ってから蛍は秋良に早速電話をかける。
先程佳彦に言われた話しを伝えると、寧ろ喜んでいる様子だった。
電話を切ると、普段使うものをスーツケースに詰め込んで行く。
秋良も言っていたが、足りないものは買えば良い。
そう思いながら荷物を詰めていくが、何だかんだで多くなってしまうものだ。
─近い内に秋良の家に運ばせてもらおう。
いつ発表するかは教えてくれるだろうけど、家に帰れないタイミングって事も有り得るし。
荷物を纏め終わると、メールの通知音が鳴った。
差出人は雪弥。
移動中にしたメールの返事だろう。
『返信ありがとう。安心した。
急だけど、明日はどうだろうか?その後だと暫く空きそうにないから、明日会えるなら嬉しい』
─明日か⋯
逃げて先送りにしてもモヤモヤするのは間違いないし、話さないまま会ったら気まずいだろうな。
それに秋の家に行ったら、ひとりで出掛けるのも簡単じゃないだろうし。
『お疲れ様。
明日で大丈夫。学校があるから17時以降になりそうだけど、雪弥の都合はどう?』
返事をすると、すぐにメールが返ってくる。
『ああ、大丈夫だ。18時に家の前まで迎えに行く』
─家、知ってるのか。
行くって事は知ってるんだろうけど、一応聞いておく?
『分かった。家分かる?』
『何度か行ったことあるから、覚えていると思う』
『了解。じゃあまた明日』
『おやすみ』
─なんだ、割と普通。
メールだからかな。
ってか、雪弥が家に何度も来た記憶が無い⋯
雪弥には話したつもりだが、覚えている事の方が少ないんだ。
それはもう一度、明日会ったら聞いてみよう
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