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【無視できない招待状】

どこまでも共に

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「――しかしエレミア。これは間違いなく罠だ。いくらなんでも対応が早すぎる。何か裏があるのは間違いない……俺の予想が正しければおそらくダストンが関わっているはずだ。もうここまできたら何をしてきてもおかしくない」

「……それでもね、アース。私はエドモンドおじちゃんを見捨てることなんててきないの。全てを救いたいだなんて綺麗事は言えないけど……届くのであれば、私は迷わずこの手を伸ばすわ」

その曇りなき瞳を向けられたアースは歯がゆくもあったが、同時に誇らしい気持ちになった。
 
(そうだ……彼女エレミアはこういう人だ。自分のことより、他人を思いやれる優しい心を持った人だ。――仕方がない、もとより拾われたこの命だ。どんな無茶振りだろうと、とことん付き合ってやろうじゃないか)

 アースは短く息を吐き覚悟を決めた。そしてエレミアの目を真っ直ぐに見詰め返す。

 エレミアとアースとの出会いは偶然だった。

 最初、アースは命を助けられた恩義を返すつもりで、エレミアの家で働くことを決めた。
 それは狭まれた選択肢の内の一つだったが、しかし今となってはあの時エレミアと共に歩む道を選んで良かったと、アースは本心からそう思っている。

 魔族であると知りながら受け入れてくれた街の人々の温もり、他人のために汗を流し感謝される喜びを知り、皆で食べる食事の美味しさを思い出させてくれた。

 それら全てはエレミアがきっかけとなって貰ったものだ、彼女が救いを求めるのならそれに応え、彼女が涙を流すのならばそれを拭う。
 アースにとってエレミアは、既に恩人の域を越えた存在であり、特別な感情を抱いていると言っていい。
 当のアース本人に自覚がないのが少々やっかいなところではあるが。

「――わかった、行く先が地獄だろうと付き合おう。……エレミアお嬢様のご機嫌を損ねるわけには……いきませんからね」

「――もう! なんで皮肉を言うときだけしっかり喋れるのよ! ……ありがとう、アース。付き合わせちゃってごめんね」

 頬を膨らませながら、拗ねた素振りを見せるエレミアであったが、緊張がほぐれたのか、すぐに柔和な表情へと変化した。
 しかし、付き合うとは言ったものの、実際どのような手段を取ればいいのかはアースにも思い付いてはいなかった。

 アースが思考を巡らせていると、そもそもエドモンドを救う以外にアース達が冤罪を免れる手段はないように思えた。
 このまま逃げきったとしても、リーフェルニア領に迷惑がかかることは間違いない。一番適切な手段としてはエドモンドを救い、彼に証言をしてもらう他ない。

 そこに考えが及ばなかったアースは、自身も相当に動揺していたのだと改めて認識させられる。
 そして、それを認識したのと同時に、自分がいるこの部屋のすぐ近くに何者かの気配を感じたのだった。
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