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そんなお土産いりません!
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とりあえず、使い魔仲間のランディ王子から目をそらして、イーリンさんに近づいた。
「あの後、何があったの? イーリンさん」
「ユーリさんが作った氷の壁で遮断されて、アデルちゃんたちが見えなくなった時、小さなドラゴンが叫んだの。アデルちゃんが、『虹竜さんと一緒に氷の壁を溶かし、一刻も早く、ランディ王子を助けてあげて』って、言ってるって。言われてみれば、壁から、ランディ兄様の片足がでていてびっくりよ。ちょうど、氷の壁の中に閉じ込められてたのね」
「あ、そういえば、私、ヨーカンに頭の中で、そうお願いしたわね! こっちからは、ユーリのバッグを持ったランディ王子の手が見えていたから」
「ああ、あのバッグね……。氷の壁からでてきて、一番に、ランディ兄様は、ユーリさんのバッグを届けなきゃとか言ってたわ。まず、言うことがそれ? って感じよね……。まあ、とにかく、アデルちゃんのお願いどおりに、ドラゴンさんたちは火を吐いて、氷の壁をとかして、ランディ兄様を救い出してくれたの。時間にしたら、10分弱くらいだったかしら……。その様子に見入ってしまっていたから、私には、あっという間に感じたんだけれど、虹竜さんは不満だったみたい。『さすが氷の悪魔だな。氷が粘着質で溶けにくい』って、火を吐きながら、文句を言っていたから」
と、イーリンさんが説明してくれた。
氷に粘着質? そんなのあるのね……。
その時、パンパンと手を打つ音がした。
ジリムさんだ。
「では、皆様。予定が狂いに狂いましたので、今日の観光は終わりです。王宮に帰りますよ!」
と、言い放ったジリムさん。
目の下のクマが、ますますひどいことになっている……。
疲労が激しすぎるわ。言われた通りにしないと気の毒すぎる。
でも、ひとつだけお願いしたいわ!
ということで、ジリムさんに向かって、私は、ぴしっと手をあげた。
「ジリムさん! イリスさんのデザートをまだ食べていないので、それだけは食べさせてください! 食べさせてくれたら、すぐに帰ります!」
と、王女らしさを放り投げて、なりふり構わず、ジリムさんに頼んだ。
「アデルって、ほんと、王女か? 食い意地がはってるよな?」
と、つぶやいたのは、ランディ王子。
「胸に大きなマカロンをつけている人には言われたくないのだけれど?」
と、思わず、言い返した私。
「おい、アデル! これは、ただのマカロンなんかじゃない! ユーリさんの魔力がつまった、俺の宝物のマカロンだ!」
すごい声量で言い放ったランディ王子。
「ランディ。『おい』だなんて、アデルになんて口をきくの? そんな態度なら、そのマカロンにこめたぼくの魔力を消してしまうよ?」
と、冷たい声でユーリが言った。
「あ、ユーリさん! それだけはやめて!」
悲し気に叫ぶランディ王子。
叱られた子犬のように、耳もしっぽも力なく垂れているのが見える……。
「なら、今のセリフ、アデルに向かって、もう一度、言い直して?」
「言い直す? ちょっと、ユーリ! 何、おかしなことを言ってるの!? ランディ王子、言い直さなくていいからね!?」
と、あわてて、ランディ王子に向かって言った。
その時だ。視界の端に紳士が目に入った。食い入るように、私たちを見ている。
どうやら、好奇心を刺激しまくっているみたい……。
なんて、考えていると、ランディ王子が私の前に立った。
「ええと……おい、……ではなくて、恐れ入ります。アデル……さん? これは、ただのマカロンではありません。ユーリさんの魔力がつまった、俺の宝物であるマカロンなのですよ」
あ、本当に言い直したのね、ランディ王子……。
しかも、すごく棒読みで変な感じなんだけど……。
でも、なんで、そこまで、ユーリに従順なのかしら? やはり、もう、使い魔になってるとか?
「やれば、できるじゃないランディ。これからは、アデルには丁寧に話してね?」
と、ユーリが褒めた瞬間、ランディ王子の顔がぱあっと明るくなった。
今度は、さっきとは打って変わって、耳がたち、しっぽをぶんぶんとふっているのが見える。
一瞬にして、喜びはしゃぐ子犬になった感じよね。
「ランディ兄様が、ユーリさんのペットにしか見えないんだけど……」
と、イーリンさん。
「確かに。この際、面倒で害にしかならない貴族も手懐けてもらって、土産としてオパール国に持って帰ってもらうか……」
と、クマのある目をぎらつかせて、不穏なことをつぶやくジリムさん。
ジリムさん、そんなお土産いりません!
「あの後、何があったの? イーリンさん」
「ユーリさんが作った氷の壁で遮断されて、アデルちゃんたちが見えなくなった時、小さなドラゴンが叫んだの。アデルちゃんが、『虹竜さんと一緒に氷の壁を溶かし、一刻も早く、ランディ王子を助けてあげて』って、言ってるって。言われてみれば、壁から、ランディ兄様の片足がでていてびっくりよ。ちょうど、氷の壁の中に閉じ込められてたのね」
「あ、そういえば、私、ヨーカンに頭の中で、そうお願いしたわね! こっちからは、ユーリのバッグを持ったランディ王子の手が見えていたから」
「ああ、あのバッグね……。氷の壁からでてきて、一番に、ランディ兄様は、ユーリさんのバッグを届けなきゃとか言ってたわ。まず、言うことがそれ? って感じよね……。まあ、とにかく、アデルちゃんのお願いどおりに、ドラゴンさんたちは火を吐いて、氷の壁をとかして、ランディ兄様を救い出してくれたの。時間にしたら、10分弱くらいだったかしら……。その様子に見入ってしまっていたから、私には、あっという間に感じたんだけれど、虹竜さんは不満だったみたい。『さすが氷の悪魔だな。氷が粘着質で溶けにくい』って、火を吐きながら、文句を言っていたから」
と、イーリンさんが説明してくれた。
氷に粘着質? そんなのあるのね……。
その時、パンパンと手を打つ音がした。
ジリムさんだ。
「では、皆様。予定が狂いに狂いましたので、今日の観光は終わりです。王宮に帰りますよ!」
と、言い放ったジリムさん。
目の下のクマが、ますますひどいことになっている……。
疲労が激しすぎるわ。言われた通りにしないと気の毒すぎる。
でも、ひとつだけお願いしたいわ!
ということで、ジリムさんに向かって、私は、ぴしっと手をあげた。
「ジリムさん! イリスさんのデザートをまだ食べていないので、それだけは食べさせてください! 食べさせてくれたら、すぐに帰ります!」
と、王女らしさを放り投げて、なりふり構わず、ジリムさんに頼んだ。
「アデルって、ほんと、王女か? 食い意地がはってるよな?」
と、つぶやいたのは、ランディ王子。
「胸に大きなマカロンをつけている人には言われたくないのだけれど?」
と、思わず、言い返した私。
「おい、アデル! これは、ただのマカロンなんかじゃない! ユーリさんの魔力がつまった、俺の宝物のマカロンだ!」
すごい声量で言い放ったランディ王子。
「ランディ。『おい』だなんて、アデルになんて口をきくの? そんな態度なら、そのマカロンにこめたぼくの魔力を消してしまうよ?」
と、冷たい声でユーリが言った。
「あ、ユーリさん! それだけはやめて!」
悲し気に叫ぶランディ王子。
叱られた子犬のように、耳もしっぽも力なく垂れているのが見える……。
「なら、今のセリフ、アデルに向かって、もう一度、言い直して?」
「言い直す? ちょっと、ユーリ! 何、おかしなことを言ってるの!? ランディ王子、言い直さなくていいからね!?」
と、あわてて、ランディ王子に向かって言った。
その時だ。視界の端に紳士が目に入った。食い入るように、私たちを見ている。
どうやら、好奇心を刺激しまくっているみたい……。
なんて、考えていると、ランディ王子が私の前に立った。
「ええと……おい、……ではなくて、恐れ入ります。アデル……さん? これは、ただのマカロンではありません。ユーリさんの魔力がつまった、俺の宝物であるマカロンなのですよ」
あ、本当に言い直したのね、ランディ王子……。
しかも、すごく棒読みで変な感じなんだけど……。
でも、なんで、そこまで、ユーリに従順なのかしら? やはり、もう、使い魔になってるとか?
「やれば、できるじゃないランディ。これからは、アデルには丁寧に話してね?」
と、ユーリが褒めた瞬間、ランディ王子の顔がぱあっと明るくなった。
今度は、さっきとは打って変わって、耳がたち、しっぽをぶんぶんとふっているのが見える。
一瞬にして、喜びはしゃぐ子犬になった感じよね。
「ランディ兄様が、ユーリさんのペットにしか見えないんだけど……」
と、イーリンさん。
「確かに。この際、面倒で害にしかならない貴族も手懐けてもらって、土産としてオパール国に持って帰ってもらうか……」
と、クマのある目をぎらつかせて、不穏なことをつぶやくジリムさん。
ジリムさん、そんなお土産いりません!
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