まだ、言えない

怜虎

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4.Autumn.

ラベンダー

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3日目は自由行動。

集合時間さえ守れば、各々が自由に行動できる日だ。

昨日に比べ食欲も戻り、ほぼ通常通りのペースを取り戻すと、自由時間いっぱい観光やグルメを満喫した。

夕方になると今日の宿まで移動する為、集合場所に待機していたバスに乗り込んだ。


移動中、隣の席には悠和。

先に乗り込んでいだ悠和に誘われ、隣に腰を下ろす。

話したいと言われ断る理由も特に見つからず頷いたが、考えてみればこの旅行中はあまり話せていない。

秋良を気にしてみたが、山口と話し込んでいるのが見えると悠和の隣の席に腰を下ろした。


まもなくしてバスは出発。

目的地までの小一時間、一日中歩き回って疲労した足をほぐしながら旅行の思い出に浸る。


「明日帰るなんて、早いね」

「本当。帰りたくなくなる」

「蛍は楽しめた?」


不安そうに見つめる悠和と目線がぶつかる。


悠和は悠和で気にしていたのだろう。

“避けないでほしい” と言ってきたのは旅行の前日、始業式の後だった。

自分でもびっくりするくらい悠和に対して自然に振る舞えているのだ。

悠和の構え方も影響しているんだろう。


「勿論!」

「それなら良かった!⋯それでさ、これ」

「え?」


そう言って悠和はカバンの中からノート位のサイズの包み紙を取り出した。


「一緒に来てるのに変だけど、蛍にお土産」

「えっ、どうして ⋯」


そう言い終わる前に、包み紙は手中に収まっていた。


「大したものじゃないし、気にしないで」

「ありがとう。あ⋯ごめん俺何にも用意してなくて」

「ううん、貰ってくれればそれで良いから」

「開けて良い?」

「うん」


包を開けると、ラベンダーソルトとラベンダーのハンドクリームが入っていた。

「何か女子っぽくなってごめん。でも料理するって言ってたし、寝不足だとも言ってたから」

「ううん、ありがとう!嬉しいよ」


「それに⋯消える物の方が良いかと思って」

確かにどちらも、使い切ればなくなってしまう物をセレクトしている。

ハッキリそう言われてしまうと寂しい気もした。


「⋯悠和のそういう人を気遣えるところ、凄く良いと思う。すごく尊敬出来るよ。でも、俺が言うのも変だけど⋯自分の事もっと優先してあげて?」


それが本来の悠和なのかもしれない。

でも人の為に、俺の為に自分を殺して生きているのなら凄く勿体無いし、何だか申し訳ない気持ちにもなった。



―俺なんてわがままだから、すぐ自分の都合良い様に逃げてしまう。

自分を優先させてしまう。



人間はそんなものなのかもしれない。

だとしたら、他人を優先する少数派が自己主張をするべきなんだと思う。


「ありがとう」


暫く驚いた顔をしていた悠和が頬を緩ませていた。

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