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四章 討伐
顕現
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「みなさん、準備はよろしいですね」
僕たちは都市から少し離れたところ。暗殺者の里と都市の間にある森に来ていた。住民の被害を限りなく少なくするためである。
「はい」
どうしてここに鬼が来るのか分かるのかというとハリーさんのおかげである。ハリーさんというより暗殺者の長には分かるらしい。代々受け継がれる物があるのだとか。詳しくは教えてくれなかったけど……。
あれ、奥に着物を着た女の人がいる?よく見ると頭に角がある。もしかしてこの人が……。
「くるぞ!!構えろ」
リンさんの声ですぐさま場が緊張感に包まれる。
僕は能力を発動させた。でも僕は発動して後悔した。だって揺らぐじゃないか。鬼から感じるものは悲しみだけだった。それを取り囲むように怨嗟の念がある。いったいいくつあるのか。もしかしてこれは取り込まれた人たちの念?1000はくだらないじゃないか。
「リアン、油断するな」
僕は気を引き締め前に足を出そうとしたそのときだった。足にツタが絡まりついたのは。
そのまま体が空中に浮く。
植物を操ることもできるのか?!山の神だったからなのか!!
「リアン」
「心配しないでください。どうにかします!!」
僕は二つの刀を握りしめ、体を回転させながら次々とくるツタを切り刻もうとするがツタが足に絡まりついているせいで振り回される。当たらない!!まず足のツタをどうにかして切らないとやっぱりダメだ。
そう思っている僕の元へリンさんが疾風のごとくスピードで現れ、鎌でツタを切り刻む。
「リンさん!」
「リアン、次は油断するな。次は助けられないぞ」
「分かってます!」
リンさんはそれを聞くと鬼の元へ走って行った。
あの鎌、義叔父さんの……。いや、今は考えるのはやめないと。さっきリンさんに言われたばかりだろ。雑念は消せ。ただ倒すことだけを考えるんだ。鬼に同情しちゃダメだ。
植物がうっとうしい。
植物のせいで鬼に近づけない。今まともに近づけているのはリンさんだけだ。ハリーさんは近づくのを早々に諦めて遠距離攻撃に切り替えている。それも植物に阻まれている。やっぱり近づいて倒すしかない。
ハリーさんもそう判断したようで鬼へと向かって行く。
僕は木に向かって走った。そして木を踏み台にしてミサイルのごとくスピードで鬼に向かって行く。木は僕の脚力に耐えきれず倒れた。
二つの刀で襲ってくる植物をなぎ払う。しかしそのせいで鬼までスピードが保たれず、途中で止まる。
やっぱり届かない。それどころか警戒を上げて襲ってくる植物の量が増えた。
だったらここ一帯の地形を変えるしかないか。まだ使ったことはないけど大丈夫だと思う。能力を発現してから何でもできるような高揚感、あの鳥の信頼が少なからずあるんだ。
『この身に宿るは炎の心。この身に宿すは炎の化身。この世を切り離せスヴァローグ!!』
魔法の詠唱と同時に刀を地面へと振り下ろす。そして僕の目の前に大きな溝ができる。刀の振り下ろした直線上にいた鬼は地面の底へと落ちた。
うっ、心臓が燃えるように熱い。なんだこれ。魔力を多く消費するのは分かっていたけど。これは魔力が少ないから起きる症状じゃない。いきなり最上級魔法を使ったのが原因か?でもそんなこと僕が読んだ本に書いてなかった。息吸うのがつらい。はやく息整えないと。
「リアンよくやった。ロジェ、リアンの回復を早急に頼む」
「分かってる」
『ヒール』
「リアン兄ちゃん、回復して早々言いにくいんだけど早く行かないと。今が好機だよ」
「分かってる。ロジェありがとう」
僕はまだ心臓が完全に熱くなくなった訳じゃないけど溝の中へと飛び込んだ。
火を宿した一撃だったからか周りの植物は死に絶え植物の邪魔はこないはずだった。
鬼自身から植物が出ていたのだ。でもさっきより植物の量が減ってる。それにリンさんとハリーさんが鬼の攻撃を抑えてくれている。ここで決めないと。
僕は両手で鬼斬神影を握りしめる。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
二人の声が聞こえる。僕も同じように雄叫びを上げる。
「なっ?!」
片手で刀を受け止めやがった。鬼の受け止めている手からは血が流れ出ていた。攻撃が完全に通らなかった訳じゃない。もう一度チャンスはあるはずだ。今は距離をとらないと。そう思うのに刀が抜けない!!まずい。
獲物は逃がさないと言わんばかりに僕の首に植物が巻き付く。このままじゃ死ぬ!!苦しい。意識が朦朧とする。
「リアン君、意識を手放してはいけません!!」
「リアン!!」
「全く、世話のかけるガキだ」
金色の鳥が僕の首に巻き付く植物に向かって疾風のごとく突っ込んでくる。
「あの鳥はやっぱり……」
そうつぶやいたのはハリーだった。ハリーは昔、この鳥にあったことがある。それは今、確信に変わった。
突っ込んでくる鳥にもやはり植物が襲いかかる。しかし、この金色の鳥を何人たりとも阻むことはできないのだ。それがたとえ山の神だろうとも。
これがこの鳥に宿る力の一つ。阻むという行為においてこの鳥を止められる者はこの世にいないのだ。
リアンへと突っ込んでいった鳥は首の植物だけを切り落とし、霊体化してリアンの首をすり抜けた。
「ゲホッ、ゲホッ」
「ぼっさとするんじゃない。さっさと構えぬか」
「本当に手厳しいですね。鳥さん」
「フン、私はお前ら竜族が嫌いだからな。見ているだけでうっとうしい」
僕を嫌いな訳じゃなかったのか……。
僕はすかさずもう一本の刀を抜刀し、目にも止まらぬ速さで刀を握る鬼の片腕を切り落とす。そして鬼斬神影を取り戻す。
腕を切り落とされた鬼が叫びを上げる。それと同時に空間が震動する。これは、平衡感覚がやられる!
僕はすかさず能力の出力を上げて自分を守る。
そして鬼から距離をとった。そして息を整える。
この鬼、植物で全体像がはっきり見えなかったけどさっきのではっきり見えた。ハリーさんは守りが強いって言ってた。確かに守りは強い。さっきは能力で腕の守りが弱いと分かったから切り落とせたけど。
それだけじゃない。心臓がないのだ。元から心臓がないのではなく取り出されたといった方が分かりやすいかもしれない。心臓付近に心臓を抜き出された後がある。回復はしているみたいだけど……。この鬼、自己修復するのか?!
僕はすかさず顔を上げ、鬼を見る。
マジかよ。切り落とした腕をくっつけやがった。
まさか鬼が目覚めたのは心臓が取られたから、なのか?危機的状況を感じて目覚めたと仮定すれば心臓を確実に潰すか、心臓を鬼に返さないと誰かがまた目覚めさせるんじゃないか?これは僕の想像を出ない話だ。でもこれが事実なら……。リンさんたちに言った方がいい。僕の判断だけで決めるのはダメだ。
「リンさん、ハリーさん!!この鬼、心臓がありません!!誰かに取り出されたみたいな後があります。おそらく封印しても心臓を元に戻すか潰さないとすぐに目覚めると思います!!」
リンさんとハリーさんの目が見開かれる。
「心臓がないだと?!だが今、動いているということは心臓がまだどこかで生きているということか!!」
リンさんとハリーさんの顔が焦りに変わる。
「もうすぐ日が昇る。そしたらリンの本来の力を出せなくなる。そうなれば本当に終わりです」
「日が昇ることと何か関係あるんですか?」
「もう、隠せないな。――俺は吸血鬼の真祖だ」
リンさん、吸血鬼だったのか。
「それより、他に分かることあるか?」
「ちょっと待ってください」
僕は再び能力の出力を上げ、目をこらす。――――見えた!!鬼から光が出ている。おそらくこれが心臓のあるところを指し示しているんだと思う。
「心臓が南西の方角にあると思われます!!」
「南西の方角というと――――」
「私たちの里の方角ですね。――心臓を潰すのはおそらく無理です。だから返しましょう。返して封印しましょう」
「分かった。では行くぞ」
リンさんはものすごいパワーの蹴りで里の方向へと鬼を吹っ飛ばす。鬼は吹っ飛ばされないように植物のツタを木に結びつけるが威力に耐えきれずツタがちぎれる。
「わぁお、すごい威力ですね。素の蹴りだけでこれだけの威力があるなんて」
「人間と吸血鬼の真祖を比べちゃダメですよ。身体能力がまず違います。――私たちも里へ向かいましょう」
「俺に任せろ」
「リン、まさか?!」
「そのまさかだ。しっかり受け身とれよ。俺もオリヴィアとロジェを連れてすぐに駆けつける」
リンさんは僕とハリーさんを持ち上げるとそのまま空へと打ち上げた。
「本当に、時々リンはバカになりますよね。それにどこか吹っ切れた顔をしていましたね」
僕は思わず悲鳴を上げハリーさんに抱きつく。
「ハリーさん、絶対僕を見捨てないでください」
ハリーさんはどうしてそんなに平気な顔でいられるのだろうか。さすがリンさんの義父さんというべきか。
僕たちは都市から少し離れたところ。暗殺者の里と都市の間にある森に来ていた。住民の被害を限りなく少なくするためである。
「はい」
どうしてここに鬼が来るのか分かるのかというとハリーさんのおかげである。ハリーさんというより暗殺者の長には分かるらしい。代々受け継がれる物があるのだとか。詳しくは教えてくれなかったけど……。
あれ、奥に着物を着た女の人がいる?よく見ると頭に角がある。もしかしてこの人が……。
「くるぞ!!構えろ」
リンさんの声ですぐさま場が緊張感に包まれる。
僕は能力を発動させた。でも僕は発動して後悔した。だって揺らぐじゃないか。鬼から感じるものは悲しみだけだった。それを取り囲むように怨嗟の念がある。いったいいくつあるのか。もしかしてこれは取り込まれた人たちの念?1000はくだらないじゃないか。
「リアン、油断するな」
僕は気を引き締め前に足を出そうとしたそのときだった。足にツタが絡まりついたのは。
そのまま体が空中に浮く。
植物を操ることもできるのか?!山の神だったからなのか!!
「リアン」
「心配しないでください。どうにかします!!」
僕は二つの刀を握りしめ、体を回転させながら次々とくるツタを切り刻もうとするがツタが足に絡まりついているせいで振り回される。当たらない!!まず足のツタをどうにかして切らないとやっぱりダメだ。
そう思っている僕の元へリンさんが疾風のごとくスピードで現れ、鎌でツタを切り刻む。
「リンさん!」
「リアン、次は油断するな。次は助けられないぞ」
「分かってます!」
リンさんはそれを聞くと鬼の元へ走って行った。
あの鎌、義叔父さんの……。いや、今は考えるのはやめないと。さっきリンさんに言われたばかりだろ。雑念は消せ。ただ倒すことだけを考えるんだ。鬼に同情しちゃダメだ。
植物がうっとうしい。
植物のせいで鬼に近づけない。今まともに近づけているのはリンさんだけだ。ハリーさんは近づくのを早々に諦めて遠距離攻撃に切り替えている。それも植物に阻まれている。やっぱり近づいて倒すしかない。
ハリーさんもそう判断したようで鬼へと向かって行く。
僕は木に向かって走った。そして木を踏み台にしてミサイルのごとくスピードで鬼に向かって行く。木は僕の脚力に耐えきれず倒れた。
二つの刀で襲ってくる植物をなぎ払う。しかしそのせいで鬼までスピードが保たれず、途中で止まる。
やっぱり届かない。それどころか警戒を上げて襲ってくる植物の量が増えた。
だったらここ一帯の地形を変えるしかないか。まだ使ったことはないけど大丈夫だと思う。能力を発現してから何でもできるような高揚感、あの鳥の信頼が少なからずあるんだ。
『この身に宿るは炎の心。この身に宿すは炎の化身。この世を切り離せスヴァローグ!!』
魔法の詠唱と同時に刀を地面へと振り下ろす。そして僕の目の前に大きな溝ができる。刀の振り下ろした直線上にいた鬼は地面の底へと落ちた。
うっ、心臓が燃えるように熱い。なんだこれ。魔力を多く消費するのは分かっていたけど。これは魔力が少ないから起きる症状じゃない。いきなり最上級魔法を使ったのが原因か?でもそんなこと僕が読んだ本に書いてなかった。息吸うのがつらい。はやく息整えないと。
「リアンよくやった。ロジェ、リアンの回復を早急に頼む」
「分かってる」
『ヒール』
「リアン兄ちゃん、回復して早々言いにくいんだけど早く行かないと。今が好機だよ」
「分かってる。ロジェありがとう」
僕はまだ心臓が完全に熱くなくなった訳じゃないけど溝の中へと飛び込んだ。
火を宿した一撃だったからか周りの植物は死に絶え植物の邪魔はこないはずだった。
鬼自身から植物が出ていたのだ。でもさっきより植物の量が減ってる。それにリンさんとハリーさんが鬼の攻撃を抑えてくれている。ここで決めないと。
僕は両手で鬼斬神影を握りしめる。
「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
二人の声が聞こえる。僕も同じように雄叫びを上げる。
「なっ?!」
片手で刀を受け止めやがった。鬼の受け止めている手からは血が流れ出ていた。攻撃が完全に通らなかった訳じゃない。もう一度チャンスはあるはずだ。今は距離をとらないと。そう思うのに刀が抜けない!!まずい。
獲物は逃がさないと言わんばかりに僕の首に植物が巻き付く。このままじゃ死ぬ!!苦しい。意識が朦朧とする。
「リアン君、意識を手放してはいけません!!」
「リアン!!」
「全く、世話のかけるガキだ」
金色の鳥が僕の首に巻き付く植物に向かって疾風のごとく突っ込んでくる。
「あの鳥はやっぱり……」
そうつぶやいたのはハリーだった。ハリーは昔、この鳥にあったことがある。それは今、確信に変わった。
突っ込んでくる鳥にもやはり植物が襲いかかる。しかし、この金色の鳥を何人たりとも阻むことはできないのだ。それがたとえ山の神だろうとも。
これがこの鳥に宿る力の一つ。阻むという行為においてこの鳥を止められる者はこの世にいないのだ。
リアンへと突っ込んでいった鳥は首の植物だけを切り落とし、霊体化してリアンの首をすり抜けた。
「ゲホッ、ゲホッ」
「ぼっさとするんじゃない。さっさと構えぬか」
「本当に手厳しいですね。鳥さん」
「フン、私はお前ら竜族が嫌いだからな。見ているだけでうっとうしい」
僕を嫌いな訳じゃなかったのか……。
僕はすかさずもう一本の刀を抜刀し、目にも止まらぬ速さで刀を握る鬼の片腕を切り落とす。そして鬼斬神影を取り戻す。
腕を切り落とされた鬼が叫びを上げる。それと同時に空間が震動する。これは、平衡感覚がやられる!
僕はすかさず能力の出力を上げて自分を守る。
そして鬼から距離をとった。そして息を整える。
この鬼、植物で全体像がはっきり見えなかったけどさっきのではっきり見えた。ハリーさんは守りが強いって言ってた。確かに守りは強い。さっきは能力で腕の守りが弱いと分かったから切り落とせたけど。
それだけじゃない。心臓がないのだ。元から心臓がないのではなく取り出されたといった方が分かりやすいかもしれない。心臓付近に心臓を抜き出された後がある。回復はしているみたいだけど……。この鬼、自己修復するのか?!
僕はすかさず顔を上げ、鬼を見る。
マジかよ。切り落とした腕をくっつけやがった。
まさか鬼が目覚めたのは心臓が取られたから、なのか?危機的状況を感じて目覚めたと仮定すれば心臓を確実に潰すか、心臓を鬼に返さないと誰かがまた目覚めさせるんじゃないか?これは僕の想像を出ない話だ。でもこれが事実なら……。リンさんたちに言った方がいい。僕の判断だけで決めるのはダメだ。
「リンさん、ハリーさん!!この鬼、心臓がありません!!誰かに取り出されたみたいな後があります。おそらく封印しても心臓を元に戻すか潰さないとすぐに目覚めると思います!!」
リンさんとハリーさんの目が見開かれる。
「心臓がないだと?!だが今、動いているということは心臓がまだどこかで生きているということか!!」
リンさんとハリーさんの顔が焦りに変わる。
「もうすぐ日が昇る。そしたらリンの本来の力を出せなくなる。そうなれば本当に終わりです」
「日が昇ることと何か関係あるんですか?」
「もう、隠せないな。――俺は吸血鬼の真祖だ」
リンさん、吸血鬼だったのか。
「それより、他に分かることあるか?」
「ちょっと待ってください」
僕は再び能力の出力を上げ、目をこらす。――――見えた!!鬼から光が出ている。おそらくこれが心臓のあるところを指し示しているんだと思う。
「心臓が南西の方角にあると思われます!!」
「南西の方角というと――――」
「私たちの里の方角ですね。――心臓を潰すのはおそらく無理です。だから返しましょう。返して封印しましょう」
「分かった。では行くぞ」
リンさんはものすごいパワーの蹴りで里の方向へと鬼を吹っ飛ばす。鬼は吹っ飛ばされないように植物のツタを木に結びつけるが威力に耐えきれずツタがちぎれる。
「わぁお、すごい威力ですね。素の蹴りだけでこれだけの威力があるなんて」
「人間と吸血鬼の真祖を比べちゃダメですよ。身体能力がまず違います。――私たちも里へ向かいましょう」
「俺に任せろ」
「リン、まさか?!」
「そのまさかだ。しっかり受け身とれよ。俺もオリヴィアとロジェを連れてすぐに駆けつける」
リンさんは僕とハリーさんを持ち上げるとそのまま空へと打ち上げた。
「本当に、時々リンはバカになりますよね。それにどこか吹っ切れた顔をしていましたね」
僕は思わず悲鳴を上げハリーさんに抱きつく。
「ハリーさん、絶対僕を見捨てないでください」
ハリーさんはどうしてそんなに平気な顔でいられるのだろうか。さすがリンさんの義父さんというべきか。
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