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エピローグ

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フラムローゼの一撃によって体表を焼かれ、首のひとつに大火傷を負った厄災竜。しかし、大した時間も経っていないというのに、じゅくじゅくと火傷のあとが蠢き、新たな肉体を形成していた。

「再生能力があるのですね……」

「まあそういうわけだ、フラム。個々の能力を試したいところだったけど、今回は最初から全開でいくぞ」

「ええ、……ですわね?」

「ああ、だ」

「ん! たのしみー!」

「了解です!」

「……なあ、ケイタ。本当にあれを――」

 カティアがなにか言いかけていたが、まるで聞こえていなかったかのようにケイタは次の言葉を発した。

「いくぞみんな! ユナイト・フォーメェェェーション!!」

「……「「「了解!」」」」

 若干不満そうな声がひとつあったが、四人の声がひとつに重なる。
 その瞬間、ケイタの搭乗する魔動人形が、再び鳥の形へと変じ、直上へと飛び立つ。
 ある程度の高度に達した魔動人形は静止し、その中心からは、球状の力場のようなものが形成され、大きく広がっていく。

 それに続くように他の四機の魔動人形も、その形状を変えながら、力場へと飛び込んだ。
 鳥の姿から人の姿へと変わったときも驚いたが、今度はもっと複雑な形状へと姿を変えたことに、アノレスは目を丸くする。しかも、力場へと飛び込んだすべての魔動人形が、だ。

「あれは……腕に、足? 身体の一部なのか?」

 アノレスには、姿を変えた魔動人形が、それぞれ四肢のような形になったように見えた。
 それは間違いではなく、ケイタの魔動人形を中心とし、それぞれが右腕、左腕、右足、左足の位置へと移動し、バチバチと火花を散らしながら接続される。
 どういう理屈で動いているのかと不思議に思ったが、この力場の中では重力を無視したような動きができるようだ。

 最後に、顔と思わしき部分が胴体からか飛び出してきて、そこに兜のようなものが、どこからか飛んできて装着される。
 人の姿をした、巨大な魔動人形が今ここに顕現した瞬間だった。

「五つの心が重なるとき、無限の力を発揮しますっ!」

「わたくしたちの前には、どんな悪も存在することは叶いませんわ!」

「ぜったいしょーり! かんぺきぱわー!」

「や、闇を滅する剣。そ、その名は……」

「悪鬼必滅――完成! ガーディアン・オブ・アルズガルドォォォーーッ!」

 ひとりひとり謎の掛け声(?)を叫びながら、ビシッとポーズを決めたあと、大きく地面を揺らしながら着地する巨大な魔動人形。
 ただでさえ普通の倍近くあった魔動人形が五機も組合わさったのだ。厄災竜には及ばないとはいえ、その大きさはかなりのものだった。

「……なあケイタ、この台詞、どうしても言わなきゃダメなのか?」

「なに言ってんだカティア。様式美ってやつだよ。それに、気合いも入るだろう?」

「そうだよカーちゃん。かっこいいじゃん!」

「いや、リンはわかるけどよ……シルヴィアとフラムローゼはなんでそんなにノリノリなんだよ」

「ケイタさんの望みは私の望みですから」

「同じくですわ!」

「……そうかよ。聞いたオレがバカだったよ」

「もう、カティアさんったら……素直じゃないんですから。私、知ってるんですからね。先日、カティアさんがケイタさんの外出中に部屋に忍び込んで、ベッドの匂いを――」

「バ、ババババッカヤロウ! い、今はそんなこと関係ないだろうが!」

「リンもケーくんのにおいすきー」

「えーと、その、カティア。べつに忍び込まなくたって、いつでも気軽に来てくれていいからな……?」

「いっそ罵ってくれチクショウ……!」

 アノレスはあんぐりと口を開けたまま、固まっていた。
 魔動人形が合体するなどと、聞いたこともなければ見たこともない。実際に目の当たりにした今でも、信じられずにいる。
 それに、まるで家で寛いでいるかのような、緊張感がまるでない会話も合わさり、呆れや驚愕、戸惑いや葛藤など、複雑な感情が入り混じる。そんな極限状態に陥ったアノレスが思考を放棄してしまうのも、無理はないだろう。
 かろうじて理解できたのは、この魔動人形が『この世界の守護者ガーディアン・オブ・アルズガルド』と名乗ったことだけだった。

 しかし、感情が迷子になったアノレスをよそに、
『怒り』というたったひとつの感情をあらわにする者が一人いた……いや、一匹と言うべきだろうか。

「「「「「ガァァァァッ!!」」」」」

 完全に傷が癒えた厄災竜が、五つの首を扇状に広げ、威嚇するかのように吼える。その矛先は、当然、自身に傷をつけた者たちだ。
 
「――へっ、かかってこいよデカブツ。お前みたいなヤツへの対策は、死ぬほど考えてきたんだ」

 普通の人間なら失神してしまうほどの凄まじい気迫、信じがたい圧力を放つ厄災竜だったが、ケイタは怖じ気づいたりはしなかった。
 魔動人形の拳を胸の前で合わせ、気合い充分といった様子で、厄災竜を迎え撃つ体制をとる。

「いくぞみんなっ! 俺たちの力で、この世界を守るんだ!」

 ――国の存亡を賭けた戦いが、今ここに幕を開けた。
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