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わかってくれる人

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ヨーカンを見た反応は様々ね。

おびえて、騒いでいるのは、筆頭公爵家の令嬢とお客様のカップルのお二人。
具合の悪そうだった取り巻き令嬢は気を失ったようで、店員さんに介抱されている。

イリスさんは冷静で、ラスさんは、……うん、目がばっちりあった。
何故かヨーカンより私の方を面白そうに見ている。

そんな中、紳士は、興奮した様子で食い入るようにヨーカンを見ていた。

また、ヨーカンの声が頭に響いた。

(そこへいく)

そう言って、開いている窓に頭をつっこんできた。
が、窓が小さいので、つっかかる。

が、ヨーカンは無理やり通ろうとしている。

「ダメよ、ヨーカン! 窓が壊れるから、やめて! そこで、じっとしていて!」
と、私があわてて声をかけた。

すぐに、ヨーカンの動きが止まった。

(わかった)

そう言って、つぶらな瞳で私を見るヨーカン。
小さな窓から顔だけが見えているのだけれど、窓枠が額縁のようで、肖像画みたいね。

はああ、なんて、かわいいの! キュンとくるわ!

ここに居合わせたのも、なにかの…じゃなくて、ドラゴンの縁。
せっかくだから、みなさんには、ヨーカンの素敵さをわかってもらいたい。

ということで、私はヨーカンを紹介することにした。

私は、ユーリの腕から抜けでると、一気に窓際まで走った。
そして、ヨーカンを手で示し、話し始めた。

「皆さん、こちらの窓から見えるのは、ドラゴンのヨーカンです! すごくいい子で、怖くないですから。ほら、とっても、かわいいでしょう?」

「全然、かわいくないけど?」
と、ユーリが冷たい声で言った。

「ヨーカンのかわいらしさが、なんで、ユーリには伝わらないのかしら?」

「あのね、今、アデルが俺のほうを向いている時、あのクソチビ、牙むきだしで、こっちを威嚇してたけど?」

「うそ!?」

私は、あわてて、ヨーカンのほうを向いた。

すると、こてんと首をかしげて、私を見るヨーカン。
つぶらな瞳をきらきらさせている。

やっぱり、かわいいじゃない!

「すごい、変わりかた……。しかも、ドラゴンが、あざとい……」
そう言って、声をころして笑うラスさん。

カップルの男性が、「今の顔、怖い……」そう言いながら、ヨーカンを見て、ガタガタと震えている。

怖い? こんなにかわいいのに……。

そんななか、ノートを片手に持った紳士が手をあげた。

「はい、そこの紳士の方! なんでしょうか?」
思わず、指名してしまう。

ラスさんが、耐えられないというように、ブッとふきだした。

「ドラゴンを近くで見たいのですが、私が近づいても大丈夫ですか?」

やっと、ヨーカンの良さがわかってくれる人がいたわ!
私は嬉しくなって、大きな声で返事をした。

「もちろんです! さあ、こちらへ! いいわよね、ヨーカン?」

(いいよー)

紳士は、ノートを手に持ったまま、私の前まで来た。
間近でヨーカンを見て唸った。

「おおお! 本物のドラゴンを、こんな近くで見られるとは……。黒々として美しい!」

自分が褒められているようで嬉しくなる。

紳士が、私に聞いてきた。

「やはり、火を吐くんでしょうか?」

「ええ! 立派に火を吐いているのを見ました!」

「ああ、なんて、うらやましい! 私も直に見たいな……」

紳士の言葉を聞いて、ヨーカンが言った。

(火、はこうか?)

「まあ、ヨーカン……!」

思わず、感動してしまう。

「どうかしたのですか?」

私の様子に、紳士が不思議そうに聞いてきた。

「あなたの言葉を聞いて、火を吐こうかって言ったんです。優しい子でしょう?」

私は、ヨーカンのほうを向いた。

「ヨーカン、ありがとう。でも、ここでは、火はダメ。気持ちだけもらっておくわね」
と、話しかける私を驚いたように見た紳士。

「もしや、あなたは、ドラゴンと会話をしているのですか!?」 

「はい」

「どうやって!?」
そう聞きながら、紳士が私に身をのりだしてきたところで、間に、壁ができた。

「……というか、ユーリ、何してるの?」

私と紳士の間に体をいれてきたユーリ。

「だって、怪しい男がアデルに近づこうとしてるから、阻止するのは当たり前だよね?」

「怪しい? とんでもない! もうその方は仲間よ!」

「仲間? ちょっと、何言ってるの、アデル?」
ユーリが訝し気に言った。

「ヨーカンのすばらしさがわかる仲間に決まってるじゃない!」

「なるほど。確かに私も、このドラゴンにすでに魅せられました。是非、そのお仲間に入れてください!」
と、紳士が楽しそうに言った。

やった! ヨーカン仲間ができたわ!

ユーリが、あからさまに、ため息をついた。

「あのね、アデル……。ほんとに、なんで、そんなに警戒心がないの? しかも、なに? そのわけのわかんない仲間って……。怪しい人間をアデルに近づかせるなんて、俺が許すわけないでしょ?」

と、その時だ。

「ほんとに、狭量だね。その人の身元は俺が保証するよ」

そう言いながら、開いたままのドアから入って来たのは、デュラン王子だった。
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