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【二章:閑話】
フラムローゼ回想編
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わたくしはフラムローゼ・アークライト。栄えある三大国家の一つに数えられるアークライト王国の第二王女ですわ。
しかし三大国家とはいったものの……正直国力には大きな差がありますの。
数十の小国をまとめ上げ、実質的に大陸の大半を支配するドグマリオン連合国。統率のとれた圧倒的な兵力を持つ軍隊、そして唯一確認されている伝説等級の魔動人形を擁し、名実ともに世界一の国と言っていいでしょう。
そして技術的な革新が目覚ましいプラセリア共和国。カンパニーと呼ばれる技師が集まる組織がいくつも立ち上げられており、日々覇権を争い合うことで成長し続けている国ですわ。
対する我がアークライト王国は、他二国と比べ領土も狭く、特筆した技術力もなければ軍の統率も劣る……と言わざるを得ません。
仮に戦争になろうものなら間違いなくいの一番に滅ぼされるでしょう。
それでもなぜ三大国家の末席として挙げられているかと言うと、我が国にはアーティファクトが産出される『迷宮』が数多く存在し、多くの優秀な冒険者が世界中から集まるからなのです。
要するに『場所に恵まれていた』、ただそれだけですわ。
恵まれた環境にあぐらをかき、現状に満足し向上心を持たない者がほとんど……将来衰退していくのは目に見えている。
もちろんわたくしは王家の人間として現状をよしとしません。日々我が国を繁栄させるための『鍵』を探していますわ。
そしてある日、偶然にも『鍵』を見つけました。
とある決闘の見届け人として闘技場へと赴いたところ、とんでもないものを見てしまいましたの。
最初は嫌々引き受けた案件でしたわ。……だってただ決闘の勝敗を見届けるだけなんですもの。
しかしいざ始まってみると信じられない奇跡が起きましたわ。なんと、一般等級が銀等級相手に勝利を収めたのです。
等級が一つ上の相手に勝つには、魔動人形の相性が良かったり操縦の腕前に大きな差があればありえなくはない……といった次元の話です。
しかし今回は二つ上の等級相手への勝利……しかも魔動人形の動きは素人同然。
……これが何を意味するかと言うと、単純に人形技師の力が常識を超えていたという事実。
あのプラセリアの最新技術をも凌ぐ可能性すらありましたわ。
「欲しい……! あの力、なんとしてもアークライト王国に欲しいですわっ!」
思わず席から立ち上がり声に出してしまうほどの高揚感を胸に、早速あの魔動人形を作った制作者を呼び出しました。
こうしてわたくしの目の前に現れた男はどう見ても凡庸そのもの……卓越した技術を持つような人物には見えません。
――いえ、人を見た目で判断するのはよくありませんわね。あの魔動人形を作ったのは彼なのは間違いないのだから。
とりあえず王宮へ来てもらい、その実力をわたくしに見せていただきましょう。
王宮専属の人形技師ともなればかなりの地位ですわ。この国の人形技師であれば誰もが憧れるポジションでしょう。
『断るはずがない』そう思っていました。
「――では、単刀直入に言うわ。ケイタ・サガミ、わたくしのものになりなさい!」
「え、嫌なんですけど」
「なっ! なんですって!?」
即答!? ど、どどどういうことですの!?
言い方が抽象的すぎたのかしら……そうね、そうに違いないですわ!
もう少し具体的にお話ししましょう。
「王宮専属の人形技師としてあなたをスカウトしますわ。わたくしの……いいえ、我が国のために働きなさい!」
「お断りします」
「――はぁ!?」
なっ、なんでですの!? 栄誉あることなんですのよ!?
驚きすぎて少々下品な言葉遣いをしてしまったじゃありませんか!
しかし二度にわたり迷う素振りも見せずに断るとは……理由はわかりませんが意思は固いようでしたわ。
口惜しいですが本人の意思に背いて無理矢理働かせるのはわたくしの主義に反します。
この場は潔く諦めるとしましょう。
◇
後日、あの無礼な男ケイタ・サガミに魔動決闘による果たし状を送りつけてやりましたわ。
わたくしが勝てば彼はわたくしのものになります。しかし彼が勝てば国の力で望むものを与える……破格の条件でしょう。
それに王族であることを盾にした申し出なので断ることはできないでしょう。我ながら少々強引な手だとは思いますが、やむを得ませんわ。
それほどまでに彼の力が欲しいのです。
万全を期すため決闘内容は一対一ではなく、二対二のタッグバトルにしましたわ。
わたくしのガレオニクスは出力は高いのですが、燃費が悪いという欠点があるので、それを僚機で補う戦略をとります。
加えてガレオニクスは金等級の魔動人形。彼の方は用意できて銀等級が精々でしょう。
しかし彼には技術力があるので油断はできませんわ。
◇
――そしていよいよ決闘の日を迎えました。
激闘の末結果はわたくしの敗北。十分に策を練り、全力を尽くしたにも関わらず負けてしまいましたわ。
二対一の状況を覆され、ぐうの音も出ないほどの完敗。いっそ清々しい気持ちになりました。
それにしてもあの黄金の輝き……物語で聞いたいにしえの英雄を想起させられましたわ。
もしかしたらあの方はわたくしが思っている以上に大物なのでは……?
仮にそうだったとしても……敗者に語る口はありません。残念ですがこれ以上しつこくお誘いをすることも憚られますし、あの方の力を得ようとは考えないようにしますわ。
王宮に来ないとはいえ、この国に居てくださる限りなにかしらの利益をもたらしてくれることでしょう。
わたくしにできるのはあの方をこの国に留められるよう努力することだけですわね。
――そう思っていたのですが、あの方が報酬として要求してきたものがとんでもないことでした。
「それじゃあこの間と同じでいいっすよ」
「なっ――――そ、それはザッコブ・カマセーヌとの決闘の時と同じ……ということですの?」
「……? はい、そうですけど……」
前と同じ……以前はカマセーヌ家とヴァイシルト家の決闘で、確かあの時は曖昧な定義の報酬だったため、相手側の要求と同等のものを引き渡すことで解決した案件です。
と、いうことは今回の場合はわたくしが要求した報酬と同じ……つまり『俺のものになれ』……ということですの!?
困りますわ困りますわ!
わたくしはまだ殿方とお付き合いしたことすら無いというのに!
――――いえ、約束は約束ですわ。可能な願いは叶えてみせると口にしたからには、頭ごなしに拒否するなんてわたくしのプライドが許しません。
そ、それに……こんなにも情熱的に殿方から求められるのは初めてですから、どこか嬉しい気持ちがあると言うか……。
あの方と共に居れば将来的に国の利益にも繋がるはずですしね。
そうと決まれば即行動ですわ!
まずはお父様に許可をいただかないといけませんわね。もし断られたら家出する覚悟すらありますわ。
◇
それから色々ありましたが、家名を捨て旦那様の元へこの身一つで嫁がせていただきましたわ。
……まあ家名を捨てたといっても、国から旦那様への依頼を繋ぐパイプ役として動くことになりましたし、結局は王国の監視下にあるようなものです。
まったくお父様ったら心配性なんですから。そんな回りくどいマネをするのだったら、最初から反対などしなければよかったのですわ。
しかし……ヴァイシルト家の令嬢も旦那様との婚姻を望んで来た時はさすがに驚きましたわ。
まあ、彼女もなかなか優秀でしたので旦那様の花嫁の一人として認めてあげましょう。
旦那様ほどの男性なら妻の三人や四人ぐらい侍らせるのは当然の権利ですわ。
……でも、旦那様の一番になるのはこのわたくしですけどね!
オーッホッホッホ!
しかし三大国家とはいったものの……正直国力には大きな差がありますの。
数十の小国をまとめ上げ、実質的に大陸の大半を支配するドグマリオン連合国。統率のとれた圧倒的な兵力を持つ軍隊、そして唯一確認されている伝説等級の魔動人形を擁し、名実ともに世界一の国と言っていいでしょう。
そして技術的な革新が目覚ましいプラセリア共和国。カンパニーと呼ばれる技師が集まる組織がいくつも立ち上げられており、日々覇権を争い合うことで成長し続けている国ですわ。
対する我がアークライト王国は、他二国と比べ領土も狭く、特筆した技術力もなければ軍の統率も劣る……と言わざるを得ません。
仮に戦争になろうものなら間違いなくいの一番に滅ぼされるでしょう。
それでもなぜ三大国家の末席として挙げられているかと言うと、我が国にはアーティファクトが産出される『迷宮』が数多く存在し、多くの優秀な冒険者が世界中から集まるからなのです。
要するに『場所に恵まれていた』、ただそれだけですわ。
恵まれた環境にあぐらをかき、現状に満足し向上心を持たない者がほとんど……将来衰退していくのは目に見えている。
もちろんわたくしは王家の人間として現状をよしとしません。日々我が国を繁栄させるための『鍵』を探していますわ。
そしてある日、偶然にも『鍵』を見つけました。
とある決闘の見届け人として闘技場へと赴いたところ、とんでもないものを見てしまいましたの。
最初は嫌々引き受けた案件でしたわ。……だってただ決闘の勝敗を見届けるだけなんですもの。
しかしいざ始まってみると信じられない奇跡が起きましたわ。なんと、一般等級が銀等級相手に勝利を収めたのです。
等級が一つ上の相手に勝つには、魔動人形の相性が良かったり操縦の腕前に大きな差があればありえなくはない……といった次元の話です。
しかし今回は二つ上の等級相手への勝利……しかも魔動人形の動きは素人同然。
……これが何を意味するかと言うと、単純に人形技師の力が常識を超えていたという事実。
あのプラセリアの最新技術をも凌ぐ可能性すらありましたわ。
「欲しい……! あの力、なんとしてもアークライト王国に欲しいですわっ!」
思わず席から立ち上がり声に出してしまうほどの高揚感を胸に、早速あの魔動人形を作った制作者を呼び出しました。
こうしてわたくしの目の前に現れた男はどう見ても凡庸そのもの……卓越した技術を持つような人物には見えません。
――いえ、人を見た目で判断するのはよくありませんわね。あの魔動人形を作ったのは彼なのは間違いないのだから。
とりあえず王宮へ来てもらい、その実力をわたくしに見せていただきましょう。
王宮専属の人形技師ともなればかなりの地位ですわ。この国の人形技師であれば誰もが憧れるポジションでしょう。
『断るはずがない』そう思っていました。
「――では、単刀直入に言うわ。ケイタ・サガミ、わたくしのものになりなさい!」
「え、嫌なんですけど」
「なっ! なんですって!?」
即答!? ど、どどどういうことですの!?
言い方が抽象的すぎたのかしら……そうね、そうに違いないですわ!
もう少し具体的にお話ししましょう。
「王宮専属の人形技師としてあなたをスカウトしますわ。わたくしの……いいえ、我が国のために働きなさい!」
「お断りします」
「――はぁ!?」
なっ、なんでですの!? 栄誉あることなんですのよ!?
驚きすぎて少々下品な言葉遣いをしてしまったじゃありませんか!
しかし二度にわたり迷う素振りも見せずに断るとは……理由はわかりませんが意思は固いようでしたわ。
口惜しいですが本人の意思に背いて無理矢理働かせるのはわたくしの主義に反します。
この場は潔く諦めるとしましょう。
◇
後日、あの無礼な男ケイタ・サガミに魔動決闘による果たし状を送りつけてやりましたわ。
わたくしが勝てば彼はわたくしのものになります。しかし彼が勝てば国の力で望むものを与える……破格の条件でしょう。
それに王族であることを盾にした申し出なので断ることはできないでしょう。我ながら少々強引な手だとは思いますが、やむを得ませんわ。
それほどまでに彼の力が欲しいのです。
万全を期すため決闘内容は一対一ではなく、二対二のタッグバトルにしましたわ。
わたくしのガレオニクスは出力は高いのですが、燃費が悪いという欠点があるので、それを僚機で補う戦略をとります。
加えてガレオニクスは金等級の魔動人形。彼の方は用意できて銀等級が精々でしょう。
しかし彼には技術力があるので油断はできませんわ。
◇
――そしていよいよ決闘の日を迎えました。
激闘の末結果はわたくしの敗北。十分に策を練り、全力を尽くしたにも関わらず負けてしまいましたわ。
二対一の状況を覆され、ぐうの音も出ないほどの完敗。いっそ清々しい気持ちになりました。
それにしてもあの黄金の輝き……物語で聞いたいにしえの英雄を想起させられましたわ。
もしかしたらあの方はわたくしが思っている以上に大物なのでは……?
仮にそうだったとしても……敗者に語る口はありません。残念ですがこれ以上しつこくお誘いをすることも憚られますし、あの方の力を得ようとは考えないようにしますわ。
王宮に来ないとはいえ、この国に居てくださる限りなにかしらの利益をもたらしてくれることでしょう。
わたくしにできるのはあの方をこの国に留められるよう努力することだけですわね。
――そう思っていたのですが、あの方が報酬として要求してきたものがとんでもないことでした。
「それじゃあこの間と同じでいいっすよ」
「なっ――――そ、それはザッコブ・カマセーヌとの決闘の時と同じ……ということですの?」
「……? はい、そうですけど……」
前と同じ……以前はカマセーヌ家とヴァイシルト家の決闘で、確かあの時は曖昧な定義の報酬だったため、相手側の要求と同等のものを引き渡すことで解決した案件です。
と、いうことは今回の場合はわたくしが要求した報酬と同じ……つまり『俺のものになれ』……ということですの!?
困りますわ困りますわ!
わたくしはまだ殿方とお付き合いしたことすら無いというのに!
――――いえ、約束は約束ですわ。可能な願いは叶えてみせると口にしたからには、頭ごなしに拒否するなんてわたくしのプライドが許しません。
そ、それに……こんなにも情熱的に殿方から求められるのは初めてですから、どこか嬉しい気持ちがあると言うか……。
あの方と共に居れば将来的に国の利益にも繋がるはずですしね。
そうと決まれば即行動ですわ!
まずはお父様に許可をいただかないといけませんわね。もし断られたら家出する覚悟すらありますわ。
◇
それから色々ありましたが、家名を捨て旦那様の元へこの身一つで嫁がせていただきましたわ。
……まあ家名を捨てたといっても、国から旦那様への依頼を繋ぐパイプ役として動くことになりましたし、結局は王国の監視下にあるようなものです。
まったくお父様ったら心配性なんですから。そんな回りくどいマネをするのだったら、最初から反対などしなければよかったのですわ。
しかし……ヴァイシルト家の令嬢も旦那様との婚姻を望んで来た時はさすがに驚きましたわ。
まあ、彼女もなかなか優秀でしたので旦那様の花嫁の一人として認めてあげましょう。
旦那様ほどの男性なら妻の三人や四人ぐらい侍らせるのは当然の権利ですわ。
……でも、旦那様の一番になるのはこのわたくしですけどね!
オーッホッホッホ!
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