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【真実の吐露】

作戦会議

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 翌日、アースとレオナルドは今後の方針を決めるための会議をしていた。

「さて、今後どうするかだが……しばらく生活していたのである程度は把握しているだろうが、まずは貴公に我が領地の問題点を詳しく知ってもらいたい」

「そうだな、それは知っておきたい」

 一応、領地で暮らしていた身なので、ある程度のことはアースも把握していたが、領主の口から詳しく聞くのが一番だろうと思い、レオナルドの提案に頷いた。

「一つはここが辺境の地であることだな。周りが森で囲まれておりまともな道が無く、人の往来が極端に少ない。そもそも、どちらかと言えば魔族領に属するような絶妙な位置にある。それ故に他の領地との交流が皆無と言ってもいい。基本的に自給自足で暮らさねばならないのだ」

 道を整備しようにも多大な時間と労力がかかる。
 更には魔物の襲撃も考えられるので、この命懸けの作業を領民にさせる訳にもいかず、それなりの動員数を要求されることもあり今まで捨て置かれていたのだった。

「……それなら俺がなんとかできる。レオナルドも見ただろうがここから鉱山への道は大体1日で作れたからな。森を切り拓き、道を整備するのはそこまで苦ではないぞ」
 
「う、うむ……長年悩み続けていたことをそんなあっさりと解決できると言われるとはな……まあ、この件に関しては実績もあるので貴公に任せようと思う。必要なものがあったら遠慮無く言ってくれ」

「ああ、わかった。今回初めてやったが、コツも掴んだし前回よりかは早く作れると思うぞ。具体的にどこまで行ける道を作ればいいんだ?」

 以前鉱山からリーフェルニア領への道を作った際に何度も『天与』を使用したので、同じ作業であれば数秒でこなせるまでに習熟していた。

 『天与』を使えば使うほど、その能力が間違いなく強化されていることにアースは最近気付き始めた。
 魔王軍にいた頃も、もちろん天与使ってはいたのだが、メタルイーターとの戦闘も含め、『天与』をここまで酷使したことはなかったので、この成長はアースにとって初めての経験だった。

「そうだな、ここから東にクレミアル街道と呼ばれる大きな街道がある。そこまで道を繋げられれば大抵の場所には行けるだろう」

「クレミアル街道……確か帝都から伸びる三大街道の一つだったか」

「ああ、そうだ。貴公は見たことがないのか?」

「そうだな……名前は知っていたんだが実際に目にしたことはない。基本的に魔族領からは出られなかったからな」
 
 当時は戦争にこそなってはいなかったが、密な交流があったわけではないのて、アースが見たことがないのも無理はない。
 むしろ、その名前を知っていただけでも勤勉であると言える。
 
「そうか……では案内役が必要だろうな。我輩が選出しておこう」

「助かる」

 アースはなんとなくだがガウェインが他を押し退けてでも案内役を買って出るんだろうな、と想像してしまう。
 顔見知りだからやりやすいだろう、というアースの願望も含まれてはいるが。

「それともう一つの問題点は圧倒的な資源不足だ。せっかく交通手段が出来たところで交易する品が無くては話にならない。貴公が作った薬と、発見した鉱山の鉱石類は大いに期待できる。だが薬の素材も鉱石資源も有限だ。それに、薬なら大抵どこにでも置いてある。いくら良質であろうとも、最初は見向きもされない可能性は大いにあるのだ。何か我が領地だけの特産物のようなものがあれば交渉もしやすいのだが……」

「確かにそうだな……道の整備の前に先にそちらをなんとかしよう。新しく畑を作ってもいいか?」

「ん? ああ……構わないが、畑を作るのか?」

「……ああ、こう見えて『農作業』は得意なんだ」

 こうしてアースは領地発展の足掛かりとして、まずは畑作りを始めるのであった。
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