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【二章】爆・炎・王・女

19.なんでも

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「ケイタ・サガミ! 此度の戦い、見事でしたわ!」

 俺たちの控え室に突如現れたのは、目の冴えるような赤髪とはち切れんばかりの豊満なボディの美少女、フラムローゼ・アークライト。この国の第二王女であり、さっき俺が戦った相手である。
 その後ろには以前見た護衛二人が付いていた。
 
「――あら? もしかしてお取り込み中だったかしら?」

「いっ、いいえフラムローゼ様。ですがケイタさんは今起き上がることができませんので、私も含めこのままの体勢でいることをお許しください」

「よくってよ。どうやら体調が優れないようですし、わたくしから一方的に話させていただきますわ」

 王族なのにあまり偉そうにしないところは好感が持てるな。初対面の時も結構失礼な態度をとってしまったけど、特に咎められたりはしなかったし。

「手短に話しますわね、要件は一点。決闘の報酬の件ですわ」

「ああ、俺が勝ったらなんでも願いを叶えてくれるんだっけか……」
 
「ええ、アークライト王家の名にかけて、可能な限り要望に応えますわ。「世界を我が物にしたい」など、あまりに非現実的なことはさすがのわたくしでも叶えかねますが」

 いやそんなん言われなくてもわかってるよ!

 というか仮に叶えられるんだとしても、世界征服なんて分不相応にも程がある。そんなことになったら革命でも起こされて殺されるぞ、俺。
 
 しかし、なんでもか……なんでもが一番困るんだよなあ。

 今なら晩御飯のメニューを聞いたら「なんでもいい」と答えられた母親の気持ちがわかる。いや、だっていざ何がいいかと問われるとパッと出てこないんだよね。

「さあさあ! 望みをおっしゃいなさいな!」

 王女様はどこか楽しそうに、満面の笑みで俺を急かしてくる。

 あーもう、頭もぼーっとするし脳みそ回転させるのがしんどい。考えるのが面倒くさくなってきたぞ。
 
「えーと……それじゃあこの間と同じでいいっすよ」

 ザッコブに勝った時のように、ある程度の金品を貰えればいいかな。魔動人形を何体か買えるぐらいあれば、俺としては十二分の報酬だ。

「なっ――――そ、それはザッコブ・カマセーヌとの決闘の時と同じ……ということですの?」

「……? はい、そうですけど……」

 どこか取り乱した様子の王女様であったが、さすが王族に名を連ねるだけあって、俺の返事を受けてすぐに平静を取り戻していた。
 ってか取り乱すほど無茶な要求じゃないと思うんだけどな。

「――了承しました。わたくしの言葉に二言はありませんわ。少々時間を頂きますが、必ず実現するとお約束します。準備が出来次第ヴァイシルト家に伺いますので、しばしお待ち頂きますわ」

「わかりました」

 結構な大金になるだろうから、いろいろ手続きとかあるんだろうな。
 でも現状新しく作れる魔動人形は無いし、早めにたのんますぜ。

「それではわたくしは準備がありますので、これで失礼しますわ。ご機嫌よう」

 そう捲し立て、王女様は控え室を去った。

「フラムローゼ様、行ってしまいましたね」

「そうだね……ふぁ~あ」

 颯爽と現れ、風のように去っていったな。
 というか最後護衛の人にめっちゃ睨まれた気がするんだが……まあいいか。

 さっき寝る寸前で起こされたんだ、俺はもう寝る。細かいことは起きたあとに考えよう。

「それじゃあシルヴィア、悪いけど少し休ませてもらうね」

「はい、ゆっくりお休みになってください」



 激闘を制し疲労困憊の俺は、心地のよい感触を後頭部に感じつつ、魔力回復のため深い眠りについたのだった。


 
 
 
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