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【二章】爆・炎・王・女

3.パートナー

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「わ、私がやります!」

 シルヴィアが勢いよく手を上げてそう言った。

「シルヴィア……これは遊びではないのだぞ?」

「わかってます。ケイタさんは私たちのために全力で頑張ってくれました。今度は私が恩返しをするんです。力になってみせます!」

 エドワルドさんがなだめるが、シルヴィアの覚悟は思いの外固いようだった。
 
 タッグマッチの相方をどうするかという問題に直面した俺だったが、早くも解決しそうだ。
 俺としても、知らない人と組むより気心の知れた相方の方が好ましい。シルヴィアならばその点は問題ない。

「まあ、私としては異議はないのだが……サガミ殿はどうなのだ? 戦いのパートナーを決めるとなると、重要な問題だぞ」

「そうですね……俺としては、シルヴィアが隣に立ってくれるのが一番心強いです」

「ケイタさん……私、ケイタさんの期待に応えて見せますね!」
 
「あ、でもシルヴィアの魔動人形マギアドールはどうするんですか? 今あるのはシルバライザーと、あの『木偶の坊』だけ。今回はさすがに一般等級では役不足感が否めないと思いますし、やめておいた方がいいと思いますけど」

 合わせ目消しや、丁寧なゲート処理によって防御力の強化、可動域の拡張でより攻撃性を高めてはいるものの、等級の低さは変わらない。
 今回は相手が王族だ。ザッコブのように雑な作り方はしていないだろうし、そうなると基本能力の差が顕著に現れるだろう。

「そうだな……魔動人形を持ち出していった人形技師たちの行方も知れない。かといって金等級ゴールドグレード相手ではさすがに勝ち目は薄いだろうな」

「金等級……? なんで相手の魔動人形の等級がわかるんですか?」

「ああ……第二王女であるフラムローゼ様は王国が魔物に襲われた時など、魔動人形部隊を率いて自らが前線に立ち指揮を執られるほど武勇に優れたお方なのだ。その愛機が金等級魔動人形『ガレオニクス』。今回の決闘も間違いなくその魔動人形で戦うだろう」

 金等級……魔動人形について書かれた本によると、金等級以上の魔動人形は、それまでの等級と一線を画した性能を持っていて、全く同じ機体は他に存在しないらしい。
 俺の中では、銀以下はいわゆる『量産機』、金以上は主人公とかライバルが乗る『ワンオフ機』って感じで解釈している。
 
 エドワルドさんの言い方だと、王女様が操る魔動人形は結構有名なんだろうな。ならまずは情報収集だ。
 相手の魔動人形の特徴が事前に知れるのは大きなアドバンテージになるぞ。

「ガレオニクス相手ですと、やはり最低でも銀等級シルバーグレードの魔動人形がないと厳しいでしょうね……」

 シルヴィアも知っているようだな。後で聞いてみよっと。

「幸い報酬としてカマセーヌ家の財産として受け取った魔動人形がいくつかある。今この場にはないが、数日中には手配できるだろう」

 前に俺に預けてくれたのは一般等級の魔動人形が3体。全部作り終えたのだが、エドワルドさんはその3体を館の護衛用機として配備している。
 滅多にはないが、大型の魔物が襲ってくることもあるみたいだ。その為の最低限の防衛力としての備えだ。

「十分助かります。エドワルドさん、俺なんかのためにすみません」

「何を言う。サガミ殿は我らの恩人だ。出来る限りの事はさせてくれ。……だが王宮へ勤めることは本来なら名誉な話だ。誰しもがそれを望むだろう。それでもいいのかね?」

「はい。王宮へ行ったことはないですけど、俺には合わないと思うんです」

 給料とかもめっちゃ出るんだろうな……でも俺は金よりも自由と平穏が欲しいのだ。ストレス社会に飛び込む勇気はない。
 
「そうか……君が王都へ行くのを拒むなら、私はそれを尊重し助力すると約束しよう」

「はい、ありがとうございます!」

「もちろん私も協力しますよ!」

 エドワルドさんとシルヴィアからの確かな信頼に胸が熱くなる。この世界に来て初めて出会った人がこの人たちで心底良かったと思う。

「……では、すぐに魔動人形を手配しよう。しかし、すまないが3日ほど時間がかかるのだ。その間は……そうだな、魔動人形の操縦訓練をするといい。少し離れたところになるが、私の管理する土地に丁度良い場所がある。武器を使うことはできないという条件付きだが……感覚を掴むには問題ないだろう」

 マジか! よーし、俄然やる気が出てきたぞ。
 早速行こう! すぐ行こう!

「はは……そんなに目を輝かせるとはな。サガミ殿は随分と魔動人形にお熱のようだな。……では馬車を手配するので、存分に楽しんでくると良い」
 
「はい! ありがとうございます!」

 そりゃなー、ロボに乗るのは男子の夢だもの。
 あの時は必死だったし、感慨に浸る時間もあまりなかった。でも今度は誰にも邪魔されずに堪能できるのだ。テンションが上がらないわけがない。

 そしてしばらくしてから、シルバライザーを片手に手配された馬車に乗り込み、俺は魔動人形の訓練に向かった。
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