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【三章】技術大国プラセリア
44.悪戦苦闘
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黒い巨人は何を考えているのか、微動だにせずにぼうっと突っ立っているたけだった。
それは余裕の現れなのか、それとも他の理由があるのか。俺には知る由もないが、今は絶好のチャンスだと言える。
ちらりと先程狙われていた砲台の方を見ると、既に充填が完了し、第二射を放とうとしていた。
「――あの砲台の砲撃と同時に動きましょう。アイシャさんはこの場に留まり射撃で援護しつつ、可能であればあっちの砲台も破壊されないよう気を配ってください」
「あいよ、任せな!」
そして間もなく、激しい閃光とともに第二射が放たれた。その弾道から、狙いは頭部だということがわかる。
その判断は正しい。巨人の頭部にはエクスドミネーター本体が露出している。核であるエクスドミネーターを破壊すれば、巨人はたちまち崩れ落ちるだろう。
しかし、カティア曰く、エクスドミネーターにはイマジナリークラフターと一緒にリンが囚われている。もしあの砲撃が直撃しようものなら、いかなる魔動人形であろうと破壊されてしまうだろう。
「あっ……!」
今さらながらそのことに気が付いた俺は、じっと砲撃の軌跡を目で追ってしまっていた。
目を見開きながら砲撃を目で追っていると、着弾する間際、巨人の左腕が盾のように変形した。そのまま左腕を前に突き出すと、障壁のようなものが複数出現し、いとも容易く砲撃を防ぎきったのだった。
幸か不幸か、リンに被害が及ぶことはなかったが、あれだけの威力の攻撃が容易く防がれてしまうという証明にもなった。
「坊主! なにをボケっとしとる!」
「――っ! すみませんっ!」
どんだけ馬鹿なんだ俺は。仕掛けるタイミングを自分で提案しておいて、言った張本人がボケっとしてるだなんて。
俺は慌ててスラスターを噴かし、隊列の最後尾につく。
頭の中では、接近したあとどうやって切り崩すか、それだけを繰り返して考えていた。
反撃があるなどと、微塵も思わずに――
「マズイ……! 皆、俺の後ろに隠れろ!」
「……え?」
ゴリさんの声により思考の海から抜け出し、何事かと巨人の姿をよく見ると、大きな体のあちこちから小さく細長い銃身のようなものがいくつも出現しており、その銃口をあちこちへと向けていた。
小さいといっても、巨人の縮尺からして小さく見えるだけで、実際のサイズは魔動人形が携帯するライフルの比ではない。つまり、ひとつひとつが必殺の威力を秘めている。
そんなものが数えるのも億劫なほど出現している様を目前にすると、否応なしに恐怖を覚え、一瞬で背筋が凍りついてしまう。この場にいるほぼ全員が同じ感覚に陥っただろう。
冷や汗を拭っている暇などない。ゴリさんの操縦するヘビーディックが大盾を構えたので、すくまさま俺たちはその影へと身を隠した。
次の瞬間、激しい爆音と閃光が連続する。数多の銃口から放たれた魔力弾が大地を抉り、そしてさっきまで共に戦っていた魔動人形たちもかなりの数が爆発に巻き込まれている。
俺たちはゴリさんの防御力に頼ることで事なきを得ていたが、辺りは大小様々なクレーターや大破した魔動人形など、攻撃が止んだあとには惨憺たる光景が広がっていた。
「――アイシャさん!」
その光景の中にはアイシャさんの駆るカタラクト・トーラスも含まれていた。機動力のない機体なので、絨毯爆撃に等しいような量の射撃を完全回避することは困難だったのだろう。
機体の原型はかろうじてとどめているものの、あちこちが破損しているらしく、各部から火花が散り黒煙を吹き出している。
「アイシャさん、アイシャさんっ! 返事をしてください!」
「いけない……ケイタ、ここから離れろっ!!」
「え……? うわっ……!」
再びのゴリさんの叫びと共に、機体が揺れた。俺はヘビーディックの後ろに隠れていたのだが、その場から押し出されてしまったのだ。
そしてそれを実行したのは他でもないゴリさん自身だった。
「ゴリさん!? どうして……?」
ゴリさんの行動の理由がわからないまま、ヘビーディックへと視線を送った次の瞬間、ヘビーディックは魔力の光に飲み込まれたのだった。
それは余裕の現れなのか、それとも他の理由があるのか。俺には知る由もないが、今は絶好のチャンスだと言える。
ちらりと先程狙われていた砲台の方を見ると、既に充填が完了し、第二射を放とうとしていた。
「――あの砲台の砲撃と同時に動きましょう。アイシャさんはこの場に留まり射撃で援護しつつ、可能であればあっちの砲台も破壊されないよう気を配ってください」
「あいよ、任せな!」
そして間もなく、激しい閃光とともに第二射が放たれた。その弾道から、狙いは頭部だということがわかる。
その判断は正しい。巨人の頭部にはエクスドミネーター本体が露出している。核であるエクスドミネーターを破壊すれば、巨人はたちまち崩れ落ちるだろう。
しかし、カティア曰く、エクスドミネーターにはイマジナリークラフターと一緒にリンが囚われている。もしあの砲撃が直撃しようものなら、いかなる魔動人形であろうと破壊されてしまうだろう。
「あっ……!」
今さらながらそのことに気が付いた俺は、じっと砲撃の軌跡を目で追ってしまっていた。
目を見開きながら砲撃を目で追っていると、着弾する間際、巨人の左腕が盾のように変形した。そのまま左腕を前に突き出すと、障壁のようなものが複数出現し、いとも容易く砲撃を防ぎきったのだった。
幸か不幸か、リンに被害が及ぶことはなかったが、あれだけの威力の攻撃が容易く防がれてしまうという証明にもなった。
「坊主! なにをボケっとしとる!」
「――っ! すみませんっ!」
どんだけ馬鹿なんだ俺は。仕掛けるタイミングを自分で提案しておいて、言った張本人がボケっとしてるだなんて。
俺は慌ててスラスターを噴かし、隊列の最後尾につく。
頭の中では、接近したあとどうやって切り崩すか、それだけを繰り返して考えていた。
反撃があるなどと、微塵も思わずに――
「マズイ……! 皆、俺の後ろに隠れろ!」
「……え?」
ゴリさんの声により思考の海から抜け出し、何事かと巨人の姿をよく見ると、大きな体のあちこちから小さく細長い銃身のようなものがいくつも出現しており、その銃口をあちこちへと向けていた。
小さいといっても、巨人の縮尺からして小さく見えるだけで、実際のサイズは魔動人形が携帯するライフルの比ではない。つまり、ひとつひとつが必殺の威力を秘めている。
そんなものが数えるのも億劫なほど出現している様を目前にすると、否応なしに恐怖を覚え、一瞬で背筋が凍りついてしまう。この場にいるほぼ全員が同じ感覚に陥っただろう。
冷や汗を拭っている暇などない。ゴリさんの操縦するヘビーディックが大盾を構えたので、すくまさま俺たちはその影へと身を隠した。
次の瞬間、激しい爆音と閃光が連続する。数多の銃口から放たれた魔力弾が大地を抉り、そしてさっきまで共に戦っていた魔動人形たちもかなりの数が爆発に巻き込まれている。
俺たちはゴリさんの防御力に頼ることで事なきを得ていたが、辺りは大小様々なクレーターや大破した魔動人形など、攻撃が止んだあとには惨憺たる光景が広がっていた。
「――アイシャさん!」
その光景の中にはアイシャさんの駆るカタラクト・トーラスも含まれていた。機動力のない機体なので、絨毯爆撃に等しいような量の射撃を完全回避することは困難だったのだろう。
機体の原型はかろうじてとどめているものの、あちこちが破損しているらしく、各部から火花が散り黒煙を吹き出している。
「アイシャさん、アイシャさんっ! 返事をしてください!」
「いけない……ケイタ、ここから離れろっ!!」
「え……? うわっ……!」
再びのゴリさんの叫びと共に、機体が揺れた。俺はヘビーディックの後ろに隠れていたのだが、その場から押し出されてしまったのだ。
そしてそれを実行したのは他でもないゴリさん自身だった。
「ゴリさん!? どうして……?」
ゴリさんの行動の理由がわからないまま、ヘビーディックへと視線を送った次の瞬間、ヘビーディックは魔力の光に飲み込まれたのだった。
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