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それは、ダメです

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そこへ、今度は、ジリムさんがやってきた。
一気に高まる人口密度。そして、濃い人物たち…。

ジリムさんは、ランディ王子を見て、固まった。

確かに、驚くわよね…。

遅すぎて、そして長すぎる反抗期、真っただ中みたいに、こじらせまくっていたランディ王子。
それが、今や、ユーリのジャケットを、大事そうに両手でかかえ、ユーリをあこがれの眼差しで見上げて、うれしそうに寄り添ってるものね。
こじらせ王子から、従順な子犬みたいに変貌している。

ジリムさんが、
「やっぱり、俺、疲れすぎてんのか…? 寝てないからか? まぼろしが見える…」
と言いながら、眼鏡をはずして、目頭を押している。

ジリムさん…。摩訶不思議なことに、現実ですよ。

そして、眼鏡をかけなおして、今度は、イーリンさんを見て、また固まった。

「そうか、やっぱり、俺は寝なさすぎて、白昼夢を見てるんだな…」
と、つぶやいた。

いえ、夢ではなくて、現実ですよ。ジリムさん…。

私は、茫然としているジリムさんのところに近寄っていって、
「ランディ王子が、ユーリの弟子になったそうですよ」
そう声をかけると、ぎょっとした顔をした。

そして、ユーリとランディ王子を、何度か交互に見た。

やっと、現実と認識したのか、ユーリのほうを向いて、
「…次期公爵様。晩餐会だったので、魔力を見せる機会もなかったと思うのですが…。
一体、ランディ王子に何をみせたら、あれが、これになったのですか?」
と、聞いた。

あれは、ランディ王子よね。そして、これもランディ王子よね…。

すると、ユーリは、
「特別なものは、見せてないと思うけど? ストレスはたまってたけど、たいして魔力は使ってないからね。
まあ、使いたい場面は、山ほどあったんだけど。人の婚約者と、なれなれしくしゃべってるのが聞こえた時とか?」
そう言って、デュラン王子を冷ややかに見た。

そこで、ユーリの弟子、ランディ王子が誇らしげに言った。
「あの筆頭公爵家のえらそうな娘いるだろ。ユーリさんが、話し終わって席をたとうとしたら、あーだこーだ言いながら、ついてこようとしたんだ。
そしたら、ユーリさん。目にもとまらぬ速さで、凍らせたんだよ! すごかった…。だって一瞬だったんだから!」

…はああ?! 人間を凍らせた?!

「ちょっと、ほんとなの?! ユーリ?!」
私がすごい剣幕で聞く。

すると、ユーリは、なんてことないように、
「ほんとだよ。だって、こっちは、一刻も早く離れて、アデルのもとへ行きたいのに、うっとうしいでしょ? だから、凍らせた。それに、あの女の連れの二人の女もギャーギャーうるさいから、一緒に凍らせた」

「はあああ?! ちょっと、ユーリ、なにしてるの?! 人を凍らせたら、ダメじゃない! 急いで、解凍しにいかなきゃ。でも、どうやって、解凍するのかしら? やっぱり、お湯? お湯をかければ、いいのかしら?!」

すると、ユーリは、
「はあー、やっぱり、アデルは、ばかかわいい。ほんと、癒されるわ」
と、妖し気に微笑んだ。

この際、ばかでも、かわいいでもどっちでもいいけれど、それより早く解凍しないと!

焦る私を、ユーリが楽しそうにながめながら、
「アデル、大丈夫だよ。10分後にきっかり元に戻るように設定してるから。もう、とっくに元に戻ってると思うよ。ほんとは、そのままでもいいんだけどね」

そのままで、いいわけないでしょ! しかも、10分後?! 

なにそれ?! 
ユーリの魔力ってタイマー機能まであるの?!
なんか、すごいわね…。

と思ったら、ランディ王子が、
「すごい! タイマー付き魔力か!」
と、私が考えてるのとおなじようなことを口にした。

ええと、なんか、複雑な心境だわね…。
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