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【真実の吐露】
魔王軍のその後④
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フレアルドは苛立ちながら通信用の魔道具が設置された部屋へと入る。
「クソッ! アースの野郎……死んでもまだ俺達魔族の足を引っ張りやがるのか……! それに勇者がいるだなんて聞いてねェぞ!」
悪態をついたところで事態は好転しない。億劫に思いながらも、フレアルド事態の解決を試みるためこの部屋へと訪れたのだ。
部屋には人の大きさ程の姿鏡が設置されており、対になったもう一つの鏡といつでも通信をすることができるという魔道具だ。
フレアルドは鏡の前に立ち、魔力を巡らせ起動させる。
しばらくすると鏡に写ったのはフレアルドの姿ではなく、同じ四天王であるマダラの姿であった。
「――急に連絡とハ……何かあったのカ……?」
「あァ、厄介な事に『勇者』を名乗る者が現れたと報告があってな。それも複数だ。お前に調査……いや、可能なら始末を頼みたい」
「何!? 複数の勇者デスと……!? 勇者とは魔王と対を成す存在のハズ……こちらに魔王が居ない今、勇者が現れるワケがなイ……!」
マダラは種族の特性として毒を操ることができ、更には姿をくらますことが可能な『天与』を持っており、標的を暗殺する術に長けている。
フレアルドは次期魔王候補の自分が勇者と戦って負けるとは思っていないが、さすがに無傷での勝利は難しいのではと懸念が残る。
この戦争の勝利条件としては帝都の制圧が必要となるので、本拠地に攻め込む前に余計な消耗は避けたいと考えている。
フレアルドは暗殺術に特化したマダラなら、一個人相手ならば確実に暗殺できると踏み、勇者を処分するよう依頼するために通信したのだ。
「勇者とて所詮人間族だ、不意を突けばどうとでもなるだろ。それに、この戦いで勇者が現れたのはこれが初めてだ。そいつが本物かどうかはわからねェが、本物だとしたらまだ覚醒して間もないはずだ。それなら十分に勝機はあるだろ」
「フム……しかし、そう仮定したとしても、非常にリスクが高い仕事デスね……ワタクシとて勇者を標的にするのは初めてですシ」
勇者の能力や容姿すらわからない状態で暗殺を遂行するのは、言うまでもなく非常に危険を伴う行為だ。
マダラとしてもそう易々とは引き受けられない。
「ケッ……! マダラよォ、お前が四天王の座に就けたのは誰のおかげだと思ってやがるんだ。――この俺様だろ? ちったァ協力してくれねェか? それに勇者を仕留めたとなりゃァ、四天王の中でも一歩抜きん出た地位に着けるかもしれないぜ?」
「…………確かニ。その件については感謝しておりますヨ。……わかりましタ、やれるだけやってみまショウ。ただし、無理だと判断した場合はすぐに退きますからネ」
「フン……まあ、最悪それで構わねェよ。相手の能力を知れるだけでも充分だ。それに俺の見立てでは天与持ちが見栄はって勇者を名乗っているだけだと思うぜ? ま、天与持ちってだけで厄介なのは変わらねェがよ」
「そうデスか……。だといいのデスが。それでハ、進捗があり次第また連絡しまスよ」
マダラとの通信を終えたフレアルドは、先程の怒りがふつふつと再び湧き上がってきた。
「チクショウ……! うまくいかないのは何もかも全部アースの野郎のせいだ! クソッ! クソッ! クソッ!」
フレアルドはアースが死んでいると認識している。
ぶつける怒りの矛先が無いフレアルドは、部下や物に当たり散らすようになる。
もともと横暴だった性格が、以前より輪をかけて狂暴性を増しつつある。
そんな上司を持つ陸軍部隊は日に日に不満を抱え始めるのであった。
「クソッ! アースの野郎……死んでもまだ俺達魔族の足を引っ張りやがるのか……! それに勇者がいるだなんて聞いてねェぞ!」
悪態をついたところで事態は好転しない。億劫に思いながらも、フレアルド事態の解決を試みるためこの部屋へと訪れたのだ。
部屋には人の大きさ程の姿鏡が設置されており、対になったもう一つの鏡といつでも通信をすることができるという魔道具だ。
フレアルドは鏡の前に立ち、魔力を巡らせ起動させる。
しばらくすると鏡に写ったのはフレアルドの姿ではなく、同じ四天王であるマダラの姿であった。
「――急に連絡とハ……何かあったのカ……?」
「あァ、厄介な事に『勇者』を名乗る者が現れたと報告があってな。それも複数だ。お前に調査……いや、可能なら始末を頼みたい」
「何!? 複数の勇者デスと……!? 勇者とは魔王と対を成す存在のハズ……こちらに魔王が居ない今、勇者が現れるワケがなイ……!」
マダラは種族の特性として毒を操ることができ、更には姿をくらますことが可能な『天与』を持っており、標的を暗殺する術に長けている。
フレアルドは次期魔王候補の自分が勇者と戦って負けるとは思っていないが、さすがに無傷での勝利は難しいのではと懸念が残る。
この戦争の勝利条件としては帝都の制圧が必要となるので、本拠地に攻め込む前に余計な消耗は避けたいと考えている。
フレアルドは暗殺術に特化したマダラなら、一個人相手ならば確実に暗殺できると踏み、勇者を処分するよう依頼するために通信したのだ。
「勇者とて所詮人間族だ、不意を突けばどうとでもなるだろ。それに、この戦いで勇者が現れたのはこれが初めてだ。そいつが本物かどうかはわからねェが、本物だとしたらまだ覚醒して間もないはずだ。それなら十分に勝機はあるだろ」
「フム……しかし、そう仮定したとしても、非常にリスクが高い仕事デスね……ワタクシとて勇者を標的にするのは初めてですシ」
勇者の能力や容姿すらわからない状態で暗殺を遂行するのは、言うまでもなく非常に危険を伴う行為だ。
マダラとしてもそう易々とは引き受けられない。
「ケッ……! マダラよォ、お前が四天王の座に就けたのは誰のおかげだと思ってやがるんだ。――この俺様だろ? ちったァ協力してくれねェか? それに勇者を仕留めたとなりゃァ、四天王の中でも一歩抜きん出た地位に着けるかもしれないぜ?」
「…………確かニ。その件については感謝しておりますヨ。……わかりましタ、やれるだけやってみまショウ。ただし、無理だと判断した場合はすぐに退きますからネ」
「フン……まあ、最悪それで構わねェよ。相手の能力を知れるだけでも充分だ。それに俺の見立てでは天与持ちが見栄はって勇者を名乗っているだけだと思うぜ? ま、天与持ちってだけで厄介なのは変わらねェがよ」
「そうデスか……。だといいのデスが。それでハ、進捗があり次第また連絡しまスよ」
マダラとの通信を終えたフレアルドは、先程の怒りがふつふつと再び湧き上がってきた。
「チクショウ……! うまくいかないのは何もかも全部アースの野郎のせいだ! クソッ! クソッ! クソッ!」
フレアルドはアースが死んでいると認識している。
ぶつける怒りの矛先が無いフレアルドは、部下や物に当たり散らすようになる。
もともと横暴だった性格が、以前より輪をかけて狂暴性を増しつつある。
そんな上司を持つ陸軍部隊は日に日に不満を抱え始めるのであった。
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