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【三章】技術大国プラセリア
50.反撃作戦
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掛け声とともに俺たちは素早く行動を開始した。
カティアはバイクに跨がり、巨人と対峙しているフラムたちの元へと向かう。
シルヴィアも自らの魔動人形、ワルキューレを起動させ、俺を守るように陣取った。
俺はスマホを操作して、アイテムボックスに入っていた武装をシルバライザーへと装着する。
見た目はよくある円筒状のバズーカだが、威力を追求するために可能な限り大型化している。
そこにゴテゴテといろいろなパーツを継ぎ接ぎしているため、重量は相当なものだろう。
「うーん……」
シルバライザーの線が細いこともあり、武装の大きさがより際立って見える。
端的に言えばカッコ悪い。
「やっぱこういうの持たせるならもっとゴツい機体のほうが似合うな……サイクロプスだったらもっと様になっただろうに」
完成したシルエットのアンバランスさに、ぽろっと愚痴がこぼれてしまう。
やはり自分が手掛けた魔動人形には、少なからずの愛着がある。自分の未熟さゆえにサイクロプスをスクラップ同然にしてしまったことに罪悪感を感じながらも、俺はシルバライザーを起動させる。
それと同時に、サイクロプスは粒子となって辺りへと散っていった。
形を維持していた魔力が完全に尽きたのだろう。俺は心の中でサイクロプスに礼を言いながら、シルバライザーの計器へと目を落とす。
――だが
「――うわっとと!」
やはりというか、起動させた瞬間からバランスを崩してしまった。
武装の重さを支えきれずに、シルバライザーは膝を突く。そして銃身を杖のように使うことで、なんとか支えている状態だ。
「くっ、まあやっぱりそうなるか……そうだ、この状態で移動できるか試してみよう」
シルバライザーを操り方向転換を試みるも、ずりずりと地面を削りながら僅かに動かすのがやっとだった。
……うん、向きを変えられなくはない。だけど時間がかかりすぎる。こりゃ射線上に敵が来るように誘導してもらわないと厳しいかもな。
とはいえそれを伝えてる時間はない。フラムなら俺の意図を察してくれると信じて、遠くに見える巨人の方向へと銃口を持ち上げ、チャージを開始した。
「よし……! シルヴィア、今から魔力を充填する。臨機応変に援護を頼む!」
「はい、任せてください! ……それにしても大きい武装ですね。魔動人形が携行できるものの中では最大かもしれません。なんて名前なんですか?」
え、名前?
名前かぁ、全然考えてなかったな。うーん……でかいバズーカだから、『ハイパービッグバズーカ』とか?
いやちょっとダサいか。じゃあ和名っぽく――
「魔轟砲……かな?」
「魔轟砲……そんな武装があるんですね。初めて知りました。やはりプラセリアの技術力は世界随一なのですね」
いや俺のオリジナルなんだけどね。まあ、シルヴィアはイマジナリークラフターの存在を知らないから、そう思って当然だろうけど。
……などと会話している間も魔力の充填は進んでいたのだが、予想以上に遅い。計器に目をやると、二パーセントしか魔力が充填されていなかった。
だというのに、シルバライザーの魔力量が半分近くまで低下している。
「くっ、これは……まずいな」
魔轟砲は、魔動人形から直接魔力を供給して使用する武装だ。
二パーセントで半分持っていかれたとなると、百パーセントチャージするならば単純計算で、シルバライザー二十五機分の魔力量が必要になる。
魔動人形の魔力はコアが健在なら自然回復するものの、それも時間がかかる。二十五回も全快させるとなると、かかる時間は数分じゃ済まないだろう。
「――任せてください。準備が整うまで、私がケイタさんの盾になります。だから、ケイタさんは射撃に集中していてください」
「シルヴィア……」
困惑気味な俺の感情を読み取ったのだろう。自分がフォローするから大丈夫だと、俺の気持ちを落ち着かせるためシルヴィアはそう告げた。
そうだ。焦るな……まだ敵はこちらに気付いてもいない。時間はまだある。
※
それからは無言のまま、緊張感を保ちつつおおよそ三分の時が過ぎた。
現在魔轟砲のチャージ率は十五パーセントほど。くそっ、ダメだ……!
見通しが甘すぎた、この調子じゃあと十数分はかかるぞ!
――そんな俺の焦りを嘲笑うかのように、その時は訪れた。
カティアがフラムたちへ、なんとか作戦を伝えてくれたのだろう。遠くに見えていた巨人の姿が、徐々に近付いてくるのがわかる。
――まずいまずいまずい!
十五パーセントの出力で足りるのか?
そもそもちゃんと当てられるのか?
さまざまな不安が蔦植物のように俺の心臓にまとわりつき、ぎりりと締め付ける。
ずくずくと鈍い痛みを感じながらも、ここで集中を途切れさせるわけにはいかない。
俺は照準の先に見える巨人を睨み付け、息を整える。
ズシン、ズシンとこちらへ向けて足を運ぶ巨人。近くではフラムたちがいまだ交戦中で、うまく誘導しているのであろう。
やがて、巨人が射程圏内へと入る。
フラムのガレオニクスの姿も確認できたのだが、その様相にドクンと心臓が跳ね上がる。
「フラムっ……!」
ガレオニクス自慢のマント型の背部ユニットはボロボロで、さらには片腕も失っていた。かなりの損傷具合で、動くのがやっとのようだった。
護衛の二機も同じような状態で、いかにギリギリの戦いをしていたのかが伺える。
よくぞあの化け物相手にここまで持ちこたえてくれたものだ。
「くそっ、これ以上フラムたちに負担はかけられない。こうなったら、限界突破を使うしかないか……?」
限界突破を使用すれば、高速でチャージが可能なはずだ。ただ、今日はすでに一度使ってしまっている。
俺自身の魔力を完全回復させるには少なくとも丸一日の休息が必要だ。魔力が残り少ない現状では、限界突破を使おうものならおそらく数秒で力尽きてしまうだろう。
そう逡巡していたその時、照準越しにふと巨人と目が合った気がした。
カティアはバイクに跨がり、巨人と対峙しているフラムたちの元へと向かう。
シルヴィアも自らの魔動人形、ワルキューレを起動させ、俺を守るように陣取った。
俺はスマホを操作して、アイテムボックスに入っていた武装をシルバライザーへと装着する。
見た目はよくある円筒状のバズーカだが、威力を追求するために可能な限り大型化している。
そこにゴテゴテといろいろなパーツを継ぎ接ぎしているため、重量は相当なものだろう。
「うーん……」
シルバライザーの線が細いこともあり、武装の大きさがより際立って見える。
端的に言えばカッコ悪い。
「やっぱこういうの持たせるならもっとゴツい機体のほうが似合うな……サイクロプスだったらもっと様になっただろうに」
完成したシルエットのアンバランスさに、ぽろっと愚痴がこぼれてしまう。
やはり自分が手掛けた魔動人形には、少なからずの愛着がある。自分の未熟さゆえにサイクロプスをスクラップ同然にしてしまったことに罪悪感を感じながらも、俺はシルバライザーを起動させる。
それと同時に、サイクロプスは粒子となって辺りへと散っていった。
形を維持していた魔力が完全に尽きたのだろう。俺は心の中でサイクロプスに礼を言いながら、シルバライザーの計器へと目を落とす。
――だが
「――うわっとと!」
やはりというか、起動させた瞬間からバランスを崩してしまった。
武装の重さを支えきれずに、シルバライザーは膝を突く。そして銃身を杖のように使うことで、なんとか支えている状態だ。
「くっ、まあやっぱりそうなるか……そうだ、この状態で移動できるか試してみよう」
シルバライザーを操り方向転換を試みるも、ずりずりと地面を削りながら僅かに動かすのがやっとだった。
……うん、向きを変えられなくはない。だけど時間がかかりすぎる。こりゃ射線上に敵が来るように誘導してもらわないと厳しいかもな。
とはいえそれを伝えてる時間はない。フラムなら俺の意図を察してくれると信じて、遠くに見える巨人の方向へと銃口を持ち上げ、チャージを開始した。
「よし……! シルヴィア、今から魔力を充填する。臨機応変に援護を頼む!」
「はい、任せてください! ……それにしても大きい武装ですね。魔動人形が携行できるものの中では最大かもしれません。なんて名前なんですか?」
え、名前?
名前かぁ、全然考えてなかったな。うーん……でかいバズーカだから、『ハイパービッグバズーカ』とか?
いやちょっとダサいか。じゃあ和名っぽく――
「魔轟砲……かな?」
「魔轟砲……そんな武装があるんですね。初めて知りました。やはりプラセリアの技術力は世界随一なのですね」
いや俺のオリジナルなんだけどね。まあ、シルヴィアはイマジナリークラフターの存在を知らないから、そう思って当然だろうけど。
……などと会話している間も魔力の充填は進んでいたのだが、予想以上に遅い。計器に目をやると、二パーセントしか魔力が充填されていなかった。
だというのに、シルバライザーの魔力量が半分近くまで低下している。
「くっ、これは……まずいな」
魔轟砲は、魔動人形から直接魔力を供給して使用する武装だ。
二パーセントで半分持っていかれたとなると、百パーセントチャージするならば単純計算で、シルバライザー二十五機分の魔力量が必要になる。
魔動人形の魔力はコアが健在なら自然回復するものの、それも時間がかかる。二十五回も全快させるとなると、かかる時間は数分じゃ済まないだろう。
「――任せてください。準備が整うまで、私がケイタさんの盾になります。だから、ケイタさんは射撃に集中していてください」
「シルヴィア……」
困惑気味な俺の感情を読み取ったのだろう。自分がフォローするから大丈夫だと、俺の気持ちを落ち着かせるためシルヴィアはそう告げた。
そうだ。焦るな……まだ敵はこちらに気付いてもいない。時間はまだある。
※
それからは無言のまま、緊張感を保ちつつおおよそ三分の時が過ぎた。
現在魔轟砲のチャージ率は十五パーセントほど。くそっ、ダメだ……!
見通しが甘すぎた、この調子じゃあと十数分はかかるぞ!
――そんな俺の焦りを嘲笑うかのように、その時は訪れた。
カティアがフラムたちへ、なんとか作戦を伝えてくれたのだろう。遠くに見えていた巨人の姿が、徐々に近付いてくるのがわかる。
――まずいまずいまずい!
十五パーセントの出力で足りるのか?
そもそもちゃんと当てられるのか?
さまざまな不安が蔦植物のように俺の心臓にまとわりつき、ぎりりと締め付ける。
ずくずくと鈍い痛みを感じながらも、ここで集中を途切れさせるわけにはいかない。
俺は照準の先に見える巨人を睨み付け、息を整える。
ズシン、ズシンとこちらへ向けて足を運ぶ巨人。近くではフラムたちがいまだ交戦中で、うまく誘導しているのであろう。
やがて、巨人が射程圏内へと入る。
フラムのガレオニクスの姿も確認できたのだが、その様相にドクンと心臓が跳ね上がる。
「フラムっ……!」
ガレオニクス自慢のマント型の背部ユニットはボロボロで、さらには片腕も失っていた。かなりの損傷具合で、動くのがやっとのようだった。
護衛の二機も同じような状態で、いかにギリギリの戦いをしていたのかが伺える。
よくぞあの化け物相手にここまで持ちこたえてくれたものだ。
「くそっ、これ以上フラムたちに負担はかけられない。こうなったら、限界突破を使うしかないか……?」
限界突破を使用すれば、高速でチャージが可能なはずだ。ただ、今日はすでに一度使ってしまっている。
俺自身の魔力を完全回復させるには少なくとも丸一日の休息が必要だ。魔力が残り少ない現状では、限界突破を使おうものならおそらく数秒で力尽きてしまうだろう。
そう逡巡していたその時、照準越しにふと巨人と目が合った気がした。
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