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「一体何がどうなったらこんなこうなるんだよ!? なんの嫌がらせだよ! お前、自分は彼女とっかえひっかえしておいて、なんで俺に彼女出来るってなったら邪魔すんの!? そんなに俺のこと嫌いなのかよ!!」
 喚き散らす俺を前に、光昭はキョトンと目を丸めて、ブンブンと首を横に振った。

「嫌いなわけない。好きだ。だから盗られる前に俺のモノにする」
「はぁ?」
「彼女だって、いたことない。勝手に寄って来るだけで、俺はずっと守だけだった」
「何言って……」

 幼馴染の俺だけはお前のこと分かってやれる、なんてとんだ思い上がりだった。俺は今、お前が何考えてんだかさっぱりわかんない。

「間に合って良かった。守は馬鹿で危なっかしいから、俺がちゃんと飼ってあげないとダメ」
「おい! 馬鹿ってなんだ! テメェ、似たような頭の出来のくせして。大体、飼うってなに!」

 ギュウと光昭に抱きしめられて、俺は苦しくなって光昭の腕の中からどうにか逃げ出そうと必死にもがく。でかい図体で力いっぱい抱きしめられたら、まともに息も出来ない。
 ただでさえ、さっきの強烈なキスで酸欠気味だってのに。

「もーほんとお前意味わかんな……って、痛ぇ!!」
 とにかく光昭を引き剥がそうと、力いっぱい腕を突っぱねる。と、右肩に走った強い痛みに、俺は思わず悲鳴を上げた。
 見れば制服のシャツの隙間から、息を荒くした光昭が俺の首筋に歯を立てている。

「光昭、お前……なにして」
「俺の守――絶対誰にも渡さない。守にも分からせる。お前は一生、俺のモノ」
「ちょ、光昭? 一生ってなに馬鹿なこと言ってんだ……放せって!」

 感情の乏しい光昭の目がいつになくギラギラと輝いて、その瞳の中に燃え盛る嫉妬が見えた。それは小林さんなんて小さな対象にではなく、俺を光昭から引き離す全てのモノに向けての激しい嫉妬の炎だ。
 産まれた時からずっと一緒に居たのに、俺はコイツのことちっともわかってなかった。俺はこの時、初めて幼馴染の異常な俺への執着を知った。

「なんなんだよ、お前マジで意味わかんねぇよ……」

 すっかり変わってしまった幼馴染を前に、俺は「なんで」と「どうして」と「わかんない」を繰り返すしか出来なかった。

 でも本当は、確かに分かっていることもあったんだ。
 コイツは裏表のない性格で、俺に嘘はつかない。
 だから光昭の一生って言葉も、好きって言葉も、冗談でもなんでもなく本気なんだってこと。 
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