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気をつけます
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「アデル王女がそんなに気に入ったんなら、滞在中、またここへ来ようね」
と、デュラン王子。
「是非、是非、お願いします!」
と、かぶせ気味に答えてしまう。
王女らしさは、完全に手放してしまってるけれど、ジリムさんが、くすりと笑ってくれたので良かった。
お疲れだものね。
「じゃあ、そろそろ王宮へ移動しようか。王も待ちかねてると思うしね。あ、ちょっと面倒なのもいるかもしれないけど、ごめんね?」
ん? 面倒なの? え、あなたではなく?
思わず、首をかしげる。
デュラン王子が、フフと笑って、
「ぼくじゃないよー」
と、言った。
げげっ、顔にでてた?! 急いで、顔を整える。
すると、ジリムさんが、
「確かに、これも面倒な奴ですが、王宮には、また、ちょっと方向性の違う面倒な方がおります。ですが、アデル王女に害を及ぼすことはありませんし、関わることもないと思いますので、安心してください」
と、言いきった。
うーん、安心してくださいと言われても、不安がよぎるんですが…。
でも…、ちらりと隣を見る。あいかわらず、きれいな横顔ね。
そう、私は面倒な人には慣れてるわ!
「大丈夫。耐性はあるからね」
おっと、思わず、声にでてしまった。
プハッと、デュラン王子がふきだした。
ジリムさんは、だれかを思い浮かべ共感しているのか、深くうなずいている。
そして、
「へええ、誰のこと、言ってんの? まさか、ぼくのこと、面倒なんて思ってるんじゃないよね?」
と、魔王様。
「さあ、誰のことだったかしら?」
と、とりあえず、とぼけてみる。
「こんなに尽くしてるのに? じゃあ、もっと、尽くすように頑張るよ。ねえ、アデル」
と、魔王様が妖し気に微笑んだ。
いえ、もう、十分です! すみません。撤回します。怖いから!
日本食で満たされた心が、早速、削られたところで、王宮へ向けて出発。
馬車に乗ると、アンが、ささっと髪型を整えてくれた。
が、そこでユーリが、
「ねえ、目が腫れてたのに、どうして、なおってるの?」
私の顔をのぞきこんで言った。
あっ、そうか。ユーリ、あの時、いなかったものね。
「ランチの後、ユーリとジリムさんが、打ち合わせに、騎士たちのところに行ったよね。あの時に、ちょっと、デュラン王子に、なおしてもらったんだけど…」
説明している間にも、どんどん、ユーリの目が氷のように冷えてくる。
ええと、なぜ、ご機嫌が悪くなってるのかしら?
懐かしい味に、泣きすぎて、目が腫れていた私。
デュラン王子が、「これくらいなら、癒せるから」と、私のまぶたに、あの青白い光をあててくれたのよね。
まあ、目をつぶってたので、光を見てはいないけど。
おかげで、目もすっきり開くようになった。
「へええ」
そう言いながら、私の目に顔を近づけて、息をすった。
「気に入らない。他の男の魔力の匂いがする」
えっ? 魔力って、匂うの?!
「あの王子、癒しの力があるとはね。ねえ、アデル。まさか、目にさわらせた?」
うん?
そう言えば、デュラン王子、ドーラさんを治療する時は、さすがに場所が場所だし、手のひらを離していたけれど、
「直接、手をあてて、魔力を流しこんだほうが早いから、ふれるね。まぶただし、いいよね?」
そう言って、手のひらを、閉じた私の目にあててたわ。
ユーリの目が怖いが、おそるおそる、うなずく。
「あのね、アデル。簡単にさわらせないで?」
「でも、目だけだし。治療だしね。知らない人でもないし、大丈夫だったよ」
私が、そう反論すると、ユーリが、はーっとため息をついた。
「俺が気にするの。俺が嫌なの。俺が大丈夫じゃないの」
と、一息に言った。
あ、ユーリが、「俺」になってる…。
本当にいらだってるんだ。まずいわ…。
「その匂い、気持ち悪くて、がまんできないから、俺の魔力で上書きしとくわ」
そう言うと、私の頭を、両手でがしっと持って、おさえた。
ええ?! 何するの?! ちょっと、アン! 助けて!
頭が動かないので、目だけでアンを見ると、アンは、窓の外を見ていた。
あっ!
15センチをチケットと交換してしまってるから、こっちを見ないようにしてるのね…。
「目をつぶって、アデル」
とりあえず、言われたとおりにしよう。
俺呼びのユーリには、怖くて逆らえないわ…。
すると、片方のまぶたに、やわらかい何かが、さわってきた。
そして、次に、もういっぽうのまぶたにも…。
思考がとまる…。
これ、手のひらじゃないよね?!
思わず、目をあけると、魔王の瞳が、艶っぽく光っている。
もしや…、
「えええー!! ちょっと、ユーリ! な、な、な、なにしたのっ?!」
両手で、まぶたをおさえながら、体を後ろにひく。
「消毒だよ、アデル。もし、またさわられたら、どこであっても、今みたいにして、俺の魔力で消毒するからね? 気をつけてね?」
はい、はい、はい、気をつけます!
「あ、それと、アデルのためなら、俺の魔力を全力で使うから。誰かに頼む前に、俺に言ってね」
と、魔王らしい笑みを浮かべた。
いえ、それはやめてね。
ユーリの魔力を全力で使ったら、この世界が消えてしまうからね。
と、デュラン王子。
「是非、是非、お願いします!」
と、かぶせ気味に答えてしまう。
王女らしさは、完全に手放してしまってるけれど、ジリムさんが、くすりと笑ってくれたので良かった。
お疲れだものね。
「じゃあ、そろそろ王宮へ移動しようか。王も待ちかねてると思うしね。あ、ちょっと面倒なのもいるかもしれないけど、ごめんね?」
ん? 面倒なの? え、あなたではなく?
思わず、首をかしげる。
デュラン王子が、フフと笑って、
「ぼくじゃないよー」
と、言った。
げげっ、顔にでてた?! 急いで、顔を整える。
すると、ジリムさんが、
「確かに、これも面倒な奴ですが、王宮には、また、ちょっと方向性の違う面倒な方がおります。ですが、アデル王女に害を及ぼすことはありませんし、関わることもないと思いますので、安心してください」
と、言いきった。
うーん、安心してくださいと言われても、不安がよぎるんですが…。
でも…、ちらりと隣を見る。あいかわらず、きれいな横顔ね。
そう、私は面倒な人には慣れてるわ!
「大丈夫。耐性はあるからね」
おっと、思わず、声にでてしまった。
プハッと、デュラン王子がふきだした。
ジリムさんは、だれかを思い浮かべ共感しているのか、深くうなずいている。
そして、
「へええ、誰のこと、言ってんの? まさか、ぼくのこと、面倒なんて思ってるんじゃないよね?」
と、魔王様。
「さあ、誰のことだったかしら?」
と、とりあえず、とぼけてみる。
「こんなに尽くしてるのに? じゃあ、もっと、尽くすように頑張るよ。ねえ、アデル」
と、魔王様が妖し気に微笑んだ。
いえ、もう、十分です! すみません。撤回します。怖いから!
日本食で満たされた心が、早速、削られたところで、王宮へ向けて出発。
馬車に乗ると、アンが、ささっと髪型を整えてくれた。
が、そこでユーリが、
「ねえ、目が腫れてたのに、どうして、なおってるの?」
私の顔をのぞきこんで言った。
あっ、そうか。ユーリ、あの時、いなかったものね。
「ランチの後、ユーリとジリムさんが、打ち合わせに、騎士たちのところに行ったよね。あの時に、ちょっと、デュラン王子に、なおしてもらったんだけど…」
説明している間にも、どんどん、ユーリの目が氷のように冷えてくる。
ええと、なぜ、ご機嫌が悪くなってるのかしら?
懐かしい味に、泣きすぎて、目が腫れていた私。
デュラン王子が、「これくらいなら、癒せるから」と、私のまぶたに、あの青白い光をあててくれたのよね。
まあ、目をつぶってたので、光を見てはいないけど。
おかげで、目もすっきり開くようになった。
「へええ」
そう言いながら、私の目に顔を近づけて、息をすった。
「気に入らない。他の男の魔力の匂いがする」
えっ? 魔力って、匂うの?!
「あの王子、癒しの力があるとはね。ねえ、アデル。まさか、目にさわらせた?」
うん?
そう言えば、デュラン王子、ドーラさんを治療する時は、さすがに場所が場所だし、手のひらを離していたけれど、
「直接、手をあてて、魔力を流しこんだほうが早いから、ふれるね。まぶただし、いいよね?」
そう言って、手のひらを、閉じた私の目にあててたわ。
ユーリの目が怖いが、おそるおそる、うなずく。
「あのね、アデル。簡単にさわらせないで?」
「でも、目だけだし。治療だしね。知らない人でもないし、大丈夫だったよ」
私が、そう反論すると、ユーリが、はーっとため息をついた。
「俺が気にするの。俺が嫌なの。俺が大丈夫じゃないの」
と、一息に言った。
あ、ユーリが、「俺」になってる…。
本当にいらだってるんだ。まずいわ…。
「その匂い、気持ち悪くて、がまんできないから、俺の魔力で上書きしとくわ」
そう言うと、私の頭を、両手でがしっと持って、おさえた。
ええ?! 何するの?! ちょっと、アン! 助けて!
頭が動かないので、目だけでアンを見ると、アンは、窓の外を見ていた。
あっ!
15センチをチケットと交換してしまってるから、こっちを見ないようにしてるのね…。
「目をつぶって、アデル」
とりあえず、言われたとおりにしよう。
俺呼びのユーリには、怖くて逆らえないわ…。
すると、片方のまぶたに、やわらかい何かが、さわってきた。
そして、次に、もういっぽうのまぶたにも…。
思考がとまる…。
これ、手のひらじゃないよね?!
思わず、目をあけると、魔王の瞳が、艶っぽく光っている。
もしや…、
「えええー!! ちょっと、ユーリ! な、な、な、なにしたのっ?!」
両手で、まぶたをおさえながら、体を後ろにひく。
「消毒だよ、アデル。もし、またさわられたら、どこであっても、今みたいにして、俺の魔力で消毒するからね? 気をつけてね?」
はい、はい、はい、気をつけます!
「あ、それと、アデルのためなら、俺の魔力を全力で使うから。誰かに頼む前に、俺に言ってね」
と、魔王らしい笑みを浮かべた。
いえ、それはやめてね。
ユーリの魔力を全力で使ったら、この世界が消えてしまうからね。
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