上 下
97 / 158

その計画、変です

しおりを挟む
一生、ユーリについていく宣言をした、ランディ王子。

ユーリが、氷のような目で見ようが、冷たい言葉を放とうが、離れるどころか、更に、ユーリにぴったりとひっついていく。

すごい、意外と根性があるわね…。

ついに、ユーリのほうが、根負けしたのか、
「じゃあ、少しだけ、ここで魔力をあげる練習をしてみる? ここの泉、ランディとも相性が良さそうだし」
と、ランディ王子に言った。

「はい!」
いい返事をする、ランディ王子。しっぽを、すごい勢いで振っているのが見える気がする。

「じゃあ、泉の水に手をつけてみて」

「はい!」

「手から、この水が、自分の中へはいっていくイメージをしてみて」

「はい!」

「手をだして」

「はい!」

「じゃあ、その手と泉の間に、何が見える?」

「あ、細い光が、ほんの少し見えます」

「そこに焦点をあわせて」

「はい!」

ランディ王子の、すばらしく、はきはきした返事があたりに響く。

人間って、こんなに短期間に変われるのね!と、改めて驚いてしまう。

訓練をしている二人から、私たちは少し離れて、その様子を眺める。

そこで、ジリムさんが私に話しかけてきた。

「私は、王都の中心で生まれ育って25年。正直、この泉に初めて興味がわきました」

えええ?! 
仮にも、国の起源となる、「命」なんでしょ?

突然の告白にびっくりしていると、

「正直すぎるだろ、ジリム」
と、デュラン王子が苦笑する。

が、ジリムさんは、
「いくら、天然の泉で、魔力があって、空高く噴き上がっていようと、見慣れた私からしたら、まあ、ただの泉。この水を飲んだら、病が治るみたいな劇的なこともないですしね。
ですが、アデル王女様が来ただけで、こんなに色々なことがおこるなんて…。
正直、驚きました。本当に、おもしろいことを引き寄せる方ですね」
と言って、私に微笑んだ。

「いやいや、私が引き寄せた訳ではないですが? 
何かを見たのは、イーリンさんと、ランディ王子だよ?」
と、私が言うと、

「いえ、お二人とも、アデル王女様と泉に関して、ご覧になってますから。
やはり、アデル王女様が要因だと思われます!」
と、断言するジリムさん。

すると、デュラン王子が、それを聞き、
「そうでしょ?! アディーが、この国にいたら、絶対楽しくなるよね? 
欲しくない? この国に!」
と言う。

いや、私はいたって、普通の人間です。
一国に一人みたいな、特異な存在ではないですよ!

ジリムさん、否定して!

が、私の思いもむなしく、ジリムさんが、
「ええ、そうですね。うちの国に来ていただければ、おもしろそうです」
と、うなずいた。

しかも、イーリンさんまでが、
「私もそう思う! アデルちゃんに妹になってもらって、一緒に住みたい! 
だから、デュラン兄様を応援することにしたわ! 
この国に、アデルちゃんを呼び寄せよう!」
と、力強く宣言をはじめた。

「うわ、イーリンが応援してくれるなんて、嬉しいよ! アディーを家族にするため、みんなでがんばろう。いいよね、ジリム」
と、デュラン王子。

ええと、一体、この人たちは、何を計画してるんですか?! 
おかしな方向につきすすんでるので、常識人のジリムさん、とめて!
と、思ったら、

「ええ、私も賛同いたします。かわりといってはなんですが、ランディ王子を、次期公爵様のところに、差し出しましょう」
と、ジリムさんが、淡々と言った。

ジリムさん…、今、一番、変なことを言いましたよ?!

「あ、それいいね! ランディが、あんなに懐いて、楽しそうだもんね。次期公爵のところに、弟子入りさせてもらったらいいんじゃない?」
そう言って、ランディ王子が微笑んだ。

「そうね。ランディ兄様もそのほうが喜ぶわね! そうと決まれば、アデルちゃんにこの国をうーんと好きになってもらって、この国にずーっといたくなるようにがんばろう!」
と、イーリンさんが元気よく言った。

イーリンさんも、すっかり、活発で明るくなった。良かったわ…。

…じゃなくて、みなさんの言ってることは、つっこみどころ満載なんだけど?
ユーリに聞かれたら恐ろしいので、冗談でもやめてくださいね…。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

隠された第四皇女

山田ランチ
ファンタジー
 ギルベアト帝国。  帝国では忌み嫌われる魔女達が集う娼館で働くウィノラは、魔女の中でも稀有な癒やしの力を持っていた。ある時、皇宮から内密に呼び出しがかかり、赴いた先に居たのは三度目の出産で今にも命尽きそうな第二側妃のリナだった。しかし癒やしの力を使って助けたリナからは何故か拒絶されてしまう。逃げるように皇宮を出る途中、ライナーという貴族男性に助けてもらう。それから3年後、とある命令を受けてウィノラは再び皇宮に赴く事になる。  皇帝の命令で魔女を捕らえる動きが活発になっていく中、エミル王国との戦争が勃発。そしてウィノラが娼館に隠された秘密が明らかとなっていく。 ヒュー娼館の人々 ウィノラ(娼館で育った第四皇女) アデリータ(女将、ウィノラの育ての親) マイノ(アデリータの弟で護衛長) ディアンヌ、ロラ(娼婦) デルマ、イリーゼ(高級娼婦) 皇宮の人々 ライナー・フックス(公爵家嫡男) バラード・クラウゼ(伯爵、ライナーの友人、デルマの恋人) ルシャード・ツーファール(ギルベアト皇帝) ガリオン・ツーファール(第一皇子、アイテル軍団の第一師団団長) リーヴィス・ツーファール(第三皇子、騎士団所属) オーティス・ツーファール(第四皇子、幻の皇女の弟) エデル・ツーファール(第五皇子、幻の皇女の弟) セリア・エミル(第二皇女、現エミル王国王妃) ローデリカ・ツーファール(第三皇女、ガリオンの妹、死亡) 幻の皇女(第四皇女、死産?) アナイス・ツーファール(第五皇女、ライナーの婚約者候補) ロタリオ(ライナーの従者) ウィリアム(伯爵家三男、アイテル軍団の第一師団副団長) レナード・ハーン(子爵令息) リナ(第二側妃、幻の皇女の母。魔女) ローザ(リナの侍女、魔女) ※フェッチ   力ある魔女の力が具現化したもの。その形は様々で魔女の性格や能力によって変化する。生き物のように視えていても力が形を成したもの。魔女が死亡、もしくは能力を失った時点で消滅する。  ある程度の力がある者達にしかフェッチは視えず、それ以外では気配や感覚でのみ感じる者もいる。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

無表情な黒豹騎士に懐かれたら、元の世界に戻れなくなった私の話を切実に聞いて欲しい!

カントリー
恋愛
「懐かれた時はネコちゃんみたいで可愛いなと思った時期がありました。」 でも懐かれたのは、獲物を狙う肉食獣そのものでした。by大空都子。 大空都子(おおぞら みやこ)。食べる事や料理をする事が大好きな小太した女子高校生。 今日も施設の仲間に料理を振るうため、買い出しに外を歩いていた所、暴走車両により交通事故に遭い異世界へ転移してしまう。 ダーク 「…美味そうだな…」ジュル… 都子「あっ…ありがとうございます!」 (えっ…作った料理の事だよね…) 元の世界に戻るまで、都子こと「ヨーグル・オオゾラ」はクモード城で料理人として働く事になるが… これは大空都子が黒豹騎士ダーク・スカイに懐かれ、最終的には逃げられなくなるお話。 小説の「異世界でお菓子屋さんを始めました!」から21年前の物語となります。

ずっと温めてきた恋心が一瞬で砕け散った話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレのリハビリ。 小説家になろう様でも投稿しています。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

ちょっと不運な私を助けてくれた騎士様が溺愛してきます

五珠 izumi
恋愛
城の下働きとして働いていた私。 ある日、開かれた姫様達のお見合いパーティー会場に何故か魔獣が現れて、運悪く通りかかった私は切られてしまった。 ああ、死んだな、そう思った私の目に見えるのは、私を助けようと手を伸ばす銀髪の美少年だった。 竜獣人の美少年に溺愛されるちょっと不運な女の子のお話。 *魔獣、獣人、魔法など、何でもありの世界です。 *お気に入り登録、しおり等、ありがとうございます。 *本編は完結しています。  番外編は不定期になります。  次話を投稿する迄、完結設定にさせていただきます。

「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない

橋本彩里(Ayari)
恋愛
六歳の時に伯爵家の養子として引き取られたイーサンは、年頃になっても一つ上の義理の姉のミラが大好きだとじゃれてくる。 そんななか、投資に失敗した父の借金の代わりにとミラに見合いの話が浮上し、義姉が大好きなわんこ系義弟が「ご褒美ください」と迫ってきて……。 1~2万文字の短編予定→中編に変更します。 いつもながらの溺愛執着ものです。

処理中です...