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【無視できない招待状】
再訪
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「――――コホン。先程は失礼致しました。エレミア様とアース様が一緒の部屋で寝泊まりされているとは思わず、取り乱してしまいまして……それに、あのようなはしたない格好をされていたので私はてっきり……」
エレミアが着替えを済ませ、キサラの用件を話を聞くために改めて顔を合わせた三人だったが、開口一番キサラが二人の関係を勘繰るような言葉を発したので、エレミアは再び慌ててしまう。
「ちょっとキサラ!? さっきそれは違うって説明したでしょ!?」
「ふふっ、冗談です。申し訳ございません。エレミア様があまりにもお可愛らしいものでつい……」
口に手を当てながらにこっと悪戯っぽく微笑み、エレミアをからかうキサラ。
昨日今日会ったばかりの貴族令嬢であるエレミアにこのような態度を取れるとは、さすが大貴族コンクエスター家の使用人と言ったところだろうか。
エドモンドを助けた時と言い、キサラは随分と胆が据わった性格をしているのだろう。
もっとも、エレミアの親しみ易い性格があってのことなのだろうが。
「……もう! キサラったら……!」
「なあ、二人ともさっきから何の話をしているんだ? キサラ、世間話もいいが何か用事があったのではないのか?」
年頃の女性二人が色めいた会話を繰り広げるなか、そこにアースが割って入り、情緒の欠片もなくばっさりと今までの流れを切り捨て本題へと誘導する。
もちろん気恥ずかしいなどといった気持ちからの発言ではなく、産まれてこのかた色恋沙汰とは無縁だったアースは、単純にその鈍感っぷりを発揮していたので悪意は全く無いのだ。
「「…………」」
アースの言葉にエレミアとキサラの二人は、口をつぐみながらじとっとした目線をアースに送る。
キサラとしては先程のからかいの対象はエレミアだけでなく、アースも含まれていたのだが、慌てふためくどころか気付いてすらいないことに呆れてしまう。
「……? どうした? 俺の顔に何かついているのか?」
「はぁ……エレミア様、これはなかなか手強いですよ?」
「……そうね、頑張るわ」
やる気を見せるように、エレミアは胸の前で両手で小さく拳を握りしめる。
(ああ、そこは認めちゃうんですね。ふふっ、やっぱり可愛らしいお方)
今のエレミアの発言はアースに好意を持っていると言っているようなものだが、等の本人はそのことに全く気付いていないようだ。
最初ははあれだけ必死に取り繕っていたのにだ。
そんなところがとても可愛らしいと思うキサラであったが、それと同時にここまで言っているのに何も気付いた様子の無いアースに対して呆れてしまう。
しかし、アースの言う通りあまり長話をしている余裕はないので、キサラは場を仕切り直して本来の用件を切り出す。
「――コホン。では改めましてご用件をお伝えします。お二人をエドモンド様がお呼びでいらっしゃいます。館でお待ちですのでご足労いただけませんでしょうか?」
アースとエレミアはお互いに顔を見合わせる。
予め手配していた馬車が到着するにはまだ早い時間だったので、多少の余裕はあるものの、あまり長話をしている場合でもないのは確かだ。
なのでアースは小さく頷き、エレミアに判断を委ねることにした。
「――わかったわ。少しだけなら大丈夫だし、お伺いします。エドモンド様のことだし、大事な用件なのよね?」
「ご配慮いただき感謝いたします。それでは、馬車を用意しておりますので早速向かいましょう。服装はそのままで構いませんので」
こうしてアースとエレミアは、再びコンクエスター家の敷地に足を踏み入れることとなった。
エレミアが着替えを済ませ、キサラの用件を話を聞くために改めて顔を合わせた三人だったが、開口一番キサラが二人の関係を勘繰るような言葉を発したので、エレミアは再び慌ててしまう。
「ちょっとキサラ!? さっきそれは違うって説明したでしょ!?」
「ふふっ、冗談です。申し訳ございません。エレミア様があまりにもお可愛らしいものでつい……」
口に手を当てながらにこっと悪戯っぽく微笑み、エレミアをからかうキサラ。
昨日今日会ったばかりの貴族令嬢であるエレミアにこのような態度を取れるとは、さすが大貴族コンクエスター家の使用人と言ったところだろうか。
エドモンドを助けた時と言い、キサラは随分と胆が据わった性格をしているのだろう。
もっとも、エレミアの親しみ易い性格があってのことなのだろうが。
「……もう! キサラったら……!」
「なあ、二人ともさっきから何の話をしているんだ? キサラ、世間話もいいが何か用事があったのではないのか?」
年頃の女性二人が色めいた会話を繰り広げるなか、そこにアースが割って入り、情緒の欠片もなくばっさりと今までの流れを切り捨て本題へと誘導する。
もちろん気恥ずかしいなどといった気持ちからの発言ではなく、産まれてこのかた色恋沙汰とは無縁だったアースは、単純にその鈍感っぷりを発揮していたので悪意は全く無いのだ。
「「…………」」
アースの言葉にエレミアとキサラの二人は、口をつぐみながらじとっとした目線をアースに送る。
キサラとしては先程のからかいの対象はエレミアだけでなく、アースも含まれていたのだが、慌てふためくどころか気付いてすらいないことに呆れてしまう。
「……? どうした? 俺の顔に何かついているのか?」
「はぁ……エレミア様、これはなかなか手強いですよ?」
「……そうね、頑張るわ」
やる気を見せるように、エレミアは胸の前で両手で小さく拳を握りしめる。
(ああ、そこは認めちゃうんですね。ふふっ、やっぱり可愛らしいお方)
今のエレミアの発言はアースに好意を持っていると言っているようなものだが、等の本人はそのことに全く気付いていないようだ。
最初ははあれだけ必死に取り繕っていたのにだ。
そんなところがとても可愛らしいと思うキサラであったが、それと同時にここまで言っているのに何も気付いた様子の無いアースに対して呆れてしまう。
しかし、アースの言う通りあまり長話をしている余裕はないので、キサラは場を仕切り直して本来の用件を切り出す。
「――コホン。では改めましてご用件をお伝えします。お二人をエドモンド様がお呼びでいらっしゃいます。館でお待ちですのでご足労いただけませんでしょうか?」
アースとエレミアはお互いに顔を見合わせる。
予め手配していた馬車が到着するにはまだ早い時間だったので、多少の余裕はあるものの、あまり長話をしている場合でもないのは確かだ。
なのでアースは小さく頷き、エレミアに判断を委ねることにした。
「――わかったわ。少しだけなら大丈夫だし、お伺いします。エドモンド様のことだし、大事な用件なのよね?」
「ご配慮いただき感謝いたします。それでは、馬車を用意しておりますので早速向かいましょう。服装はそのままで構いませんので」
こうしてアースとエレミアは、再びコンクエスター家の敷地に足を踏み入れることとなった。
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