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【三章】技術大国プラセリア
41.共同作戦
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「――――コホン。あー……その、わりぃ、オレとしたことが情けねぇとこ見せちまったな」
時間にして二、三分ぐらいだろうか。しばらくして完全に落ち着いたカティアは、俺の胸元から離れ、少しばかり顔を赤らめてそう言った。
どうやらいつもの彼女に戻ったようだ。
「はは、俺の胸でよければいつでも貸すよ」
「あ、あんなのは今回限りだ……! まあ……サンキューなケイタ。その……改めて頼む。リンを取り戻すのに力を貸してくれ」
「もちろんだ。それで……リンがどこにいるかわかったのか?」
「ケイタはあの黒い巨人を見たか?」
「見たもなにも、あれだけデカければ嫌でも目に入るよ」
なんなら遠く離れた今でも見える。ちょっとした山ぐらい背が高いので、どこにいようが否が応にも目立つのだ。
しかし、あの化け物とリンの行方とが、なにか関係があるのだろうかと疑問に思う。だがカティアのことだ、このタイミングで意味の無いことなど言うはずもない。
そこまで考えると、一つの結論にたどり着く。
「……まさか、アレにリンが……?」
俺の問いにカティアは小さく頷いた。嫌な予感が当たってしまったらしい。
「あの巨人はGODS社長であるガオウの乗る白金等級魔動人形、エクスドミネーターだ。その特異能力によって、リンはイマジナリークラフターごと吸収されちまった」
「じゃあ、あのデカイのは魔動人形だってのか!? あんな見た目だから、俺はてっきり怪物の類いだと思ってたんだけど……いや、そうか。あれはイマジナリークラフターの機能を利用しているんだな」
イマジナリークラフターの機能を体感した俺だからこそはっきりとわかる。あの泥のような形状は、形成前の素材の状態に酷似しているのだ。
「ご明察。理屈はさっぱりわからねぇが、何体もの魔動人形を取り込んで今のあの大きさになったってワケさ。ガオウが何を考えてどこに向かってるのかは知らねぇけど、リンを助けるにはアレに立ち向かわなきゃならねぇんだ」
「マジかよ……いや、でも倒す必要はないのか」
要はリンさえ救出できればいい。
あの巨人の姿はイマジナリークラフターの機能を利用して形成したもののようだし、リンさえ引き離してしまえば維持することはできなくなるだろう。あんなのとまともにやり合う必要はない。
「そうだな。リンさえ救えばオレらの勝ちだ。だが、問題は接近できるかどうかだな」
「ああ、あのデカさだから動きは鈍そうだけど、どんな防衛手段を持ってるかわからないしな」
「……それともう一つ。視界を確保するために本体であるエクスドミネーターは外部に露出しているはずだが、それが巨人の頭部付近だった場合、高すぎて魔動人形でも届くかどうか」
「それなら問題ない。俺の魔動人形も進化しているんだ。こないだの戦いで見た装備をパクっ……着想を得て作った新装備があるからな。問題は街中で魔動人形を使っても大丈夫かどうかなんだけど……ん?」
急に大きな物音がしたので辺りを見回すと、様々な場所から魔動人形が続々と現れて、あの巨人の元へと向かっている。
その数は十、二十と、時間を経るごとに増え続けていた。
「あれは……?」
「あれはGODS側の魔動人形じゃないな……おそらく地下の連中だろう。まああんなデカイのが歩き回ってるんだ、地下で暮らしている人たちにとっちゃ気が気でないだろうよ」
カティアの言う通りだ。もし自分が地下にいて、あんなのが直上を歩いているのを想像すると、恐ろしくてしかたがない。
それこそ命に関わるのだ。生きるために得体の知れない存在に対処しようとするのは当然の判断だろう。
「この状況……これはラッキーだな。これなら魔動人形を起動させても大丈夫そうだ」
「そうだな、本来なら取り締まる側であるGODSの連中も未だ混乱してるみてえだし、問題ないだろ」
「よし、じゃあ俺はサイクロプスであの巨人を追うよ。カティアはゆっくり休んでいてくれ」
「バカ。お前一人に任せっきりにできるかよ。……つっても魔動人形がないんでやれることは限られているだろうがな。オレのことは心配ご無用。体だってこのとおり……平気さ」
カティアは俺の前で準備運動のような動作をし、平気なことをアピールした。
けっこうな重傷だったように思うが、一連の動作には淀みがなく、本当に問題はなさそうだった。ポーションさまさまだな。
「――わかった。無茶はするなよ?」
「ハッ! その言葉、そっくりそのままお返しするぜ」
そう言ってカティアは不敵な笑みを浮かべる。俺の知るいつも通りのカティアの姿に、どこか頼もしさを感じた。
行くと決まれば時間が惜しい。俺たちはすぐにお互いの目的へ向かって走り出した。
「待ってろよ、リン。人形接続……!」
時間にして二、三分ぐらいだろうか。しばらくして完全に落ち着いたカティアは、俺の胸元から離れ、少しばかり顔を赤らめてそう言った。
どうやらいつもの彼女に戻ったようだ。
「はは、俺の胸でよければいつでも貸すよ」
「あ、あんなのは今回限りだ……! まあ……サンキューなケイタ。その……改めて頼む。リンを取り戻すのに力を貸してくれ」
「もちろんだ。それで……リンがどこにいるかわかったのか?」
「ケイタはあの黒い巨人を見たか?」
「見たもなにも、あれだけデカければ嫌でも目に入るよ」
なんなら遠く離れた今でも見える。ちょっとした山ぐらい背が高いので、どこにいようが否が応にも目立つのだ。
しかし、あの化け物とリンの行方とが、なにか関係があるのだろうかと疑問に思う。だがカティアのことだ、このタイミングで意味の無いことなど言うはずもない。
そこまで考えると、一つの結論にたどり着く。
「……まさか、アレにリンが……?」
俺の問いにカティアは小さく頷いた。嫌な予感が当たってしまったらしい。
「あの巨人はGODS社長であるガオウの乗る白金等級魔動人形、エクスドミネーターだ。その特異能力によって、リンはイマジナリークラフターごと吸収されちまった」
「じゃあ、あのデカイのは魔動人形だってのか!? あんな見た目だから、俺はてっきり怪物の類いだと思ってたんだけど……いや、そうか。あれはイマジナリークラフターの機能を利用しているんだな」
イマジナリークラフターの機能を体感した俺だからこそはっきりとわかる。あの泥のような形状は、形成前の素材の状態に酷似しているのだ。
「ご明察。理屈はさっぱりわからねぇが、何体もの魔動人形を取り込んで今のあの大きさになったってワケさ。ガオウが何を考えてどこに向かってるのかは知らねぇけど、リンを助けるにはアレに立ち向かわなきゃならねぇんだ」
「マジかよ……いや、でも倒す必要はないのか」
要はリンさえ救出できればいい。
あの巨人の姿はイマジナリークラフターの機能を利用して形成したもののようだし、リンさえ引き離してしまえば維持することはできなくなるだろう。あんなのとまともにやり合う必要はない。
「そうだな。リンさえ救えばオレらの勝ちだ。だが、問題は接近できるかどうかだな」
「ああ、あのデカさだから動きは鈍そうだけど、どんな防衛手段を持ってるかわからないしな」
「……それともう一つ。視界を確保するために本体であるエクスドミネーターは外部に露出しているはずだが、それが巨人の頭部付近だった場合、高すぎて魔動人形でも届くかどうか」
「それなら問題ない。俺の魔動人形も進化しているんだ。こないだの戦いで見た装備をパクっ……着想を得て作った新装備があるからな。問題は街中で魔動人形を使っても大丈夫かどうかなんだけど……ん?」
急に大きな物音がしたので辺りを見回すと、様々な場所から魔動人形が続々と現れて、あの巨人の元へと向かっている。
その数は十、二十と、時間を経るごとに増え続けていた。
「あれは……?」
「あれはGODS側の魔動人形じゃないな……おそらく地下の連中だろう。まああんなデカイのが歩き回ってるんだ、地下で暮らしている人たちにとっちゃ気が気でないだろうよ」
カティアの言う通りだ。もし自分が地下にいて、あんなのが直上を歩いているのを想像すると、恐ろしくてしかたがない。
それこそ命に関わるのだ。生きるために得体の知れない存在に対処しようとするのは当然の判断だろう。
「この状況……これはラッキーだな。これなら魔動人形を起動させても大丈夫そうだ」
「そうだな、本来なら取り締まる側であるGODSの連中も未だ混乱してるみてえだし、問題ないだろ」
「よし、じゃあ俺はサイクロプスであの巨人を追うよ。カティアはゆっくり休んでいてくれ」
「バカ。お前一人に任せっきりにできるかよ。……つっても魔動人形がないんでやれることは限られているだろうがな。オレのことは心配ご無用。体だってこのとおり……平気さ」
カティアは俺の前で準備運動のような動作をし、平気なことをアピールした。
けっこうな重傷だったように思うが、一連の動作には淀みがなく、本当に問題はなさそうだった。ポーションさまさまだな。
「――わかった。無茶はするなよ?」
「ハッ! その言葉、そっくりそのままお返しするぜ」
そう言ってカティアは不敵な笑みを浮かべる。俺の知るいつも通りのカティアの姿に、どこか頼もしさを感じた。
行くと決まれば時間が惜しい。俺たちはすぐにお互いの目的へ向かって走り出した。
「待ってろよ、リン。人形接続……!」
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