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【三章】技術大国プラセリア

38.支配者

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「さて……茶番が過ぎたか。そろそろ頃合いだろう」

 ガオウはイマジナリークラフターの状態を確認するため、リンへと近寄った。
 そして、ガオウはイマジナリークラフターが稼働しているのを確認すると、満足そうな笑みを浮かべて、誰もいない開けた場所へと移動する。

「……さて、諸君らは今ここで新たな神の誕生を目撃するのだ。光栄に思うがいい」

「神……だと?」

 ガオウの言葉が何を意味するのか、カティアには皆目見当かつかなかった。
 この世界には『神』など実在しない。過去に、祈り続けても助けてなどくれなかった神の存在なぞ、カティアはこれっぽっちも信じてはいなかった。

「気でも狂ったのか……? この世界に神様なんていやしねぇんだよ!」

「そう、神はいない……だから我輩がなるのだ。この世を支配する神にな」

 ガオウはいつの間にかアーティファクトを片手に持っており、それを天へと突き上げる。
 そのアーティファクトの外観はやや暗めの銀色。色味は銀等級に近いが、その箱の装飾は実に華美であった。

 それは、紛れもない『白金等級最強』たる証。

 ガオウが、GODSが今の地位を手に入れるに至らしめた、最強のクラスの魔動人形。

 その名も――――

「『人形接続ドールコネクト』、エクスドミネーター!」

 ガオウが起動術式を唱えると、広い空間に一体の魔動人形が顕現する。
 
 漆黒の装甲に覆われた白金等級の魔動人形、エクスドミネーター。その両手には武装の類いは持っておらず、かといって他の部位に装着しているわけでもない。

 装甲は薄く、必要最低限しか備わっていない。それ故に全体的にシルエットが細い。一見すると骸骨のようにも見える。

 そこまで脅威は感じないが、どこか独特の威圧感を放つ機体だった。

「ガオウ社長!? こ、こんな場所で魔動人形を起動されるとは、いったいどうされたのですか……!?」

 屋内でガオウが魔動人形を起動させたので、同じ部屋にいる衛兵たちは焦っていた。今、この場に誰かが搭乗した魔動人形があるのは、生身の自分たちにとっては非常に危険な状況だったからだ。

 元々、起動状態の魔動人形を飾っているような部屋なので、強度や広さは問題がないのだが、目の前に魔動人形が立っていることに対しての恐怖心とは関係がない。
 魔動人形が一歩踏み出しただけで命を落としかねないのだから、平静でいられないのも致し方ないだろう。

 だが、命令を無視してカティアの拘束を解くわけにもいかず、怯えながらもその場に留まっていた。

「――このエクスドミネーターはな、今のままでは性能としては金等級にも劣る。だが、それ故に特異な能力を持つのだ。それを見せてやろう」

 エクスドミネーターはその場に屈み、リンが座るイマジナリークラフターへとゆっくり手を伸ばす。

「――っ! 何をするつもりだっ! やめろ……やめろォォォッ!!」

 カティアの叫びも虚しく、エクスドミネーターの掌からは複数のケーブルが触手のようにうねりながら、リンとイマジナリークラフターへ向かって伸びていく。
 それは数秒のうちに全てを包み込み、直径二メートル程度の黒い球体となり、エクスドミネーターの手中に収まる。

「――『支配ドミネイト』」

 ガオウがそう宣言し、球体をエクスドミネーターの腹部なや当てると、まるで溶け合うかのように、球体はずぶずぶと装甲へ埋まっていく。
 
 これこそが、エクスドミネーターの持つ特殊機能『支配』。

 触れたものを自身へと取り込み、取り込んだものが持つ能力や機能を行使することが可能となる。欠点としては、この能力の使用には数秒の時間を要するので、戦闘中に使うのが困難であることだ。
 しかし、今この場においては邪魔する者はいない。無抵抗な子供一人と、装置一つを取り込むぐらい、他愛がないことだった。 
 
「どれ……試してみるか」

 支配を終えたエクスドミネーターは立ち上がり、周囲に配置されていた魔動人形へと歩み寄る。
 そのうちの一体の頭部を掴み、先と同じようにケーブルを這わせる。

 すると、あろうことか支配された魔動人形が溶けだしたのだった。しばらくすると、魔動人形だったものは、蠢く黒い泥のような形状へと変化してしまう。
 しかし泥のようでありながら、不思議と崩れ落ちることはなく、人の形を保っており、強烈な違和感を覚える。

 だが、次の瞬間に黒い泥はエクスドミネーターの右腕へと収束し、巨大な腕の形をとる。

「フフ――ハハハ! 素晴らしい! 素晴らしいぞこれは! やはり我輩が睨んだとおりだ、この力は神に匹敵するぞ!」

 ガオウはエクスドミネーターの能力とイマジナリークラフターの機能を掛け合わせ、触れた物を支配するだけでなく、自在に変形させ、操る能力を得たのだ。
 本来ならば対象の一部分だけを移植する程度の能力だったが、魔動人形に使われる素材を変形させることができるという、イマジナリークラフターの規格外の機能を手にしたことで、対魔動人形においては破格の性能を手に入れた。

 魔動人形の強さが戦いの勝敗を決めるこの世界においては、まさに『神』に等しい能力だ。

「ハハハハハハッ!! いい、いいぞ! これならばこの世界を我が手にするなど容易いことだ!」

 ガオウの高笑いと共に、泥の腕はこの部屋に配置されている魔動人形を次々と飲み込み、その大きさを増していった。
 次第に、泥の腕は部屋の中には収まりきらないほど肥大化し、周りにあった柱などを次々と破壊していく。

「ひいっ! へ、部屋が崩れる……! 逃げろ、逃げろぉっ!」

 崩壊しつつあるこの空間に恐れをなし、衛兵たちは社長命令よりも自分の命を優先する決断をし、全員がこの場から遁走した。

「おいおい、冗談だろ……」

 衛兵が去ったことで自由の身になるカティアだったが、リンを放っておくわけにもいかない。そう思ってエクスドミネーターへ注視していたのだが、眼前で起きている現象に目を丸くする。

 数多の魔動人形を取り込み、どんどんと膨れ上がる泥の塊。それは腕の形をとっていたが、やがて蠢きながらエクスドミネーターを包み込み、人の形を成していった。

 通常の魔動人形の全長をゆうに超える黒き巨人は、部屋の天井を易々と突き抜け、その余波で柱や壁を破壊し、建物の崩壊を招く。

 あまりにもの圧倒的存在感に、カティアはただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。
 
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