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また、何か始まりました

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ランディ王子のことは、一度、ユーリに任せてみることで話しを終えて、王太子様とそこでわかれた。

ランディ王子に、いい進展があればいいな。

お疲れのジリムさんのためにも…。
魔王と取引までした私のためにも…。

「アデル王女、長旅つかれたでしょ。ほんとは、リッカさんの蔵書がそろってる、ぼく専用の図書室を見せたかったんだけど、もうすぐ3時だから。晩餐会が5時から始まるから、用意もあるだろうし、それまで部屋でゆっくりしてもらおうかと思って…」

「ええっ! 図書室、見たい!!」
と、私が言うと、

「ダメだよ、アデル。いったん、本を読みだしたら、とまらないよね? 時間もあまりないし、晩餐会のための着替えもしなきゃいけないでしょ。アンが困るよ?」
と、ユーリに止められた。

うっ…。その通りだわ…。

「じゃあ、晩餐会の後に見せてもらってもいいですか? リッカ先生の本を早く見たいから!」
と、デュラン王子に聞く。

デュラン王子は、甘く微笑んで、
「アデル王女なら、朝までいてくれても全然いいよ。ちなみに、図書室は、ぼくの部屋の中にあるからね」
と、ウインクされた。

「え、ほんと?! 私、徹夜でも読めるわ!」
と、言った瞬間、隣のユーリから冷気が流れだす。

ジリムさんが、デュラン王子をにらんで、
「おい、デュー、ふざけたことを言うな。次期公爵様を怒らせてどうする? ランディ王子のことをお願いしてる立場だろ?」
と、釘をさしている。

そして、私のほうへ、ふりむいて、
「アデル王女様、デューの図書室へは、明日以降、ご一緒に見学いたしましょう。なんなりと、貸し出しいたしますので、ご自由にお持ちいただいて結構です」
と、ジリムさんが言った。

「ええ?! 貸し出してくれるの?! それは、ありがたいわ!」

部屋に持ち帰って、読み放題じゃない。ホクホク。

「ええー! せっかく、ぼくの部屋におびきよせようと思っ…」
と、デュラン王子が言いかけたのを、ジリムさんが自分の手でデュラン王子の口をふさぎ、強制的に封じた。

あばれるデュラン王子を、
「いらんことばかり、しゃべるな!」
と、小声で威嚇しながら、格闘しているジリムさん。

その前で、私は、リッカ先生の本、まずは、なにを借りて読もうかな? などと、浮かれていたら、ユーリに顔をのぞきこまれた。

「ねえ、アデル。なに、他の男の部屋で朝までいようとしてんの?」
と、冷え冷えとした目で、私を見るユーリ。

「いやいや、図書室で本を読みたかっただけだよ?」
と、あわてて私は反論した。

すると、ユーリは、ため息をつき、
「ほんと、危機感ないよね、アデルは。これは、きちんとしつけないとダメだね…」
と、ブルーの瞳を妖し気に光らせた。

しつけ?! なにそれ、怖いんですが…。

「でも、ほら。貸してくれるんなら、借りてきて、自分の部屋で読むから」
そう言って、すぐさま、話を終わらせた。

あぶない、あぶない。魔王モードがもれだしてたよ。

そして、私が滞在させていただくお部屋に到着。

案内されて、入ったとたん、
「うわあ、素敵!」
と、思わず、声がでた。

大きな窓からは、町の景色が一望できる。
そして、町の向こう、遠くの山々まで見渡せる。
はあー、きれいな景色!

そして、お部屋には、ピンクのバラが山のように飾られていた。

「あ、市場で、私が好きだって言ったから、用意してくれたの?」
思わず感動して、市場ですごした時みたいに、デュラン王子に対して、くだけた話し方になってしまった。

デュラン王子が微笑みながら、うなずいた。

「ピンクのバラ、アディーによく似合ってたから」
と、バラに負けない甘さで、微笑みかけてきた。

バラのいい香りにつつまれて、一気に幸せな気分になる!

「へええ。ピンクのバラが好きだなんて、知らなかったよ。婚約者なのに、なんで教えてくれないの? みずくさいなあ、アデル」
と、一瞬にして凍りつくような声が響いた。

あ、お隣に魔王がいるのを忘れてたわ…。

「それに、人の婚約者をアディー? なに、勝手に呼んでるの?」
と、デュラン王子のほうをむき、今度は殺気を放ちだす。

ジリムさんが、あわてて、デュラン王子とユーリとの間に立った。

「申し訳ありません、次期公爵様。こいつの、女性に対する甘い言動は、アデル王女様に限ったことではなく、だれにでもそうなんです。もはや不治の病なんです。なんの意味もないんです。なので、どうぞ、お気になさりませんよう、お願いいたします」
と、疲労の濃い顔で、ジリムさんが説明した。

が、当のデュラン王子は、
「違うよ、ジリム。僕は、誰にでもこんなことしないよ? アディーだからに決まってるでしょ?」
と、笑みをうかべた。

ジリムさんの顔色がさらに悪くなった。

「こら、デュー! なに、言ってるんだ?! おまえ、状況わかってんのか?! ランディ王子のこと、お願いするんだろう? 俺がせっかくフォローしてるのに、おまえは馬鹿なのか? 馬鹿なんだな?!」
と、もはや、王子に言ってるとは思えない言葉の連続で、心の声がもれまくりのジリムさん。

でも、デュラン王子は、まったく、気にした様子もなく、
「それとはこれとは別だよ。まさか、こんなことで、やめるなんて言うほど、次期公爵は器が小さくないだろう? 仮にもアディーの婚約者なんだから?」
と、挑戦的な口調で言った。

え、ちょっと?! デュラン王子は、ユーリを怒らせたいの?!

すると、ユーリは、恐ろしいほどの美しい笑みを浮かべて、
「ああ、もちろんだよ。上手くいったら、アデルから特別なごほうびをもらうことになってるからね。ランディ王子のことは、まかせといて?」
と、デュラン王子のほうを向いて答えた。

特別なごほうびって、なにかしら?

ま、そんなことより、この二人よね。
また、何か始まったようだわ…。
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