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初ランチ
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花の絵が壁面に描かれた、なんとも、かわいらしい建物が、今日のランチをいただくレストランだそう。
そして、案内されたお部屋で、今、私は、ランチを待っているところだ。
テーブルには、私、隣にユーリ。
向かい側の席に、デュラン王子とジリムさん。
アンも一緒に食べようと言ったら、
「その方々の中では、食事がのどを通りません」
と、断固拒否された。
確かに、濃いメンバーだものね…。
ということで、アンは、別室で、一緒に来たオパール国の人たちと食事をしている。
そして、ついに、ランチが運ばれてきた!
わーい! わーい!
内心、喜びのおたけびをあげていると、デュラン王子が、クスッと笑った。
あら、外へもれてたのね? そう、もう、おなかがすきすぎて、限界なんです!
そして、目の前に並んだ料理を見て、目が釘付けになった。
見覚えがありすぎるんだけど…。
料理を凝視している私を見て、
「この料理はね、ブルージュ国に伝わる郷土料理なんだよ。オパール国にはないから、珍しいかなと思ってね。ここのレストランは、一番古い専門店なんだ。アデル王女も気に入ってくれるといいけど。どうぞ、食べてみて」
と、デュラン王子が、説明してくれた。
お皿に並んでいるのは、ひとつひとつが、丸い形のお料理。
白いご飯の中に、様々な具が巻かれている。そして、一番外側に、黒い薄いもの。
もしや、これって…。
私は、ナイフで半分に切り、フォークで刺して、口に運んだ。
白いご飯には、酸味があり、中には、香ばしく焼いた魚が入っていた。
まわりをぐるりと巻いている、薄い黒いものは、想像どおり、海苔だった。
そう、まさに、これって、前世で食べた巻きずしよね。
遠い遠い記憶の懐かしい味が、口いっぱいに広がる。
前世、おばあちゃんの家に遊びに行くと、いつも巻きずしだったなあ…。
「アデル、どうした?!」
隣から、ユーリの焦った声が聞こえた。
すぐに、デュラン王子も私の方に、身をのりだしてきた。
えっと、みなさん、どうかした?
ユーリが、私の顔をのぞきこみながら、
「毒味はっ?!」
と、緊張した声をあげた。
「もちろん、直前に済ませてあります! 料理過程もすべて監視しておりました」
ジリムさんが、すぐに立ちあがり、緊迫した声で答えた。
ユーリは、私が半分食べた残りを、躊躇なく、自分の口に放り込む。
そして、何度か、かんで、飲み込んだ。
「毒はないな」
ユーリは、私の横にしゃがみこむと、私の顔を両手でおさえて、
「大丈夫、アデル? どこか具合が悪いの?」
と、私の目をのぞきこんでくる。
ユーリの青い瞳が、不思議な揺れ方をしている。
多分、私のことを、魔力で探ってるのね。
…じゃなくて、なになになに? 一体、なにが起きてるの?!
「ちょっと、ユーリ、落ち着いて! 私は、大丈夫だよ? みんなも、どうしたの?!」
私がそう言うと、ユーリが、はーっと大きく息をはいた。
「食べたとたん、いきなり、アデルが泣き出すからだよ。なにがあったの?」
そう言いながら、ユーリが自分の指で、私の涙をぬぐってくる。
えええ?! 私、泣いてたの?!
頬を手で触ると、結構、ぬれている。自覚はないまま、どばっと泣いたのね。
うん、これはびっくりするわ。
みんな、ごめんなさい。
多分、前世のこと、おばあちゃんのこと、思い出したからかな。
食の記憶って、すごいわね。
が、ここで、これを正直に説明するのは無理よね。…うーん、どう言おうかしら。
「ええと、みなさん、ごめんなさいね。驚かしてしまって。よくわからないけれど、すごく懐かしい気持ちになる味だったの。とにかく、とても美味しくて、感動して、泣いてしまったみたい」
「そうだったんだ。泣くほど美味しかったのなら、ぼくも嬉しいよ。懐かしいって感じたなら、やっぱり、アデル王女は、この国に縁があるんだね」
と、デュラン王子が、甘やかに微笑んできた。
ジリムさんは、
「アデル王女様は、驚くほど、感受性が豊かなのですね。色々、興味深い方だ…」
と、つぶやいている。
ユーリは、涙にぬれた私の顔を、手のひらで、優しくひとなですると、
「アデルに何もなくて、良かった…」
と、ぽつりと言った。
いつものユーリと違って、気弱そうに揺れるまなざしに、胸がずきっとした。
「心配かけて、ごめん。ユーリ」
思わず私が言うと、ユーリは微笑んで、私の頭をなでた。
そして、自分のハンカチをとりだして、私の顔をふきはじめた。
「ちょっと、自分でふくから、やめて! 恥ずかしいよ」
私があわてて、ユーリの手をおさえようとするが、つかまえられない。
「ダーメ。ぼくに心配させた罰。じっとしてて」
そう言って、やたらと丁寧に、ゆっくりと、私の顔をふきはじめた。
隣国に到着して早々、顔をふかれる王女って、どんな王女なの?!
恥ずかしさで消えたいわ…。
そして、ユーリ。
言ったら怒られそうだけど、なんだか、ロイドみたいになってるよ?
そして、案内されたお部屋で、今、私は、ランチを待っているところだ。
テーブルには、私、隣にユーリ。
向かい側の席に、デュラン王子とジリムさん。
アンも一緒に食べようと言ったら、
「その方々の中では、食事がのどを通りません」
と、断固拒否された。
確かに、濃いメンバーだものね…。
ということで、アンは、別室で、一緒に来たオパール国の人たちと食事をしている。
そして、ついに、ランチが運ばれてきた!
わーい! わーい!
内心、喜びのおたけびをあげていると、デュラン王子が、クスッと笑った。
あら、外へもれてたのね? そう、もう、おなかがすきすぎて、限界なんです!
そして、目の前に並んだ料理を見て、目が釘付けになった。
見覚えがありすぎるんだけど…。
料理を凝視している私を見て、
「この料理はね、ブルージュ国に伝わる郷土料理なんだよ。オパール国にはないから、珍しいかなと思ってね。ここのレストランは、一番古い専門店なんだ。アデル王女も気に入ってくれるといいけど。どうぞ、食べてみて」
と、デュラン王子が、説明してくれた。
お皿に並んでいるのは、ひとつひとつが、丸い形のお料理。
白いご飯の中に、様々な具が巻かれている。そして、一番外側に、黒い薄いもの。
もしや、これって…。
私は、ナイフで半分に切り、フォークで刺して、口に運んだ。
白いご飯には、酸味があり、中には、香ばしく焼いた魚が入っていた。
まわりをぐるりと巻いている、薄い黒いものは、想像どおり、海苔だった。
そう、まさに、これって、前世で食べた巻きずしよね。
遠い遠い記憶の懐かしい味が、口いっぱいに広がる。
前世、おばあちゃんの家に遊びに行くと、いつも巻きずしだったなあ…。
「アデル、どうした?!」
隣から、ユーリの焦った声が聞こえた。
すぐに、デュラン王子も私の方に、身をのりだしてきた。
えっと、みなさん、どうかした?
ユーリが、私の顔をのぞきこみながら、
「毒味はっ?!」
と、緊張した声をあげた。
「もちろん、直前に済ませてあります! 料理過程もすべて監視しておりました」
ジリムさんが、すぐに立ちあがり、緊迫した声で答えた。
ユーリは、私が半分食べた残りを、躊躇なく、自分の口に放り込む。
そして、何度か、かんで、飲み込んだ。
「毒はないな」
ユーリは、私の横にしゃがみこむと、私の顔を両手でおさえて、
「大丈夫、アデル? どこか具合が悪いの?」
と、私の目をのぞきこんでくる。
ユーリの青い瞳が、不思議な揺れ方をしている。
多分、私のことを、魔力で探ってるのね。
…じゃなくて、なになになに? 一体、なにが起きてるの?!
「ちょっと、ユーリ、落ち着いて! 私は、大丈夫だよ? みんなも、どうしたの?!」
私がそう言うと、ユーリが、はーっと大きく息をはいた。
「食べたとたん、いきなり、アデルが泣き出すからだよ。なにがあったの?」
そう言いながら、ユーリが自分の指で、私の涙をぬぐってくる。
えええ?! 私、泣いてたの?!
頬を手で触ると、結構、ぬれている。自覚はないまま、どばっと泣いたのね。
うん、これはびっくりするわ。
みんな、ごめんなさい。
多分、前世のこと、おばあちゃんのこと、思い出したからかな。
食の記憶って、すごいわね。
が、ここで、これを正直に説明するのは無理よね。…うーん、どう言おうかしら。
「ええと、みなさん、ごめんなさいね。驚かしてしまって。よくわからないけれど、すごく懐かしい気持ちになる味だったの。とにかく、とても美味しくて、感動して、泣いてしまったみたい」
「そうだったんだ。泣くほど美味しかったのなら、ぼくも嬉しいよ。懐かしいって感じたなら、やっぱり、アデル王女は、この国に縁があるんだね」
と、デュラン王子が、甘やかに微笑んできた。
ジリムさんは、
「アデル王女様は、驚くほど、感受性が豊かなのですね。色々、興味深い方だ…」
と、つぶやいている。
ユーリは、涙にぬれた私の顔を、手のひらで、優しくひとなですると、
「アデルに何もなくて、良かった…」
と、ぽつりと言った。
いつものユーリと違って、気弱そうに揺れるまなざしに、胸がずきっとした。
「心配かけて、ごめん。ユーリ」
思わず私が言うと、ユーリは微笑んで、私の頭をなでた。
そして、自分のハンカチをとりだして、私の顔をふきはじめた。
「ちょっと、自分でふくから、やめて! 恥ずかしいよ」
私があわてて、ユーリの手をおさえようとするが、つかまえられない。
「ダーメ。ぼくに心配させた罰。じっとしてて」
そう言って、やたらと丁寧に、ゆっくりと、私の顔をふきはじめた。
隣国に到着して早々、顔をふかれる王女って、どんな王女なの?!
恥ずかしさで消えたいわ…。
そして、ユーリ。
言ったら怒られそうだけど、なんだか、ロイドみたいになってるよ?
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