6 / 120
【一章】異世界でプラモデル
5.誰だこいつ
しおりを挟む
シルヴィアらを捕らえていたのはとある大きな野盗の一派だったらしい。
今は奴らが使っていた馬車を頂戴し、ヴァイシルト家に向かっている途中だ。
ちなみに野党は縛り上げて馬車の隅っこに拘留している。後々もろもろを吐かせるのだろう。
同乗者としてはちょっと恐ろしいのだが、まああれだけガチガチに拘束されていたら問題ないだろう。
道中シルヴィアから色々な話を聞いた。
メチャ強老紳士の名前はクロードさんといって、ヴァイシルト家に仕える執事だそうだ。
今は馬車の御者をしているため、御者台にいる。
この世界の名前はスマホのメッセージにもあったように、アルスガルドという名前らしい。
今向かっているヴァイシルト家は、アルスガルドにおける三大国の一つ、アークライト王国に属する家柄であり、かつて国家間での戦争があった時代では王家の盾として勇名を轟かせていたようだ。
「――へぇ、そうなんだ。ありがとうシルヴィア。俺何もわからなくてさ、色々教えてくれて助かるよ」
「いえ、私もケイタさんとお話するの楽しいですし構いませんよ」
しばらく一対一で話し込んでいたおかげで、シルヴィアと話すのもだいぶ慣れてきた。
歳も近いし普通に話して構わないとシルヴィア言われたので、俺は普段の喋り方で話すようになった。この方が気楽で俺としては助かる。
シルヴィアにも俺に対して畏まらなくていいと伝えたのだが、丁寧口調が彼女の素らしい。変わったところは『ケイタ様』から『ケイタさん』に変わったぐらいだ。
そんなこんなで半日ほど馬車を走らせていると、ようやく人が住んでいる地域へとたどり着いた。
「おー! ここが街かぁ。ってあれ? どこ行くんだ?」
ちらっと外を覗くと、街が見えてきたにも関わらず馬車は街とは別方向に向かっていた。このまま街に入るものだと思っていた俺は、思わず声に出してしまう。
「我がヴァイシルト家はあの丘の頂上にあります。ここから30分ほどでしょうか。街へは入りませんが、気になるようでしたら後日ご案内しますよ?」
「あ、そうなんだ。ぜひ見学したいなあ。そしたらその時は案内よろしくね、シルヴィア」
「私ですか? ……ええ、是非ご一緒しましょうね」
そんな会話を続けていると、シルヴィアの言うとおり30分ほどで大きな館へとたどり着いた。
いやあ、広いわでかいわで腰を抜かすかと思った。こんな豪邸を一個人が持っているなんて考えられない。
門構えからしてその豪華さが伺える。門番もちゃんといるし、予想はしてたけどシルヴィアの家って結構な名家なんじゃなかろうか。
「そこの馬車、止まれ! 何用であるか!」
門に近付くと門番に呼び止められた。まあ知らん馬車が近付いてきたら止めるわな。
「あなたは!? クロード様! と、言うことは……!」
「はい、お嬢様はご無事です。門を開けてもらってよろしいですかな?」
「もちろんです! さすがクロード様。ご無事の帰還、嬉しく思います!」
クロードさんの顔を確認した門番の人が慌てて門を開ける。クロードさんは執事って聞いてたけど、様付けで呼ばれるってことは結構な立場の人なのかな?
そのまま馬車は敷地内へと進んでいく、そして館の前へと馬車を止めると、情報が伝わっていたのだろう。家人と思わしき人たちが勢揃いで待ち構えていた。
「シルヴィア様、よくぞご無事で!」
「おかえりなさいませお嬢様!」
「お待ちしておりました!」
シルヴィアが馬車を降りると、それぞれシルヴィアの帰還を喜ぶ声が上がるなか、俺は馬車の中で固まっていた。
「いや、こんなハッピーな空気の中でのこのこと俺が出ていったら、『誰だこいつ』的な雰囲気になるだろ……」
馬車を降りるわけにもいかず、座り込んで床板の木目を数えていると、シルヴィアから声がかかった。
「ケイタさーん! どうされたのですか? 皆さんにご紹介しますので降りてきてくださいよー」
呼ばれてしまったからには出ていくしかあるまい。俺は覚悟を決めて馬車を降りた。
「はは……どもども」
へこへこしながら現れた俺を見て、案の定『誰だこいつ』的な表情を浮かべる家人たち。うう……わかってた、わかってたさ。
「こちらケイタ・サガミさん。私たちを救ってくれた勇敢なお方です」
シルヴィアがそう説明すると、 場の雰囲気が一気に盛り上がる。
「おお! そうなのですね!」
「感謝致します!」
「変わったお召し物……もしかしたらどこかの有名なお方なのかもしれないわね!」
ただの部屋着のジャージです。すみません。
そんな中、勢いよく館の扉が開かれて夫婦と思われる男女が現れた。
家人たちはその姿を見るや否やピッと姿勢を正し、頭を下げた。その反応から夫婦はこの家の主、つまりシルヴィアの両親だと推測できる。
「シルヴィア! おお……無事でなによりだ!」
「心配したのですよ? 昨晩は一睡もできませんでしたわ」
「お父様、お母様! 只今戻りました!」
再会を喜び抱き合う3人。うんうん、よかったねぇ。
ひとしきり喜び合って落ち着き、周りが見えるようになったのだろう。一息ついたシルヴィアの両親と俺の目が合った。
その顔は案の定、『誰だこいつ』的な顔をしていた。
今は奴らが使っていた馬車を頂戴し、ヴァイシルト家に向かっている途中だ。
ちなみに野党は縛り上げて馬車の隅っこに拘留している。後々もろもろを吐かせるのだろう。
同乗者としてはちょっと恐ろしいのだが、まああれだけガチガチに拘束されていたら問題ないだろう。
道中シルヴィアから色々な話を聞いた。
メチャ強老紳士の名前はクロードさんといって、ヴァイシルト家に仕える執事だそうだ。
今は馬車の御者をしているため、御者台にいる。
この世界の名前はスマホのメッセージにもあったように、アルスガルドという名前らしい。
今向かっているヴァイシルト家は、アルスガルドにおける三大国の一つ、アークライト王国に属する家柄であり、かつて国家間での戦争があった時代では王家の盾として勇名を轟かせていたようだ。
「――へぇ、そうなんだ。ありがとうシルヴィア。俺何もわからなくてさ、色々教えてくれて助かるよ」
「いえ、私もケイタさんとお話するの楽しいですし構いませんよ」
しばらく一対一で話し込んでいたおかげで、シルヴィアと話すのもだいぶ慣れてきた。
歳も近いし普通に話して構わないとシルヴィア言われたので、俺は普段の喋り方で話すようになった。この方が気楽で俺としては助かる。
シルヴィアにも俺に対して畏まらなくていいと伝えたのだが、丁寧口調が彼女の素らしい。変わったところは『ケイタ様』から『ケイタさん』に変わったぐらいだ。
そんなこんなで半日ほど馬車を走らせていると、ようやく人が住んでいる地域へとたどり着いた。
「おー! ここが街かぁ。ってあれ? どこ行くんだ?」
ちらっと外を覗くと、街が見えてきたにも関わらず馬車は街とは別方向に向かっていた。このまま街に入るものだと思っていた俺は、思わず声に出してしまう。
「我がヴァイシルト家はあの丘の頂上にあります。ここから30分ほどでしょうか。街へは入りませんが、気になるようでしたら後日ご案内しますよ?」
「あ、そうなんだ。ぜひ見学したいなあ。そしたらその時は案内よろしくね、シルヴィア」
「私ですか? ……ええ、是非ご一緒しましょうね」
そんな会話を続けていると、シルヴィアの言うとおり30分ほどで大きな館へとたどり着いた。
いやあ、広いわでかいわで腰を抜かすかと思った。こんな豪邸を一個人が持っているなんて考えられない。
門構えからしてその豪華さが伺える。門番もちゃんといるし、予想はしてたけどシルヴィアの家って結構な名家なんじゃなかろうか。
「そこの馬車、止まれ! 何用であるか!」
門に近付くと門番に呼び止められた。まあ知らん馬車が近付いてきたら止めるわな。
「あなたは!? クロード様! と、言うことは……!」
「はい、お嬢様はご無事です。門を開けてもらってよろしいですかな?」
「もちろんです! さすがクロード様。ご無事の帰還、嬉しく思います!」
クロードさんの顔を確認した門番の人が慌てて門を開ける。クロードさんは執事って聞いてたけど、様付けで呼ばれるってことは結構な立場の人なのかな?
そのまま馬車は敷地内へと進んでいく、そして館の前へと馬車を止めると、情報が伝わっていたのだろう。家人と思わしき人たちが勢揃いで待ち構えていた。
「シルヴィア様、よくぞご無事で!」
「おかえりなさいませお嬢様!」
「お待ちしておりました!」
シルヴィアが馬車を降りると、それぞれシルヴィアの帰還を喜ぶ声が上がるなか、俺は馬車の中で固まっていた。
「いや、こんなハッピーな空気の中でのこのこと俺が出ていったら、『誰だこいつ』的な雰囲気になるだろ……」
馬車を降りるわけにもいかず、座り込んで床板の木目を数えていると、シルヴィアから声がかかった。
「ケイタさーん! どうされたのですか? 皆さんにご紹介しますので降りてきてくださいよー」
呼ばれてしまったからには出ていくしかあるまい。俺は覚悟を決めて馬車を降りた。
「はは……どもども」
へこへこしながら現れた俺を見て、案の定『誰だこいつ』的な表情を浮かべる家人たち。うう……わかってた、わかってたさ。
「こちらケイタ・サガミさん。私たちを救ってくれた勇敢なお方です」
シルヴィアがそう説明すると、 場の雰囲気が一気に盛り上がる。
「おお! そうなのですね!」
「感謝致します!」
「変わったお召し物……もしかしたらどこかの有名なお方なのかもしれないわね!」
ただの部屋着のジャージです。すみません。
そんな中、勢いよく館の扉が開かれて夫婦と思われる男女が現れた。
家人たちはその姿を見るや否やピッと姿勢を正し、頭を下げた。その反応から夫婦はこの家の主、つまりシルヴィアの両親だと推測できる。
「シルヴィア! おお……無事でなによりだ!」
「心配したのですよ? 昨晩は一睡もできませんでしたわ」
「お父様、お母様! 只今戻りました!」
再会を喜び抱き合う3人。うんうん、よかったねぇ。
ひとしきり喜び合って落ち着き、周りが見えるようになったのだろう。一息ついたシルヴィアの両親と俺の目が合った。
その顔は案の定、『誰だこいつ』的な顔をしていた。
0
お気に入りに追加
31
あなたにおすすめの小説
魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~
月見酒
ファンタジー
俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。
そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。
しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。
「ここはどこだよ!」
夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。
あげくにステータスを見ると魔力は皆無。
仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。
「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」
それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?
それから五年後。
どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。
魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!
見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる!
「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」
================================
月見酒です。
正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。
強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。
きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕!
突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。
そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?)
異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
新人神様のまったり天界生活
源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。
「異世界で勇者をやってほしい」
「お断りします」
「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」
「・・・え?」
神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!?
新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる!
ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。
果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。
一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。
まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
異世界に転生をしてバリアとアイテム生成スキルで幸せに生活をしたい。
みみっく
ファンタジー
女神様の手違いで通勤途中に気を失い、気が付くと見知らぬ場所だった。目の前には知らない少女が居て、彼女が言うには・・・手違いで俺は死んでしまったらしい。手違いなので新たな世界に転生をさせてくれると言うがモンスターが居る世界だと言うので、バリアとアイテム生成スキルと無限収納を付けてもらえる事になった。幸せに暮らすために行動をしてみる・・・
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる