上 下
72 / 158

デュラン王子の家族

しおりを挟む
そして、王様のお隣に立つ、若い男性が、
「アデル王女、ようこそ、我が国へ。歓迎します。弟が大変世話になったね」
と、声をかけてきた。

ということは、デュラン王子の兄。つまり、王太子様ね!

デュラン王子と同じスミレ色の瞳だけれど、印象はまるで違うわね。
甘い雰囲気のデュラン王子と違って、王太子様は穏やかな目をされている。

そして、
「実は、デュランより下の、弟と妹がいるんだけどね…」
と、王太子様が言葉をにごした。

ん? そういえば、面倒な人がいるとか、なんとか…言ってたよね?
そのお二人のどちらかしら? 

デュラン王子の方を見ると、
「まあ、おいおい会うと思うけど、気にしないで?」
と、にっこり微笑んだ。
そんなことを言われると、余計に気になるじゃない!

今日の夜、歓迎の晩餐会を開いてくださるとのこと。
そこで、またお会いするので、ひとまず、ご挨拶を終え、広間から退出する。

なんか、疲れたわ!
一人で、他国の王族の方とお会いするのは、初めてだものね。

と、思ったら、後ろに控えていたユーリが隣に来て、
「お疲れ様、アデル」
そう言って、私の頭をさらりとなでた。

すると、デュラン王子が近づいてきて、
「ぼくもなでたい!」
と、手をのばそうとしたところを、ジリムさんが、がしっと捕らえた。

「アデル王女様は、デューの婚約者じゃないだろ?! 頭なでたきゃ、とっとと婚約者を見つけてこい!」
と、ドスの聞いた声で叱られている。

ジリムさん、ナイスです!
だって、さわられると、ユーリにまた消毒されるからね!

私、ちゃーんと覚えてますよ! 気をつけてますよ! と言う気持ちをこめて、ちらりとユーリを見上げる。

すると、ユーリは、
「えらいね、アデル」
と、色気あふれる声で、耳元に口を近づけて、ささやいてきた。

もう、ぞわりとするからやめてよね!
きっと、にらむと、ユーリは嬉しそうに笑った。
どうやら、魔王様はご機嫌なようね…。

「疲れたでしょ。今から滞在してもらう部屋に案内するね」
と、デュラン王子。

広い廊下を一緒に歩いていると、
「兄貴、帰ってきてたんだ? いつも、ふらふらして、気楽でいいね?」
と、声がした。

前から歩いてきた若い男性だ。
ということは、この人が、第三王子ね。
なるほど、この言葉を聞いただけで、面倒そうな匂いがプンプンしてきたわ!

第三王子は、細身で、少し幼さも残る顔立ちで、デュラン王子に似ている。
甘さのある美形だ。
そして、やはり、スミレ色の瞳をしている。王家の色なのかしらね?

が、なにより、この不穏な雰囲気…。
挑むように、デュラン王子をにらみつけている。

デュラン王子、何かしたのかしらね?

できたら、見て見ぬふりして、通り過ぎたいところだけれど、お世話になるのだし、とりあえず、ご挨拶をしとかないとね。
最悪の雰囲気の中、一歩、前にふみだす。

「ええと、第三王子さまですよね。私、オパール国の第二王女、アデルと申します。一週間お世話になります。どうぞよろしくお願いしますね」
と、精一杯、微笑んでみた。

私は敵ではありませんよ! 礼儀として、挨拶してるだけだからね?

すると、王子は、一瞬目を見開いたあと、
「これはこれは、ようこそいらっしゃいました。第三王子で、ランディと申します。どうぞよろしく」
と、華やかに微笑んだ。

デュラン王子に似た甘い美形だから、微笑むと、花が散る。

…が、すごい変わりっぷりよね。そして、すごい外面用の顔だよね?!

確実に、デュラン王子とユーリ路線をつっぱしってるわね。末恐ろしいわ。
が、今は、まだ、魔族への発展途上なのか、ちょっと、…というか、かなりこじらせてる感じ?
なんだか、本当に面倒そうだわ。

そうだ、ここは、さらりと通り過ぎよう。
気がついたら、あんな遠くにいるよ作戦だ。

少しずつ、わからない程度に、離れていくように、足をすすめていく。
前世でいうところの亀歩…ではなく、そう、牛歩よ!

それにしても、王と王妃様と王太子様に対して、デュラン王子とランディ王子。
なんだか、振り幅のすごいご家族よね…。

あとおひとり、妹姫様が、どんな方なのか、気になるところだわ。


しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

彼氏に別れを告げたらヤンデレ化した

Fio
恋愛
彼女が彼氏に別れを切り出すことでヤンデレ・メンヘラ化する短編ストーリー。様々な組み合わせで書いていく予定です。良ければ感想、お気に入り登録お願いします。

軽い気持ちで超絶美少年(ヤンデレ)に告白したら

夕立悠理
恋愛
容姿平凡、頭脳平凡、なリノアにはひとつだけ、普通とちがうところがある。  それは極度の面食いということ。  そんなリノアは冷徹と名高い公爵子息(イケメン)に嫁ぐことに。 「初夜放置? ぜーんぜん、問題ないわ! だって旦那さまってば顔がいいもの!!!」  朝食をたまに一緒にとるだけで、満足だ。寝室別でも、他の女の香水の香りがしてもぜーんぜん平気。……なーんて、思っていたら、旦那さまの様子がおかしい? 「他の誰でもない君が! 僕がいいっていったんだ。……そうでしょ?」  あれ、旦那さまってば、どうして手錠をお持ちなのでしょうか?  それをわたしにつける??  じょ、冗談ですよね──!?!?

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

ヤンデレお兄様に殺されたくないので、ブラコンやめます!(長編版)

夕立悠理
恋愛
──だって、好きでいてもしかたないもの。 ヴァイオレットは、思い出した。ここは、ロマンス小説の世界で、ヴァイオレットは義兄の恋人をいじめたあげくにヤンデレな義兄に殺される悪役令嬢だと。  って、むりむりむり。死ぬとかむりですから!  せっかく転生したんだし、魔法とか気ままに楽しみたいよね。ということで、ずっと好きだった恋心は封印し、ブラコンをやめることに。  新たな恋のお相手は、公爵令嬢なんだし、王子様とかどうかなー!?なんてうきうきわくわくしていると。  なんだかお兄様の様子がおかしい……? ※小説になろうさまでも掲載しています ※以前連載していたやつの長編版です

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

ヤンデレお兄様から、逃げられません!

夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。 エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。 それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?  ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【本編完結】副団長様に愛されすぎてヤンデレられるモブは私です。

白霧雪。
恋愛
 王国騎士団副団長直属秘書官――それが、サーシャの肩書きだった。上官で、幼馴染のラインハルトに淡い恋をするサーシャ。だが、ラインハルトに聖女からの釣書が届き、恋を諦めるために辞表を提出する。――が、辞表は目の前で破かれ、ラインハルトの凶悪なまでの愛を知る。

処理中です...